文字数:約2900文字
ビールはどこで生まれ、どのように現在の形になったのか。
発祥や起源をたどると、
その長い歴史の中で大きな変化を繰り返してきたことがわかる。
ビールの起源は古代文明にさかのぼり、
偶然の発酵から生まれたとされている。
その後、中世ヨーロッパで醸造技術が発展し、
近代には技術革新によって品質と生産性が大きく向上した。
こうした流れを理解すると、
現在当たり前のように飲まれているビールが、
どのように進化してきたのかが見えてくる。
ここでは、ビールの発祥・起源から現代までの歴史をわかりやすく整理する。
ビールの歴史は紀元前まで遡る。
紀元前、中世、近世、近代の長い歴史を見てみよう。

●紀元前
古代のビールの記録を説明する。
- 紀元前6500年頃(8500年前)
クルディスタン(トルコ、イラク、イランにまたがる地域)で
最初のビールが造られた可能性がある。
麦の栽培が始まれば、いつビールができても不思議ではない。
- 紀元前3000年頃(5000年前)
メソポタミアのシュメール人が残したモニュマン・ブリュー(醸造の記念碑)が
最古の記録とされている。
当時のビールはシカルと呼ばれ、
麦芽の粉で焼いたバッピル(ビールブレッド)を
水で溶き、野生酵母で自然に発酵させていた。
同時期の古代エジプトの壁画にもビールの記録が残されている。

- 紀元前2000年頃(4000年前)
バビロニア人がシュメール人を征服。
世界最古の文学作品と言われる英雄叙事詩「ギルガメッシュ叙事詩」に
ビールに関する記述が登場する。
バビロニア人にとってビールは非常に重要だった為、
質の悪いビールを造ったものは溺死の刑を受ける場合があった。
- 紀元前539年までに
大規模な公共の醸造所が存在したとする、
考古学的証拠が見つかっている。
- 紀元前430年(2450年前)
ギリシャの歴史家ヘロドトスはエジプトを訪れ、
「エジプトではブドウが育たないので、
エジプト人は大麦から造ったワインを飲む」と書く。
●紀元後
紀元後、ヨーロッパでビールが広まる。
・中世
中世の時代に風味づけのためにホップが使われ始める。
- 5世紀ごろ
ビールと同様の麦芽醸造酒であるエールが、
現在のイギリスに広く定着したとされる。
- 612年
フランス北東部メッツの司教にアルノーが就任し、
不潔な水よりビールを飲むように説く。
当時の水は不衛生で病気の原因となっていた。
ビールは煮沸により殺菌され、
アルコールによって菌の増殖が軽減されていた。
- 736年
ドイツ ハラタウ地方の修道院にホップ園が造られていた。

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- 8世紀後半
フランク王国のカール大帝が、
ゲルマン民族の大移動で混乱した西ヨーロッパを統一し、
征服した土地に教会や修道院を建ててキリスト教を広めた。
このとき定められた「荘園令」により、
荘園や修道院にはワインまたはビールの醸造が義務づけられ、
ビールはワインと並ぶ地位を得る。
修道院では、巡礼や断食修行者への栄養補給にビールが重宝され、
「液体のパン」と呼ばれた。
- 829年
スイス北東部ザンクト・ガレン修道院の設計図から、
院内に3つのビール醸造所があったことが判明。
第一醸造所では大麦を原料に、
しばしば小麦を混ぜてceliaという名の強いビールが造られ、
修道院長や行為の聖職者、そして賓客だけに提供された。
第二醸造所では燕麦(エンバク)を原料に、
しばしばハーブで風味づけされたcervisaというビールが造られ、
修道士や訪問中の巡礼者が飲んだ。
第三醸造所では薄い弱いビールが造られ、
修道院で働く平信徒や物乞いはこのビールで我慢しなければならなかった。
風味づけのハーブの中にホップも使われていてた。
- 10世紀
ボヘミア公ヴァーツラフ1世はホップを非常に重視し、
ホップの挿し穂を外国に売ったことが発覚すれば死刑になった。
- 974年
グルート権(風味づけハーブのレシピ、販売権)の委譲についての最古の記録が見つかる。
- 1150年
ライン川近くのルペルツベルクにベネディクト会系女子修道院を
設立したヒルデガルト・フォン・ビンゲン院長は、
著書『聖ヒルデガルトの医学と自然学』で、
ホップは「エールに入れると腐敗を抑制し、エールを長く保存できる」と記述している。
・近世
近世の時代に、現代の主流であるラガービールが造られる。
- 15世紀後半
ドイツで「下面発酵」で造られる
「ラガービール(貯蔵ビール)」が誕生する。
- 1516年
ドイツのバイエルン候ヴィルヘルム4世が「純粋令 Reinheitsgebot」公布。
- 1551年
ビール純粋令に酵母が追記される。
- 1587年
イギリス人冒険家リチャード・ハクルートによって、
アメリカで植民者による最初のビール造りが試みられた

・近代
近代ビールの三大発明である「アンモニア式冷却機」、
「低温殺菌法」、「酵母の純粋培養」によって、
品質、輸送、保存に大革命が起きる。
19世紀初頭には日本にビールが伝わり、
その後、現代の大手ビールメーカーの前身がビール製造を始める。
- 19世紀初頭(江戸時代後期)
オランダ商館があった長崎・出島を通じて、
日本に初めてビールが持ち込まれた。
- 1842年
チェコのピルゼンで淡色系下面発酵ビールとしてピルスナーが造られる。
- 1873年
ドイツ人科学者のカール・フォン・リンデによって
「アンモニア式冷却機」が発明され、
醸造季節が冬から一年中可能になった。
- 1876年
フランス人微生物学者のルイ・パスツールの「低温殺菌法」が
ビールでも有効だと発表され、保存期間や輸送範囲が広がった。
- 1876年(明治7年)
開拓使麦酒醸造所(現サッポロビール)創業。
- 1883年
デンマーク コペンハーゲンのカールスバーグ醸造所で、
エミール・クリスチャン・ハンセンによって「酵母の純粋培養」に成功。
純粋な酵母は均一で良質なビールの大量生産を可能にし、
値を下げ、大衆飲料への道を切り開いた。
- 1885年(明治16年)
ジャパン・ブルワリー・カンパニー(現キリンビール)設立。
- 1889年(明治20年)
大阪麦酒会社(現アサヒビール)創業。

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- 1920年
ヴォルステッド法によって連邦禁酒法がアメリカ全州に効力を持つようになる。
- 1933年
アメリカ 禁酒法廃止。
- 1962年
ベルギー 「トラピスト」を法的に保護された呼称として、
厳格なガイドラインに沿った醸造所だけに使用を認める。
- 1963年(昭和38年)
サントリー株式会社がビール事業に参入。
●あとがき
古代のビールはどのようなものだったのか、想像してみる。
水に浸したパンを自然発酵させたものは、おそらく酸味が強く、不透明で、
炭酸もほとんど無かったのだろうと思う。
このようなものを好んで飲んでいた理由は、やはりアルコールの摂取であると考える。
アルコールが気分を高揚させてくれるのは今も昔も変わらないようだ。
そしてこれからも変わらないものであってほしい。



