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シャルトリューズは、フランスの修道士が造るハーブリキュールであり、
「リキュールの女王」とも呼ばれている。
130種類以上の植物を使用し、
そのレシピは現在も限られた修道士だけが知る秘伝とされる。
その起源は1605年に修道会へ託された「長寿の霊薬(エリクシル)」の写本にある。
400年以上にわたり受け継がれてきたシャルトリューズの特徴や種類、
そして秘伝の歴史を解説する。
ちなみにエリクシル(ÉLIXIR/ELIXIR)はエリクサー、エリキシルとも呼ばれる。

●シャルトリューズとは
シャルトリューズはフランス生まれのハーブリキュールである。
130種類以上の植物を使用し、
現在も限られた修道士だけがレシピを知ることで知られる。
・シャルトリューズの特徴
シャルトリューズには次のような特徴がある。
シャルトリューズ最大の特徴はその秘伝性にある。
原料の詳細な配合や製造工程は公開されておらず、
レシピを知る修道士もごく限られている。
また、130種類以上のハーブや植物を使用するとされ、
複雑で奥行きのある香りと味わいを生み出している。
現在も修道士によって受け継がれる伝統的なリキュールとして、
多くの愛好家を魅了し続けている。
・シャルトリューズの名前の由来

シャルトリューズ(chartreuse)の名前は、
フランス南東部にあるシャルトリューズ山地に由来する。
この地域にはカルトジオ会(chartreux)の本拠地である
グランド・シャルトルーズ修道院があり、
修道士たちはここで「長寿の霊薬(エリクシル)」の研究と製造を行った。
やがて修道院で受け継がれたリキュールは、
その土地や修道院の名にちなんで「シャルトリューズ」と呼ばれるようになった。
なお、「シャルトリューズ」という言葉そのものは、
古い地名に由来すると考えられているが、その語源は明確には分かっていない。
また、鮮やかな黄緑色を指す色名「シャルトリューズ」も存在する。
これはリキュールのシャルトリューズ・ヴェール(グリーン)の色に由来するもので、
お酒の名前が色の名前になった珍しい例として知られている。
●シャルトリューズの商品ラインナップ
シャルトリューズには複数の商品が存在する。
代表的なのはヴェール(グリーン)とジョーヌ(イエロー)だが、
そのほかにも記念ボトルや長期熟成品など、
さまざまなバリエーションが展開されている。
いずれも秘伝のレシピをもとに造られているが、
アルコール度数やハーブの配合、熟成方法などが異なるため、
味わいや個性にも違いがある。
ヴェール(グリーン)の緑色はクロロフィル(葉緑素)、
ジョーヌ(イエロー)の黄色はサフランによるもので、
どちらも植物由来の天然の色合いである。
主な商品ラインナップは以下のとおり。
| 商品名 | 度数 | 色 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ヴェール(グリーン) | 55% | 緑 | シャルトリューズを代表する定番商品 |
| ジョーヌ(イエロー) | 43% | 黄 | 甘味が強く飲みやすい定番商品 |
| 9th Centenaire | 47% | 琥珀 | 修道会創設900周年記念 |
| リキュール・デ・エリキシル 1605 | 56% | 緑 | 写本伝来400周年記念 |
| エリキシル・ヴェジェタル | 69% | 緑 | シャルトリューズの原点となる薬草酒 |
| VEP ヴェール | 54% | 緑 | 長期熟成された特別仕様 |
| VEP ジョーヌ | 42% | 黄 | 長期熟成された特別仕様 |
| MOF ソムリエ | 45% | 琥珀 | MOFソムリエとの共同開発 |
・シャルトリューズ ヴェール(グリーン)

- 度 数:55%
- 色 :緑色
- 特 徴:シャルトリューズを代表するフラッグシップボトル
- 味わい:力強いハーブ感とスパイシーな風味
シャルトリューズ ヴェール(グリーン)は、
シャルトリューズを代表する定番商品。
130種類以上の植物から生まれる複雑な香りと味わいを持ち、
世界中のバーテンダーやリキュール愛好家から高く評価されている。
アルコール度数は55%と高く、甘味だけでなく苦味や、
薬草らしい清涼感も感じられる。
ストレートやロックのほか、多くのクラシックカクテルにも使用される。
・シャルトリューズ ジョーヌ(イエロー)

- 度 数:43%
- 色 :黄色
- 特 徴:ヴェール(グリーン)よりも穏やかで飲みやすい
- 味わい:甘味が強く、まろやかなハーブの風味
シャルトリューズ ジョーヌ(イエロー)は、
ヴェール(グリーン)をベースにしながら、
より親しみやすい味わいに仕上げられた商品。
1838年に原型が誕生し、
現在ではヴェールと並ぶ定番ボトルとして親しまれている。
ヴェールよりアルコール度数が低く、甘味が強いのが特徴。
ハーブやスパイスの複雑さを持ちながらも口当たりは柔らかく、
シャルトリューズを初めて飲む人にも比較的飲みやすい。
ストレートやロックのほか、デザートとのペアリングや、
カクテルベースとしても人気がある。
・9th Centenaire(9センテナリー)

- 度 数:47%
- 色 :琥珀色
- 特 徴:カルトジオ会創設900周年を記念して発売
- 味わい:ハーブの複雑さと熟成感のある豊かな風味
9th Centenaire(9センテナリー)は、
1984年のカルトジオ会創設900周年を記念して造られた
特別なシャルトリューズ。
ヴェールやジョーヌとは異なる独自のレシピを採用しており、
ハーブの香りに加えて蜂蜜やスパイス、
熟した果実を思わせる複雑な風味を楽しめる。
記念ボトルとして誕生したが高い評価を受け、
現在もシャルトリューズの特別商品として販売されている。
・シャルトリューズ・リキュール・デ・エリキシル 1605

- 度 数:56%
- 色 :緑色
- 特 徴:1605年の写本伝来400周年を記念して発売
- 味わい:ヴェール(グリーン)よりも力強くスパイシー
シャルトリューズ・リキュール・デ・エリクシル 1605は、
修道士へ「長寿の霊薬(エリクシル)」の写本が託された1605年から400周年
となる2005年に発売された記念ボトル。
現代のヴェール(グリーン)の原型ともいえるレシピをイメージして造られており、
ハーブやスパイスの個性がより際立つ味わいを持つ。
シャルトリューズの歴史や起源に興味を持つ愛好家から特に高い人気を集めている。
・シャルトリューズ・エリキシル・ヴェジェタル

- 度 数:69%
- 色 :緑色
- 特 徴:シャルトリューズの原点とされる薬草酒
- 味わい:非常に濃厚で力強いハーブの風味
エリクシル・ヴェジェタルは、
1764年に完成した「長寿の霊薬(エリクシル)」を起源とする商品。
現在販売されているシャルトリューズの中でも
最も歴史の古いレシピを受け継ぐ存在とされている。
アルコール度数は69%(以前は71%だった)と非常に高く、
少量でも強いハーブやスパイスの香りを感じられる。
ストレートで飲まれるほか、角砂糖に数滴垂らしたり、
温かい飲み物に加えたりして楽しまれることもある。
現代のシャルトリューズ誕生につながった原点ともいえる商品であり、
ブランドの歴史を語るうえで欠かせない存在である。
・シャルトリューズVEP

- 度 数:ヴェール(54%)、ジョーヌ(42%)
- 色 :緑色または黄色
- 特 徴:長期熟成された特別仕様のシャルトリューズ
- 味わい:通常版よりもまろやかで奥深い
VEPは「Vieillissement Exceptionnellement Prolongé(特別長期熟成)」の略称。
通常のシャルトリューズよりも長期間オーク樽で熟成される特別商品である。
ヴェール(グリーン)とジョーヌ(イエロー)の両方が存在し、
熟成によって香りや味わいにより深い複雑さが加わる。
アルコールの刺激も穏やかになり、上品で円熟した印象を楽しめる。
生産量は限られており、シャルトリューズの中でも
特に希少な商品のひとつとして知られている。
・シャルトリューズ MOF ソムリエ

- 度 数:45%
- 色 :琥珀色
- 特 徴:フランス国家最優秀職人章(MOF)のソムリエと共同開発
- 味わい:ハーブの複雑さとまろやかな熟成感の調和
シャルトリューズ MOF ソムリエは、
フランス国家最優秀職人章(MOF:Meilleur Ouvrier de Franc)を
受章したソムリエたちと修道士が共同で開発した特別なシャルトリューズ。
ジョーヌ(イエロー)をベースに複数の原酒をブレンドして造られており、
ハーブの豊かな香りと熟成感のある滑らかな味わいを楽しめる。
比較的新しい商品ながら評価は高く、
シャルトリューズの伝統と現代的な感性を融合させた1本として注目されている。
●シャルトリューズの歴史
シャルトリューズの歴史は1605年に始まる。
修道士へ託された「長寿の霊薬(エリクシル)」の写本は、
やがて世界を代表するハーブリキュールへと発展した。
まずはシャルトリューズの歩みを年表で見てみよう。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1605年 | 謎の写本が修道士へ託される |
| 1737年 | 写本がグランド・シャルトルーズ修道院へ移され、 本格的な研究が始まる |
| 1755年 | ジェローム・モーベックがエリクシルを完成させる |
| 1764年 | エリキシル・ヴェジェタルとして販売開始 |
| 1789年 | フランス革命 |
| 1816年 | 修道士が修道院へ帰還 |
| 1838年 | マイルドなリキュール(ジョーヌの原型)が誕生 |
| 1840年 | シャルトリューズ・ジョーヌとヴェールを発売 |
| 1903年 | 修道士がフランスから追放される |
| 1903~1929年 | スペイン亡命下で製造継続 |
| 1929年 | フランスでの製造が復活 |
| 現 在 | 秘伝のレシピが受け継がれている |
・「長寿の霊薬」の写本が修道士へ託される

シャルトリューズの歴史は1605年に始まる。
この年、フランス国王アンリ4世の元帥であった
フランソワ=アンニバル・デストレは、
カルトジオ会の修道士たちに1冊の写本を託した。
その写本には「長寿の霊薬(エリクシル)」のレシピが記されていたとされる。
しかし、その内容はあまりにも複雑だった。
多くの植物や製法が記載されていたものの、すぐに再現できるものではなく、
修道士たちは長い年月をかけて研究を続けることになる。
この謎の写本こそが、後にシャルトリューズ誕生へとつながる原点となった。
ちなみに、この写本の作者は不明で、16世紀の錬金術師だともいわれている。
・長年の研究を経てエリクシルが完成

写本はまずパリのヴォーヴェール(Vauvert)修道院で解読が試みられるが、
その内容はあまりに複雑で、長らく実用化には至らなかった。
転機となったのは1737年である。
写本はヴォーヴェール修道院から、
グランド・シャルトルーズ(Grande Chartreuse)修道院に移され、
そこで薬剤修道士ジェローム・モーベックが写本の研究を進める。
そして1755年に「長寿の霊薬(エリクシル)」のレシピを完成させた。
こうして誕生したエリクシルは、
薬草酒として修道院周辺で用いられるようになり、
後のシャルトリューズ誕生の礎となった。
・エリキシル・ヴェジェタルの誕生

完成したエリクシルは高い評価を受け、
そのレシピは修道士たちによって受け継がれていった。
1764年には「エリキシル・ヴェジェタル・ド・ラ・グランド・シャルトルーズ」
として製法が文書化され、販売が始まる。
これが現在のエリキシル・ヴェジェタルの起源である。
後に誕生するジョーヌ(イエロー)やヴェール(グリーン)は、
このエリキシルをもとに発展したリキュールである。
・フランス革命と修道院の閉鎖
1789年にフランス革命が勃発すると、
多くの宗教施設が国有化の対象となった。
カルトジオ会も例外ではなく、
修道士たちは修道院を離れることを余儀なくされる。
シャルトリューズの製造も中断され、
長年受け継がれてきた秘伝のレシピは消失の危機に直面した。
しかし修道士たちはレシピを守り抜き、混乱の時代を乗り越える。
シャルトリューズはここで一度途絶えかけながらも、
後に復活を果たすことになる。
・修道院への帰還とリキュールの誕生

ナポレオン失脚後の1814年、
カルトジオ会の修道士たちは、
グランド・シャルトルーズ修道院への帰還を許された。
これによりシャルトリューズの製造も再開される。
その後、修道士たちはエリキシル・ヴェジェタルをもとに、
より親しみやすいリキュールの開発を進めた。
1838年には後のジョーヌにつながるマイルドなリキュールが開発された。
そして1840年にシャルトリューズ・ジョーヌとヴェールが発売される。
こうしてシャルトリューズは薬草酒からリキュールへと発展し、
その名を広く知られるようになった。
・修道士追放とスペイン亡命

20世紀初頭、フランスでは政教分離政策が進められ、
宗教団体への規制が強化された。
1903年、カルトジオ会の修道士たちはフランスから追放される。
これによりグランド・シャルトルーズ修道院での
シャルトリューズ製造は中断を余儀なくされた。
しかし修道士たちは秘伝のレシピを守り抜き、
スペイン北東部のタラゴナ(Tarragone)へ移住して製造を継続する。
一方、フランス政府は蒸留所やブランド名を接収し、
別の企業に製造を委託した。
ところが、本来のレシピを持たない製品は、
従来のシャルトリューズと同じ評価を得られなかった。
修道士たちが造るタラゴナ版シャルトリューズの人気は高く、
ブランドを支える存在となった。
シャルトリューズは再び存続の危機を迎えたが、
その伝統は失われることなく受け継がれていった。
・フランスへの帰還とブランドの復活

1920年代に入ると状況は大きく変化する。
カルトジオ会とフランス政府との関係改善により、
修道士たちは徐々にフランスへ戻ることが可能となった。
シャルトリューズの商標権を取得していた企業は経営難に陥り、
最終的にブランドの権利は修道士たちのもとへ戻ることとなった。
1929年にはグランド・シャルトルーズ近郊の
ヴォワロン(Voiron)で本格的な製造が再開され、
シャルトリューズは再びフランスへ帰還する。
その後も修道士たちは伝統的な製法を守り続け、
シャルトリューズは世界を代表するハーブリキュールのひとつとして発展していった。
・現代へ受け継がれる秘伝のレシピ

シャルトリューズが特別な存在として知られる理由のひとつが、
現在も秘伝のレシピが受け継がれていることにある。
レシピの詳細は公表されておらず、
その全容を把握しているのはごく限られた修道士のみとされる。
130種類以上の植物を使用することは知られているが、
具体的な配合や製法は厳重に管理されている。
シャルトリューズはフランス革命や修道士追放など、
幾度もの危機を経験しながらも、その伝統を守り続けてきた。
400年以上前に託された写本から始まった物語は、
現在もなお受け継がれている。
こうした長い歴史と秘伝のレシピこそが、
シャルトリューズを世界でも類を見ない
ハーブリキュールたらしめている理由といえるだろう。
●まとめ

シャルトリューズは、1605年に修道士へ託された
「長寿の霊薬(エリクシル)」の写本を起源とするハーブリキュールである。
130種類以上の植物を使用する複雑なレシピは現在も秘伝とされ、
限られた修道士のみが受け継いでいる。
代表的な商品にはヴェール(グリーン)やジョーヌ(イエロー)があり、
そのほかにもVEPやエリキシル・ヴェジェタルなど、
個性豊かなラインナップが存在する。
400年以上にわたり受け継がれてきた歴史と伝統こそが、
シャルトリューズが「リキュールの女王」と呼ばれる理由のひとつといえるだろう。
●あとがき
シャルトリューズはどこのバーに行っても置いてある、代表的なリキュールである。
しかしシャルトリューズを単体で飲んだことのある人は少ない。
主にカクテルに使われるためである。
機会があればぜひストレートかロックで飲んでみてほしい。
または、小さな氷を一つだけ入れても良い。
シャルトリューズの魅力が伝わるだろう。

