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『町の特産品PRに最も成功したカクテル』【キール】

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 キールは、白ワインとカシス・リキュールで作られるカクテルである。
町の特産品である白ワインとカシス・リキュールを使うことで、町は世界中に知れ渡るようになった。

 そんなキールのレシピや誕生背景、バリエーションをみてみよう。

キール
vargazsによるPixabayからの画像

レシピ

材料/レシピ

  • 白ワイン・・・・・・・・100ml
  • カシス・リキュール・・・20ml
  1. カシス・リキュール、冷やした白ワインの順にをワイングラスに注ぐ
  2. 軽くステアする

 つくり方は非常にシンプル。
白ワインとカシス・リキュールを混ぜるだけ。
カシス・リキュールも冷やしておくとさらに美味しくいただける。

 白ワインの爽やかさに、カシス・リキュールの甘酸っぱさが加わる。
食前酒として最適なワイン・カクテル。

 本場のレシピは、白ワインは『ブルゴーニュ・アリゴテ』
カシス・リキュールは『クレーム・ド・カシス・ド・ディジョン』を使う。


誕生背景

フランスの街並み
ElisabellによるPixabayからの画像

 キールの原形は1904年頃にフランスのブルゴーニュ地方にあるディジョン市で誕生した。
ディジョンはパリの南東、リヨンの北に位置する。
当時ディジョン市のレストランで、町の特産品である白ワインとカシスを組み合わせたものを『ヴァン・ブラン・カシス』という名前で提供していた。

 辛口白ワインの『ブルゴーニュ・アリゴテ』は白ブドウ品種のアリゴテ種を使ったもの。
カシス・リキュールの『クレーム・ド・カシス・ド・ディジョン』はディジョンで採れたカシスを使ったもの。

 第二次大戦後、ディジョン市の市長になったキャノン・フェリック・キール(在位1945~1968)は、
町の特産品のPRのために、レセプションやパーティーには必ずこのカクテルを提供した。
このカクテルとともに町の白ワインとカシス・リキュールは評判となった。

 そして6年後の1951年にキール市長の功績を称えて、カクテル名が『キール』に変更される。
カクテル『キール』によって、カシス・リキュールも世界に広まったといっても過言ではない。
ちなみに、フランスで『キール』は商標登録されている。

・カシス・リキュール

カシスの実
Frauke RietherによるPixabayからの画像

 ディジョン市の名産であるフランス語の「カシス」とは、
英語では「ブラック・カラント」日本では「黒スグリ」と呼ばれるベリー系の実である。
黒スグリという名は聞き慣れないが、カシスというとわかるという人も多いのではないだろうか。

 カシス・リキュールは多くのカクテルに使われている。
日本で代表的なものは、『カシス・オレンジ』や『カシス・ウーロン』だろう。
毎日どこかのお店でこれらのカクテルが注文される。
当然カシス・リキュールが使われるのだが、それを広めたキール市長はスゴイ。

 様々なリキュールがある中で、カシス・リキュールは安定した存在感がある。
カシスは「クレーム・ド・○○」の代表格である。

 EUでは、リキュールの糖度に規定がある。
糖分が1L当たり100g以上含まれるものを『リキュール』と定義される。
さらに糖分が1L当たり250g以上含まれるものは『クレーム』と呼ばれる。

 そして『クレーム・ド・カシス』と呼ばれるものは、
糖分が1L当たり400g以上含まれなければならない。
「クレーム」とは英語の「クリーム」のことで、
「クリームのようにトロっとした」という意味合いである。
それにしても400g以上とは、かなり多い量である。


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バリエーション

 キールのバリエーションカクテルとして、以下の3つを紹介しよう。

  • キール・ロワイヤル
  • キール・アンペリアル(インペリアル)
  • カーディナル

・キール・ロワイヤル

キール・ロワイヤル
Karin RomdahlによるPixabayからの画像

材料/レシピ

  • シャンパン(またはスパークリングワイン)・・・100ml
  • カシス・リキュール・・・・・・・・・・・・・・20ml
  1. 冷やしたシャンパンをグラスに注ぐ
    順番を間違えるとシャンパンが泡立って繊細さが欠けてしまうので注意
  2. カシス・リキュールを静かにグラスに注ぐ

 「ロワイヤル」とは、「王室の」という意味。
白ワインをシャンパンに替えることで、王室で飲まれるカクテルのような豪華さをイメージさせる。
シャンパンとカシス・リキュールの香りが、泡によって優雅に漂う。

・キール・アンペリアル(インペリアル)

フランボワーズ
JA2020によるPixabayからの画像

材料/レシピ

  • シャンパン(またはスパークリングワイン)・・・100ml
  • フランボワーズ・リキュール・・・・・・・・・・20ml
  1. 冷やしたシャンパンをグラスに注ぐ
    順番を間違えるとシャンパンが泡立って繊細さが欠けてしまうので注意
  2. フランボワーズ・リキュールを静かにグラスに注ぐ

 「アンペリアル(インペリアル)」とは、「皇帝の」という意味。
キール・ロワイヤルのカシス・リキュールをフランボワーズ・リキュールに替えたもの。

 フランボワーズは、英語では「ラズベリー」、日本語では「キイチゴ」のこと。
カシスよりもフランボワーズのほうが甘く芳醇な香りがする。


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・カーディナル

カーディナル
Dorothée QUENNESSONによるPixabayからの画像

材料/レシピ

  • 赤ワイン・・・・・・・・100ml
  • カシス・リキュール・・・20ml
  1. カシス・リキュール、赤ワインの順にをワイングラスに注ぐ
  2. 軽くステアする

 「カーディナル」とは、「枢機卿」という意味。
カトリックの高位聖職者である枢機卿のケープは深い赤色をしていることから、
カーディナルと名付けられたといわれている。

 キールの白ワインを赤ワインに替えたカクテル。
赤ワインの渋味と、カシス・リキュールの甘酸っぱさが絶妙にマッチしている。

あとがき

 町おこしで特産品をPRされていることは多いが、ここまで成功した例な少ないだろう。
特にカシスはそれほどメジャーなフルーツではないが、クレーム・ド・カシスという名は世界中に知られている。
日本でも町の特産品を掛け合わせて、世界に轟くほどの知名度を得られないものだろうか。
キール市長のように特産品を絞って、徹底的にPRするような人が出てくると面白いと思うのだが。