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スペインではシドラ(Sidra)と呼ばれ、長い歴史を持つ。
主に北部で造られ、酸味が強いのが特徴である。
●味わい
スペインのシドラは、他の国のシードルに比べて酸味がはっきりしていて、
微発泡、または非発泡のものが多い。
今では発泡性(スパークリング)のものや、
マイルドなものもあるが、伝統的なものは酸味が強いものである。
レモンなどの柑橘系の酸味ではなく、
お酢に近いイメージが的を射ている。
この酸味をやわらげる注ぎ方が『エスカンシアール』である。

・エスカンシアール
エスカンシアールとは、
シドラを空気に触れさせて酸味をやわらげる伝統的な注ぎ方である。
高い位置から瓶を傾け、低い位置でシドラをグラスで受ける。
美味しい状態が保てるのは短時間のため、少量を注ぎ、二口ほどで飲み干す。
注ぎ手をエスカンシアドールと呼び、日本ではなかなかお目にかかれない。
●生産地
スペイン北部のアストゥリアス州とバスク地方が主な生産地である。
これらの地域では「シドレリア」と呼ばれる
シドラ専門バルが街のいたるところにある。
スペインはワイン用のブドウ栽培が世界の3本の指に入るほど盛んである。
ブドウ栽培に適した土地を多く持つが、
北部はリンゴ栽培のほうが適しているようだ。

・アストゥリアス州
アストゥリアス州の世界で最もシドラ(シードル)を飲むと言われ、
年間の一人当たりの消費量は50リットル以上とされる。
日本人の年間ビール消費量が15リットル弱なので、
シドラが欠かせないのだろう。
アストゥリアス産のシドラは、
EUから原産地呼称保護(PDO)を認定されており、
アストゥリアス産のリンゴのみを使うことや、製造方法、品質管理など、
厳しい規定をクリアしたもののみが
「Sidora de Asturias(シドラ・デ・アストゥリアス)」と名乗れる。
・バスク地方
シードル生産が盛んなフランスのペイ・バスクと隣接する地域。
フランスのブルターニュで栽培されるリンゴは、
バスク地方から伝わったとされる。
シドラはこの地方のバスク語でサガルド(Sagardo)という。
「サガルド・エグーナ」という新酒解禁祭りがあり、
大量のシドラが消費される。

バスク地方ではシドラを栗の樽で熟成させる。
お祭りでは、栗の樽から栓を抜き、
直接グラスで受ける「チョッチ」という注ぎ方がある。
樽から勢いよく飛び出すシドラは、放物線を描き、空気に触れる。
酸味がまろやかになる注ぎ方で、エスカンシアールの原型とされている。
●各国のシードルの特徴比較
各国のシードルの特徴を簡単にまとめた。
| 国 | 呼び方 | 特徴 |
|---|---|---|
| スペイン | シドラ(Sidra) | 酸味が強く、エスカンシアール文化が特徴 |
| ドイツ | アプフェルヴァイン(Apfelwein) | 酸味が強く、食事向きの味わい |
| アメリカ | ハードサイダー(Hard Cider) | フルーティーで飲みやすく、クラフト系が多い |
| イギリス | サイダー(Cider) | ドライで力強く、パブ文化と結びつく |
| フランス | シードル(Cidre) | 甘口〜辛口まで幅広く、果実味が豊か |
●あとがき
伝統の酸味があるシドラには、伝統の注ぎ方があってこそである。
スペインのシドラを本当に味わうには、
空気に触れさせることに気を配りたい。
酸味の強いシドラは、食欲を刺激し、油を流してくれる。
こってりしたボリュームある料理によく合う。


