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フランスはシードルの代表的な産地として知られている。
特にノルマンディー地方やブルターニュ地方では、
古くからリンゴ酒文化が発展してきた。
シードルはフランスだけでなく、
スペインやイギリスなどでも親しまれている。
なかでもフランスは“本場”として知られる代表的な国のひとつ。
●フランスはシードルの本場のひとつ
フランスのシードル(Cidre)が、
日本でのリンゴ酒の呼び方として定着している。
フランスはワイン大国だが、シードルの歴史も長い。
ワイン大国であるからこそ、フランスはブドウ栽培を優遇し、
守る政策を行い、リンゴ栽培やシードルが冷遇される時代もあった。
シードルは主に北部で造られ、
ほんのり甘味があり、酸味と苦味とのバランスが良い。
●味わい

フランスでは、シードル専用品種のリンゴを使うことが多い。
そしてワインの製造方法を応用して、リンゴのおいしさを引き出している。
また、原産地呼称(AOC)の認定を得ているものは品質が保証されている。
天然酵母による発酵や、有機栽培、酸化防止剤や甘味料の無添加、
炭酸ガスを注入しないなど、自然にこだわる造り手が多い。
甘味料を添加せずに甘味を引き出す伝統製法がキーヴィングである。
・キーヴィング(Keeving)
酵母の栄養源を除去することで、
発酵活動を止めて糖分を残す方法がキーヴィングである。
リンゴに含まれるペクチンが酵母の栄養源となる。
塩化カルシウムによってペクチンをゲル化させることで、
酵母が栄養補給できなくする。
酵母は糖をアルコールと二酸化炭素に分解するが、
この際にペクチンなどの栄養が必要になる。
栄養源であるペクチンが無くなると酵母は糖を分解できなくなる。
そして分解されずに残った糖により、甘味が維持できる。
●生産地

フランス北部では気温が低いため良質なブドウが栽培できず、
リンゴ栽培のほうが適していた。
主な生産地は、ノルマンディ、ブルターニュ、ペイ・バスクである。
これらの地域は、歴史的な背景から独立意識が強いといわれている。
ノルマンディ、ブルターニュでは原産地呼称制度(AOC)が設けられている。
・ノルマンディ地方

ノルマンディは北の民族(ノースマン)に与えられた土地であり、
ノースマンの土地という意味で、ノルマンディとされた。
シードル(リンゴ酒)を蒸留するとアップルブランデーができる。
ノルマンディで、AOCの規定を満たして造られたアップルブランデーのみが、
カルヴァドスと名乗ることができる。
リンゴの蒸留酒すべてがカルヴァドスと勘違いされることが多いが、
ノルマンディで造られたもののみが、カルヴァドスと表示できる。
ノルマンディは、カマンベールチーズも有名な産地であり、
シードルやカルヴァドスと一緒に楽しむことができる。
・ブルターニュ地方

ドーバー海峡(フランスではラ・マンシュ海峡、またはカレー海峡)の先は
イギリス南部であり、ケルト民族の文化や伝統を重んじる地域性がある。
ブルターニュの地名もブリテンからきている。
ブルターニュ地方ではシードルグラスに、
ボレ(Bolée)という陶器のティーカップのようなものを使う。
これもブリテンの影響かもしれない。
・ペイ・バスク
スペインのバスク地方と隣接する地域である。
スペインのシドラ(シードル)の特徴である、
しっかりした酸味が、この地域のシードルにも出ている。
日本ではほとんど見かけない。
●各国のシードルの特徴比較
各国のシードルの特徴を簡単にまとめた。
| 国 | 呼び方 | 特徴 |
|---|---|---|
| フランス | シードル(Cidre) | 甘口〜辛口まで幅広く、果実味が豊か |
| スペイン | シドラ(Sidra) | 酸味が強く、エスカンシアール文化が特徴 |
| イギリス | サイダー(Cider) | ドライで力強く、パブ文化と結びつく |
| アメリカ | ハードサイダー(Hard Cider) | フルーティーで飲みやすく、クラフト系が多い |
| ドイツ | アプフェルヴァイン(Apfelwein) | 酸味が強く、食事向きの味わい |
●あとがき
フランスの酒造りはどうしてもワインの影響を受けてしまう。
その国や地域の食文化に合わせるのは当然のことである。
日本でも国産のシードルやワインは、和食に合うと紹介されることがよくある。
日本の場合、和食がメインの食事は少なく、和洋折衷が現代的なののだが、、、
フランスのシードルは、ワインの良いところを取り入れて、
品質を向上させているので、これからも目が離せない。


