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ウイスキー蒸留所【スコットランド ハイランド】グレンモーレンジィ

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文字数:約2300文字

 スコットランドの蒸留地域は、大きく6つに分けられる
アイラ、アイランズ、キャンベルタウン、ローランド、ハイランド、スペイサイドである。
地域の環境や歴史から特徴が見えてくる。

 6つの区分の中でもハイランドは最も広大な地域である。
それゆえに蒸留所がある場所も海岸、森林、山麓、平野などさまざまであり、
そこで造られるウイスキーに大きな影響を与える。

 ハイランド地域は広大であるため、さらに東西南北の4つに分けられる
北ハイランド、西ハイランド、東ハイランド、中央ハイランド(南ハイランド)である。
中央ハイランドと呼ばれるのはスコットランド全体で見た時に中央に位置するためである。

 ハイランドとローランドは想定境界線として、
西のグリーノッグから東のダンディーを結ぶラインが一般的であるが、
厳密な定義や規定はない。

グレンモーレンジィ

・基礎データ、場所

  • 蒸留所名:グレンモーレンジィ蒸留所
  • 英  字:Glenmorengie
  • 意  味:大いなる静寂の谷間
  • 創  業:1843
  • 仕込み水:ターロギーの泉
  • 蒸留器 :超長バルジ型
  • 現所有者:モエヘネシー・ルイヴィトン社
  • 輸入元 :MHD モエ ヘネシー ディアジオ社
ウイスキーマップグレンモーレンジィ蒸留所

 スコットランドの本土北東のドーノック湾南岸の町テイン近くにある蒸留所。
グレンモーレンジィ蒸留所から北西へ数キロの場所にはバルブレア蒸留所がある。

 創業者はウィリアム・マセソンであり、もともとビール工場だった建物を、
1843年にウイスキー蒸留所に作り替えた

 旧ボトルにはキャッチコピーである、
PERFECTED BY THE SIXTEEN MEN OF TAIN(テインの16人の男たち)
が記述されていた。
これはグレンモーレンジィを16人で造っていることを表している。

 しかし2022年にボトルデザインが変わり、この記述は無くなった
グレンモーレンジィは人気があり、昔に比べて生産量を増やしている。
コンピューター制御などうまく近代化を取り入れつつ、
こだわりの部分は変えずというやり方であるが、現在は3交代の24人体制で生産している。

グレンモーレンジィピクトデザイン
https://www.mhdkk.com/brands/glenmorangie/sp/

 また、ラベルに描かれているのデザインは古代ピクト人が遺跡に描いた模様である。
蒸留所近くにあるカドボールストン遺跡に刻まれた模様を表している。
近隣のバルブレア蒸留所も古代ピクト人のシンボルマークをボトルに描いている。

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・特徴

・味わい

 麦芽はノンピートのものが使われている。
フルーティーで華やかな、軽く繊細な味わい。
味わいと特徴づけている最大の要因はポットスチルにある。

・超長ポットスチル

グレンモーレンジィ蒸留所ポットスチル
https://www.mhdkk.com/brands/glenmorangie/sp/

 グレンモーレンジィのポットスチルは背が高いことで有名である。
スコットランドでも最長クラスの5.14m(キリンと同じくらいの高さ)
最近までスコットランドで一番だったが、2019年設立のホーリールード蒸留所が
さらに長いポットスチルを導入した。

 バルジ型のポットスチルはフルーティーでライトな味わいになるが、
背が高いことでさらにその効果は堅調に表れる。

 このポットスチルが並ぶ蒸留棟は圧巻飲み応えがあり、
ウイスキー好きは一度は訪れたい場所である。
蒸留棟の窓にもピクトの模様がデザインされており、目を楽しませてくれる。

グレンモーレンジィ蒸留所
https://www.mhdkk.com/brands/glenmorangie/sp/

・硬水の仕込水

 テインの町の近くにはターロギーの泉があり、泉の水は硬水である。
グレンモーレンジィは硬水を仕込み水に使っており、それが特徴の一つとなっている。

 スコットランドでのウイスキー造りでは、一般的に軟水が使われることが多い。
アメリカのバーボンなどは石灰岩を通ったライムストーンウォーター(硬水)が使われる。

 硬水はミネラル分(カルシウム、マグネシウム、リン酸など)を多く含むため、
酵母が活性化し、発酵に大きな影響を与える。
硬水を使うと、日本酒でもビールでもハッキリとした味わいになる。

グレンモーレンジィ蒸留所
https://www.mhdkk.com/brands/glenmorangie/sp/

 グレンモーレンジィ蒸留所ができる前はビール工場だった。
硬水はエールなどの濃色系ビールに使われることが多い。
当時もターロギーの泉の硬水を使っていたのなら、
濃厚なスコティッシュエールを造っていのだろうか。

・数々の挑戦

 グレンモーレンジィ蒸留所は他社に先駆けて数々の挑戦を行ってきた。
1990年代初頭にはオフィシャルでのカスクストレングスを販売する。
ボトラーズでの販売はあったが、それまでオフィシャルの樽出し原酒はなかった。

 他にもスコットランドでバーボン樽を使い始めたことや、
蒸留時の加熱にスチーム加熱(間接加熱)を最初に採用したのも、
グレンモーレンジィだと言われている。
そんなグレンモーレンジィの樽へのこだわりは凄まじい。

グレンモーレンジィ蒸留所樽
https://www.mhdkk.com/brands/glenmorangie/sp/

 1990年代半ばにはウッド・フィニッシュを始める
当時はウイスキーではないという批判もあったようだ。
現在では一般的になっている、シェリーやポート、マデイラ、などの後熟は、
グレンモーレンジィが始めたのである。

 さらに、デザイナーカスクというものがある。
オークの植生地、陽の当たる向き、伐採後の乾燥方法、バーボン業者の指定など、
樽の履歴を完全に把握し、設計することからこのように呼ばれている。

 これらの試みが評価されて、多くの消費者から高い人気を得ているのである。

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あとがき

 グレンモーレンジィ蒸留所では2021年から実験用の蒸留所が稼働を始めている。
ガラス張りの蒸留所はライトハウスと名付けられ、
ウイスキー造りに関わる新たな試みが行われている。
そこで得られた知見が製品に反映されるのはまだ先のことではあるが、
これまでの実績からも期待は高まる。
首を長くして待とう、キリンのように。