【Q&A】ウイスキーの疑問解決【中級編】

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文字数:約2700文字

 ウイスキーのことを知ると、さらに深く知りたくなる。
少し難しかったりもするが、一歩先の疑問に答える。

 【基礎編】【データ編】も参考にしていただければと思う。

疑問
John HainによるPixabayからの画像

ウイスキー疑問【中級編】

Q1原料である大麦の種類は?

A1主に二条大麦が使われる

 麦茶などに使われる六条大麦との違いは、デンプンの含有量が多いこと。

 デンプンが多いことで、得られる糖も多くなり、
糖が多いと得られるアルコールが多くなる
このため、デンプンの含有量が多い二条大麦が使われる。

Q2なぜ大麦を発芽させるのか?

A2デンプンを分解する酵素を得るため

大麦畑

 大麦が生長するためにはデンプンを糖に変えて、
エネルギーとして使う必要がある。
芽はデンプンを糖に変える糖化酵素を作り出す。
この糖化酵素を利用して大麦麦芽を糖化する。

 ちなみにアイリッシュでは、未発芽の大麦を大麦麦芽と混ぜて使うことがある。

Q3フロアモルティングとは?

A3伝統的な製麦方法

 水を吸わせた大麦を床(フロア)に敷き詰める。
木製の大型シャベルで大麦を攪拌し、空気に触れさせる。
大麦が芽を出し、麦の半分以上の長さくらいに生長するまで、1~2週間攪拌し続ける。

 現在、フロアモルティングを行っている蒸留所は少ない
多くの蒸留所はモルトスターから大麦麦芽(モルト)を購入している。

Q4モルトスターとは?

A4製麦専門業者のこと

 製麦を専門に行うため、専用装置を使い、大量に安定した品質のモルトを生産できる。
蒸留所は希望するモルトの品質を、オーダーメイドで依頼する。
自社で装置を用意したり、時間をかけるよりも、合理的である。

 モルトスターでは、専用装置(ドラム式やサラディン式)を使い、自動制御で大量に製麦を行う。
ピートの強弱も、オーダー通りのフェノール値に仕上げる。

 伝統的なフロアモルティングとは正反対の、効率重視で生産される。
ウイスキー以外にビール用のモルトも多く生産している。

Q5フェノール値とは?

A5ピート香の強弱を表す際に使われる値

 ピート香が強いほどフェノール値は高くなる
フェノール値の単位はppmであり、
目安だがライトピートでは10ppm以下、
ヘビーピートでは50ppm以上となる。

 世界最強のヘビーピートはオクトモア07.1スコティッシュ・バーレイの208ppmと言われている。

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Q6なぜポットスチルには様々な形があるのか?

A6望みの香り成分を取り出すため

ポットスチル

 ポットスチルの大きさや形状、ラインアームの向きなどは、
望む香り成分を取り出すために工夫されたものである。

 香り成分は軽いものと重いものに分けられる。
これらの目指すバランスは、蒸留所によってさまざまである。

Q6-1軽い/重い香り成分とは?

A6-1エステル系と穀物系

 軽い香り成分は、主にエステル系といわれるフルーツのような香りで、
軽快で爽やかな感じがある。

 重い香り成分は、主に穀物、シリアルのような香りで、
リッチでしっかりとした感じがある。

 これらは原料や発酵工程によっても、左右される。

Q6-2蒸留で軽い香り成分を取り出すには?

A6-2重い香り成分を落とす

 軽い香り成分を得たい場合

  • ポットスチルを大きくする
     蒸気が上部へ到達する前に重い成分は液化しやすくなる。
  • ランタン型にする
     ネック部がくびれていることで、断面積が小さくなり、
     蒸気の通過密度が高まるため、液化しやすくなる。
  • バルジ型にする
     バルジ部は空間が広がるため、蒸気が滞留し、温度が下がり、液化しやすくなる。
  • ラインアームを上向きにする
     ラインアーム内で液化したものが、ポットスチル下部に戻る。
  • 蒸留速度を遅くする
     蒸留速度が遅いと、ポットスチル内の温度差が大きくなる。
     つまり、蒸気が液化しやすくなる。

Q6-3蒸留で重い香り成分を取り出すには?

A6-3液化による還流を抑える

 重い香り成分を得たい場合

  • ポットスチルを小さくする
     蒸気が液化する前に上部へ到達するようにする。
  • ストレート型にする
     蒸気の上昇をスムーズに行わせる。
  • ラインアームを下向きにする
     ラインアーム内で液化しても、ポットスチル下部に戻らず、
     冷却器に到達できるようになる。
  • 蒸留速度を速くする
     蒸留速度が速いと、ポットスチル内の温度差が小さくなる。
     つまり、蒸気が液化しにくくなる。

Q7ニューポットとは?

A7蒸留によって得られた蒸留液

 アルコール度数が70%程度ある。
熟成前のため、無色透明。
樽の影響を受けていない、原料や酵母由来の香りがする。
ニュースピリッツ、ニューメイクとも呼ばれる。

 この段階ではウイスキーとして販売することはできない
蒸留所見学や試飲会で飲める可能性がある。

Q8樽の大きさは?

A8 700リットル以下

樽

 スコッチやジャパニーズ、カナディアンでは700リットル以下と定められている。
以下のような大きさの種類がある。

  • バレル:180~200L
     バーボンの熟成に使われるサイズのため、バーボンバレルとも呼ばれる。
     容量が小さいため、熟成が早く進む
     (液体の体積当たりの、樽との接地面積が大きい)
  • ホグスヘッド:250L
     一番多く使われているサイズ
     バーボンバレルや、シェリーバットをばらして、組み立てられる。
     液体を入れた重さが豚一頭分に相当することに、名前の由来がある。
  • バット:480L
     シェリーの彫像用に使われるサイズのため、シェリーバットとも呼ばれる。
     容量が大きいため、熟成がゆっくり進む
     (液体の体積当たりの、樽との接地面積が小さい)

 700リットル以上の特大サイズや、100リットル程度の極小サイズはほとんど使われない。
運搬や漏れ、熟成速度の管理が難しく、現実的な生産には向かない。

Q9ボトラーズとは?

A9独立瓶詰め業者のこと

 独立瓶詰め業者(インディペンデント・ボトラー)は、
蒸留所から樽詰めウイスキーを購入し、独自で熟成、ブレンドを行い、瓶詰めして販売する。

 以前スコットランドでは、蒸留所が瓶詰めして販売することが許可されていなかった。
そのため、昔から瓶詰め業者が存在し、ウイスキーを販売していた。
現在でもボトラーズウイスキーは、オフィシャルと差別化されており人気が高い。

あとがき

 ウイスキーのことを深く知れば、次は蒸留所見学に行きたくなる。
実際の製造現場を見ることで、さらに知識は深まる。
現場の人の話を聞くことで、これまで得た知識が身に染みるのを感じるだろう。
そうなるとウイスキーがさらに美味しく味わうことができるようになる。