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スコットランドの蒸留地域は、大きく6つに分けられる。
アイラ、アイランズ、キャンベルタウン、ローランド、ハイランド、スペイサイドである。
地域の環境や歴史から特徴が見えてくる。
6つの区分の中でもハイランドは最も広大な地域である。
それゆえに蒸留所がある場所も海岸、森林、山麓、平野などさまざまであり、
そこで造られるウイスキーに大きな影響を与える。
ハイランド地域は広大であるため、さらに東西南北の4つに分けられる。
北ハイランド、西ハイランド、東ハイランド、中央ハイランド(南ハイランド)である。
中央ハイランドと呼ばれるのはスコットランド全体で見た時に中央に位置するためである。
ハイランドとローランドは想定境界線として、
西のグリーノッグから東のダンディーを結ぶラインが一般的であるが、
厳密な定義や規定はない。
●プルトニー
・基礎データ、場所
![スコットランド
蒸留所マップ](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2024/03/5a088c3786bef1414d11c1d02c846af3-1.jpg)
- 蒸溜所名:プルトニー蒸留所
- 英 字:Pluteney
- 意 味:プルトニータウンに由来する
- 創 業:1826年
- 仕込み水:ヘンプリックス湖
- 蒸留器 :ひょうたん型(特殊バルジ型)
- 現所有者:タイ・ビレッジ社
- 輸入元 :三陽物産(株)
スコットランドの本土北東に位置する蒸留所である。
2013年にウルフバーン蒸溜所ができるまでは、本土最北端の蒸留所だった。
現在のボトルは、蒸留所で使われているひょうたん型のポットスチルを
デザインとして取り入れている。
他では見かけることのない独特の形状であり、
バーなどで見かけるとオールド・プルトニーだと一目でわかる。
ラベルには蒸留所のある港町で盛んだったニシン漁の漁船が描かれている。
さらに海のモルトを意味する「Maritime Malt」の文字も記述されている。
![オールドプルトニー](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2024/03/d2aab61bbc2bbcac4d33a8904c21e654.jpg)
・特徴
・味わい
港町ウィックに蒸留所があり、熟成庫も海に近い。
そのため、海の影響を受けて、潮の香りがする。
特殊な形状のポットスチルで蒸留され、
その味わいはパワフルであるが、繊細さもある。
基本的にはノンピートだが、商品ラインナップの中には
ピーテッドウイスキーを熟成させた樽を使うことで、
ピートの香りを移したものもある。
オフィシャルでは、ストレートで飲むことと、
水を数滴加えて飲むことをオススメしている。
水を加えることで、より深みのある香りが表れるとのこと。
・港町ウィック
![ニシン](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2024/03/herring-1242193_640.jpg)
プルトニー蒸留所は、港町ウィックの一画であるプルトニータウンにある。
プルトニータウンは1810年に整備された。
この町の設計に尽力したのがサー・ウィリアム・プルトニーであり、その名が町に付けられた。
港町ウィックは北海に面しており、ニシン漁が盛んであった。
多くの漁師が集まるところでは、お酒の需要が高まる。
1826年に実業家のジェームズ・ヘンダーソンが蒸留所を建設したのが始まりである。
ニシン漁は夏の間だけに行われ、当時は1000隻以上のニシン船が港を埋め尽くしていたという。
スコットランド各地や、外国からも出稼ぎ労働者が集まり、
「ウィックは金と銀で成り立っている」と言われたほどです。
金はウイスキー、銀はニシンを表している。
しかし、ウイスキーが飲まれるほどに、町は酔っ払いに溢れ、住民には悩みの種だった。
1920年に町で住民投票が行われ、禁酒法が施行されることとなり、
1930年にプルトニー蒸留所は操業停止となる。
・マリタイム・モルトMaritime Malt(海のモルト)
![プルトニー蒸留所](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2024/03/3a8f8a50b80397f365024d24162fbeb9.jpg)
ウィックの町での禁酒法は、1920年から1947年までの27年間続いた。
第二次大戦も終わり、蒸留所は新たなオーナーのもと、1951年に操業を再開する。
その後もオーナーは何度か変わり、ハイラム・ウォーカー社がオーナーの時代は、
ブレンデッドウイスキーの雄バランタインのキーモルトとして使われていた。
1995年に現在の所有者であるインバーハウス社が買収する。
それまではブレンデッド用のウイスキー生産が主だったが、
インバーハウス社になってからはシングルモルトの販売が始まる。
商品コンセプトとして「マリタイム・モルト(Maritime Malt)」を掲げている。
マリタイム・モルトとは海のモルトの意味であり、海辺の町で造られ、
熟成されることで、海からの影響を大きく受けたモルトウイスキーであることを強調している。
海風の香りや、ソルティーさが特徴として表れている。
・特殊ポットスチル
![プルトニー蒸留器](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2024/03/774b2e1dc5a1b91385d761bcc8492070.jpg)
プルトニー蒸留所のポットスチル(蒸留器)は特殊な形状をしている。
蒸留器は通常、ストレート型、ランタン型、バルジ型(ボール型)の3タイプに分けられる。
プルトニー蒸留所のポットスチルはバジル型(ボール型)である。
しかし、通常のものよりもバルジ(ボール)が大きいのである。
そのため、蒸留釜とバルジがひょうたんのように見える。
また、一般的なポットスチルの特徴であるスワンネックが無い。
ポットスチルの頂上部からラインアームが伸びる姿がスワンネックといわれる由縁であるが、
プルトニーのポットスチルはヘッドの頂上部が切り落とされており、
ラインアームはヘッドの途中に付けられて、T字になっている。
これはポットスチルを設置する当時、ヘッドが天上よりも高かったため、
切るしかなかったためだという。
さらに再留釜はラインアームも工場配管のように曲がっている。
なぜこのような形状をしているのかは不明。
とても特殊でユニークなポットスチルがプルトニーの特徴でもある。
●あとがき
オールドプルトニーは塩気があり、独特の味わいなのでわかりやすい。
ボトル形状も独特であり、バーなどでは一目でわかる。
以前のボトルにも、ひょうたんの下の部分はあったのだが、
蒸留器の形状をより表すためにひょうたんの上部を追加して、
現在のデザインになった。
とても重要で、効果的な戦略である。
もしかしたらウイスキーを注ぐ際に、ボトル形状が味や香りに影響を与えるかもしれない、
と思いながら飲むのもよいだろう。