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昨今、健康食材として注目が集まる酒粕。
日本の伝統的スーパーフードである酒粕はさまざまな料理に使える。
酒飲みには嬉しいおつまみとして『酒粕レーズン』がある。
とても簡単に作れるので、ぜひ挑戦してほしい。

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●酒粕レーズンのつくり方
①レーズンを湯通しして、②酒粕と混ぜるだけ。
この2工程で簡単に酒粕レーズンが作れる。
・用意するもの
- レーズン :50~70g
- 酒粕 :100g
- 容器 :200g以上の容量があるもの
・つくり方
- レーズンを湯通しし、水分をふき取る
レーズンはオイルコーティングされているため、熱湯でオイルを落とす。
湯通しは30~60秒くらいでよい。
表面の油を落とすことで、酒粕の味わいが浸み込みやすくなる。 - 酒粕をほぐし、レーズンを混ぜる
水または日本酒をおさじ1杯加えて温めるとほぐしやすい。
温めは電子レンジで500w10秒くらいから様子をみる。
温めすぎるとアフコールの風味が飛んでしまう。
酒粕とレーズンを混ぜたら容器に入れて、表面にラップをかけて、
冷蔵庫で2,3日寝かせる。
レーズンを湯通しした後の水分は腐敗の原因となるため、しっかりふき取ること。
レーズンはオイルコーティングされていないものも売っている。
原材料名にオイルがないものを選べば、湯通し無しでそのまま使える。
酒粕のツブ感が気になるなら、やわらかくした酒粕をミキサーにかけるとよい。
なめらかな口あたりになり、クリーミー感が増す。
容器がない場合はジップロックなどのビニール袋でもよい。
袋ごしに手で酒粕をほぐせるのでラクである。
冷蔵庫に保存し、1週間くらいを目安に食べ切るようにしよう。
冷凍保存すれば数カ月はもつ。

●酒粕について

酒粕とは、日本酒を造る際にできる副産物である。
米と麹と水を発酵させたもろみを搾って、日本酒と酒粕に分ける。
日本酒と同様に酒粕にも酒蔵ごとの個性が出る。
発酵する際に、酵母によって糖はアルコールと二酸化炭素に分解される。
このため、酒粕には糖がほとんど残っておらず、甘味は少ない。
酒粕自体に8~11%程度のアルコールが含まれている。
未成年やお酒に弱い人には注意が必要。
・酒粕の栄養素
酒粕はカスと付いているが、栄養素を多く含んでいる。
代表的なものはビタミン、ミネラル、必須アミノ酸など。
- タンパク質
筋肉、臓器、血液、皮膚などの材料
身体機能を調整するホルモンや酵素、抗体、神経伝達物質などの材料
免疫や代謝、血圧調整、神経機能の維持など - ビタミンB1
糖質代謝(ブドウ糖をエネルギーに変える)の補酵素 - ビタミンB2
脂質代謝の補酵素
細胞の再生を助け、体全体の成長を促進する - ビタミンB6
エネルギー代謝の補酵素
タンパク質の分解、合成を助ける
赤血球のヘモグロビン合成 - 葉酸
DNA合成や細胞分化の補酵素
赤血球形成やタンパク質の合成 - パントテン酸
エネルギー産生酵素の補助
免疫抗体やホルモンの合成 - 不溶性食物繊維
腸の蠕動運動を促進 - オリゴ糖
腸内細菌のエサとなる
血糖値が上がりにくい
・酒粕の種類
酒粕は、熟成の有無や形、日本酒の種類で分けられる。
スーパーやネット、酒蔵や酒販店などで購入することができる。
スーパーでは、漬け物のコーナーに置かれていることが多い。
-板粕
もろみをアコーディオンのような圧搾機(通称ヤブタ)で搾ると板状の酒粕ができる。
それを四角形に切り揃えたもの。
この圧搾法は高級酒ではあまり使われない。
つまりお米があまり削られていない日本酒によく使われる。
お米が削られていないほうが、酒粕に栄養分が多く残っている。

-バラ粕
もろみを袋で搾った時にできる。
または、板粕をバラバラにしたものもバラ粕と呼ぶ。
袋搾りは、高級酒によく使われる。
つまり吟醸や大吟醸などのお米が多く削られたものである。
お米の栄養分は外側にあるため、多くの栄養分が削れてしまっている。
-ねり粕
できた酒粕(新粕)を熟成させたもの。
熟成させることで旨味が増し、茶色っぽくなる。
タンクに詰めて踏み固めることから「踏み粕」、「踏み込み粕」、
練り固められて作られることから「練り粕」、
新酒の時期から夏まで熟成させられることから「夏粕」、
新粕が古くなったので「古粕」などと呼ばれる。
粕漬けなどに使われることが多い。

・酒粕の保存方法
アルコールを含むため、冷蔵保存すれば半年以上持つ。
冷蔵していても緩やかに発酵は進む。
冷凍保存も可能。
常温に置いておくと発酵が進み、色が茶色っぽくなるが、問題ない。
熟成が進むと風味が変わるので、また違った味わいが楽しめる。
●レーズンについて

レーズンは主に種なしの白ブドウを乾燥させて作られるドライフルーツ。
天日で乾燥させることにより、ブドウ糖とアミノ酸が結合し、
メイラード反応によって褐色となる。
レーズンをこだわってみるのも面白い。
・レーズンの栄養素
レーズンは乾燥されることにより、ブドウの栄養素が凝縮している。
主な栄養素はカリウム、リン、カルシウム、マグネシウム、鉄分、ポリフェノール、食物繊維などがある。
- カリウム
体内の水分バランスを調整する - リン
歯や骨を作る
エネルギー生成 - カルシウム
歯や骨を作る - マグネシウム
カルシウムの吸収を助ける - 鉄分
血液中で酸素を運ぶヘモグロビンを構成する
貧血予防 - ポリフェノール
抗酸化作用 - 食物繊維
水溶性と不溶性両方がバランスよく含まれている
腸の蠕動運動を促進する
・レーズンの種類
主なものを3つ紹介しよう。
- カリフォルニアレーズン
- サルタナレーズン
- グリーンレーズン
-カリフォルニアレーズン
スーパーなどで見かけるのはだいたいカリフォルニアレーズンである。
種なしブドウを天日干しでしっかり乾燥させたもので、
濃い茶褐色で、濃厚な甘さと風味がある。
-サルタナレーズン
カリフォルニアレーズンよりも天日干しの時間が短いもの。
少し水分が残っているため、柔らかい食感がある。
色は明るめで、すっきりとした甘さがある。
トルコ産のものが多い。
-グリーンレーズン
種なしブドウを日陰干ししたもの。
日に当てないことで緑色を維持したまま乾燥させている。
やや酸味があり、甘味とのバランスが良い。
中国産のものが多い。
・レーズン以外を使う
レーズン以外のドライフルーツでも美味しく作ることができる。
プルーン、アプリコット、イチジク、パイナップルなど。
ナッツ類を混ぜて食感を加えてるのもアリである。
ナッツをお好みの大きさに砕いて、混ぜるだけ。
ドライフルーツ入りのグラノーラを使うとお手軽である。


●酒粕レーズンの健康効果

酒粕とレーズンそれぞれの栄養素が大きな健康効果を生む。
以下のような健康効果が期待できる。
- 腸内環境改善
- 貧血予防
- アンチエイジング
・腸内環境改善
酒粕にもレーズンにも食物繊維が豊富に含まれている。
特に酒粕には他の食品と比べても上位グループに入る。
腸内環境が改善することで、免疫機能が正常化し、さまざまな効果が得られる。
・貧血予防
レーズンに含まれる鉄分が貧血予防に効果を発揮する。
鉄分の他にも多くのミネラルや銅もレーズンに含まれており、貧血に効果的である。
さらに酒粕に含まれる葉酸の血流改善で効果が倍増する。
・アンチエイジング
酒粕に含まれるコウジ酸やポリフェノールの一種であるフェルラ酸は強い抗酸化作用を持つ。
またレーズンに多く含まれるポリフェノールの一種であるアントシアニンにも強い抗酸化作用がある。
これらの相乗効果によってアンチエイジングが期待できる。
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●酒粕レーズンの食べ方
酒粕の風味をまとったレーズンはそのまま味わいのが良いのだが、
他の食べ方も少し紹介しておこう。
簡単で、すぐにできて、風味を活かしたものがオススメである。
- 酒粕レーズンサンド
- 焼き酒粕レーズン
- 酒粕レーズン+○○
・酒粕レーズンサンド
レーズンバターサンドの酒粕バージョンである。
挟むだけなので、すぐできて簡単であるのが良い。
クッキーやビスケットでも問題無いが、オススメはクラッカーである。
クラッカーは塩味があり、酒粕レーズンの甘味を引き立ててくれる。
しっとりした酒粕と、サクサクしたクラッカーの食感が楽しめる。
挟む量はお好みだが、塩気とのバランスが大事である。
・焼き酒粕レーズン
シンプルに焼くだけだが、香ばしさが良い。
トースターでもフライパンでもOK。
ただし焦げやすいので注意が必要。
カリカリが好きな人は薄めを、外カリ内やわが好きな人は厚めにするとよい。
ハチミツや黒蜜をかけてもおいしい。
しょうゆ数滴や、塩をひとふりしてもまたおいしい。
・酒粕レーズン+○○
酒粕レーズンに合う組み合わせ食材はいくつもある。
同じ発酵食品のチーズはよく合う。
チーズの塩味と旨味が酒粕レーズンの味わいを格段に引き上げる。
ただし匂いの強すぎるチーズは酒粕レーズンの風味を台無しにしてしまうのでほどほどが良い。
生ハムとの相性も良い。
生ハムの塩味と肉系の旨味が酒粕レーズンとマッチする。
噛めば噛むほどハムの旨味が出てくるが、酒粕の健康効果が罪悪感を薄めてくれる。
食べ過ぎに注意したい。
●注意点

酒粕レーズンは美味しく、健康にも良い。
しかしいくつかの注意点がある。
- バターレーズンとは別物
- アルコールを含む
- 日本酒が苦手な人には向かない
・バターレーズンとは別物
バターレーズンの代用として酒粕レーズンが挙げられることがある。
これらは似て非なる物である。
共通点はレーズンとしっとり感と見た目くらいである。
せっかくなので、酒粕とバターの主な栄養素と特徴を比べてみよう。

酒粕の主な栄養素は食物繊維、タンパク質、アミノ酸、ビタミンB群。
バターの主な栄養素は脂質、カルシウム、β-カロテン、ビタミンA,D,E。
酒粕の特徴は日本酒の風味、ツブ感、アルコール感。
バターの特徴はコクのある風味、口どけ、高カロリー。
それぞれの特徴は、人によってメリットになったり、デメリットになったりする。
好みや目的によって使い分けるとよいだろう。
・アルコールを含む
酒粕自体には8~11%のアルコール分がある。
温めることによってある程度揮発するが、それでも多少は残る。
アルコールに弱い人や、酒粕レーズンを大量に摂取する人は酔っ払うことがある。
このため、酒粕レーズンを食べた後は運転は控えるべきである。
また、小さな子供にもあまりオススメはしない。
・日本酒が苦手な人には向かない
日本酒好きには、日本酒の風味をまとったレーズンはよいおつまみになる。
しかし、普段から日本酒が苦手な人には美味しく感じないだろう。
酒粕レーズンは健康に良いが、無理して食べるのは良くない。
他にも健康に良い食べ物はたくさんあるのだから。
●あとがき
とても簡単に酒粕レーズンは作れる。
慣れてくるといろいろなバリエーションを試したくなる。
酒粕やレーズンにこだわってみたり、レーズン以外を使ってみたり。
自分好みの酒粕レーズンを探求してみるのもよいし、
意外な組み合わせから思いがけない発見があるかもしれない。
自作の可能性、楽しみを知っていただければ幸いである。