カクテルの分類

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文字数:約8600文字

 世の中には無数のカクテルがある。
数多あるカクテルはいくつかの種類に分けることができる。

 定番カクテルには名前に分類名が使われているものもあり、
どのようなカクテルか想像しやすい。
26の分類を一覧にまとめたので見てみよう。

カクテル分類一覧

ショートとロング

 まずはじめにカクテルは飲み干す時間によって『ショート』『ロング』に分けられる。
ショート・ドリンクは味が崩れる前に短時間で飲み干すもの。
長くても15分くらいで飲み干したい。
アルコール度数が高いものが多い。
マティーニ、マンハッタン、ダイキリなど。

 ロング・ドリンクはゆっくりと時間をかけて飲んでも良いもの。
氷や炭酸が入っているものが多く、冷たさがキープされる。
アルコール度数は低めで、爽やかなものが多い。
ジン・フィズ、ウイスキー・ハイボール、トム・コリンズなど。

 ショート、ロングに分けて、さらにいくつかのスタイルに分かれる
一覧にまとめると以下の表のようになる。
これらは基本的な材料や作り方であり、アレンジされたカクテルはたくさんある。

ショート・ドリンクの分類

ショート・ドリンク
Briam CuteによるPixabayからの画像

 これまでに考え出されたスタイル数多くあるが、
現代ではあまり聞かなくなったものも少なくない。

・サワーSOUR

  • 起源:18世紀中頃のイギリス
  • 材料:蒸留酒、柑橘系果汁、甘味料、(卵白)
  • 技法:シェーク
  • グラス:サワー・グラス、オールドファッションド・グラス
  • 代表:ウイスキー・サワー、ピスコ・サワー

 『サワー』とは、「酸っぱい」という意味。
ウイスキーなどの蒸留酒に、レモンなどの柑橘系果汁と、砂糖やシュガーシロップで作る。
卵白を加えて、泡立てるものもある。

柑橘系
酸っぱい
Ylanite KoppensによるPixabayからの画像

 19世紀には、サワー類にフィックス類も含まれていた。
フィックス類はフルーツをふんだんに飾って作られる特徴があり、
サワー類から分派した。

 日本では、レモンサワーやカルピスサワーなどが有名であるが、
これらのサワーはカクテルサワーとは別物
レモンサワーはレモンチューハイと同じ意味である。

・スリング/SLING

  • 起源:18世紀末のアメリカ
  • 材料:蒸留酒、レモン果汁、甘味料、ソーダやミネラルウォーター
  • 技法:シェーク、ビルド
  • グラス:オールドファッションド・グラス、タンブラー(ハイボール・グラス)
  • 代表:シンガポール・スリング、ジン・スリング

 『スリング』とは、ドイツ語で「飲み込む」を意味する「Schlingen(シュリンゲン)」に由来。
蒸留酒にレモン果汁と砂糖やシロップで作る。
ビルドやシェークで作られる。

 シンガポール・スリングはシェークで、ジン・スリングはビルドで作られる。
ジン・スリングはレモン果汁を使わない場合もある。

 一昔前のスリング類はトディー類(以下で説明)のように、ホットで作るものもあった。

・バック/BUCK

  • 起源:20世紀初頭(1920年代)のロンドン
  • 材料:蒸留酒、レモン果汁、(甘味料)、ジンジャーエール
  • 技法:ビルド
  • グラス:オールドファッションド・グラス
  • 代表:ジン・バック、スコッチ・バック

 『バック』とは、「雄鹿」の意味。
鹿狩りクラブ(バックスキンクラブ)を語源とする。
雄が飲むキック(度数)が強いお酒」を表すという。

雄鹿
Clker-Free-Vector-ImagesによるPixabayからの画像

 砂糖やシロップなどの甘味料は好みによって加えられたりする。
辛口が好みの場合は、ジンジャーエールも辛口(ドライ)を使う。

・コブラー/COBBLER

  • 起源:19世紀初頭(1810年頃)のアメリカ
  • 材料:ワインまたは蒸留酒、甘味料、季節のフルーツ
  • 技法:ビルド
  • グラス:オールドファッションド・グラス、タンブラー(ハイボール・グラス)
  • 代表:シェリー・コブラー、ウイスキー・コブラー

 『コブラー』とは、「靴の修理屋」の意味。
夏に靴の修理屋が喉を潤すために飲んでいたものが評判となったことに由来する。

靴屋
Javad EsmaeiliによるPixabayからの画像

 コブラーの特徴は柑橘類果汁を使わないこと。
季節のフルーツ中に柑橘系が含まれることはある。

 コブラーは当初、シェークで作られていた。
シェリーなどの酒精強化ワインと砂糖とフルーツをグラスに入れ、
サイズの違うグラスを合わせて、シェークする。

 現代のボストン・シェーカーの原形はコブラーを作ることがきっかけになったと言われる。
しかし今はシェークよりもビルドで作るほうが一般的。

・フィックス/Fix

  • 起源:19世紀中頃(1850-60年頃)のアメリカ
  • 材料:蒸留酒、柑橘系果汁、甘味料、(リキュール)、季節のフルーツ
  • 技法:ビルド
  • グラス:タンブラー(ハイボール・グラス)、ゴブレット
  • 代表:ブランデー・フィックス、ジン・フィックス

 『フィックス』とは、「元に戻す」「整える」「準備する」などの意味だが、
なぜカクテルのスタイル名になったかは不明。
コブラー類に柑橘系果汁を加えたスタイルであり、
サワー類に戻したようなスタイルだからなのだろうか?

 グラスにクラッシュドアイスを詰めて、カクテルを注ぎ、フルーツを飾る。
当初はまだ氷が一般的ではなかったが、1870年代後半には製氷機が開発される。

 サワー類に季節のフルーツをふんだんに飾ったもの。
フィックス類はサワー類から派生したスタイルということになる。

・クラスタ/CRUSTA

  • 起源:19世紀中頃(1840年代)のアメリカ
  • 材料:蒸留酒、レモン果汁、甘味料、(リキュール)、ビターズ
  • 技法:シェーク
  • グラス:小さめのワイングラス
  • 代表:ウイスキー・クラスタ、ブランデー・クラスタ

 『クラスタ』とは、「皮、外皮」という意味があるが、
『クラステッド/CRUSTED』には「酒石が生じた」という意味がある。

 グラスの縁につけた砂糖が酒石に見えることに由来するのか、
レモンの皮を指したことに由来するのかは不明。

 アメリカ ニューオーリンズでジョゼフ・サンティーニが考案したとされる。
グラスの縁を砂糖で覆い、レモンの皮をツイストさせたものを飾る。

・フリップ/FLIP

  • 起源:19世紀初頭(1810年以前)のイギリス
  • 材料:酒精強化ワインまたは蒸留酒、甘味料、卵、ナツメグ
  • 技法:シェーク
  • グラス:小さめのワイングラス
  • 代表:ポート・フリップ、ブランデー・フリップ

 『フリップ』とは、「ひっくり返す」の意味。
シェークが広まり始めた時期、卵を使って粘度が高くなった液体を注ぐ際に、
シェーカーをひっくり返していたことが由来とされる。

カクテルシェーカー
BrunoによるPixabayからの画像

 酒精強化ワインまたは蒸留酒、卵(卵黄)、甘味料をシェークし、
ナツメグパウダーを振りかける。
ナツメグ以外のスパイス(シナモンなど)を使う場合もある。

・サンガリー/SANGAREE

  • 起源:19世紀前半(1820年以前)のイギリス領アンティル諸島
  • 材料:蒸留酒または酒精強化ワイン、甘味料、スパイス
  • 技法:シェーク
  • グラス:ワイングラス
  • 代表:ポート・サンガリー、ブランデー・サンガリー

 『サンガリー』とは、スペイン語で「血」を表すサングレ(Sangre)に由来。
ポートワインを使ったカクテルが真っ赤だったことからサンガリーと呼ばれるようになった。

カクテル
サンガリー
Buono Del TesoroによるPixabayからの画像

 酒精強化ワインに砂糖を加えてシェークし、グラスに注ぎ、ナツメグパウダーを振りかける。
蒸留酒の場合は、グラスに注いだ後、酒精強化ワインをフロートして、スパイスを散らす。

・ストレート・アップ/STRAIGHT UP

  • 起源:??世紀のヨーロッパ?
  • 材料:蒸留酒、(ワイン)(柑橘系果汁)(甘味料)(リキュール)(ビターズ)
  • 技法:ステア、シェーク
  • グラス:カクテル・グラス
  • 代表:マティーニ、マンハッタン、ダイキリ

 『ストレート・アップ』とは、「(氷で割らない)そのままの」という意味。
ステアやシェークで氷と一緒に材料を混ぜ合わせ、グラスに注ぐ。
その際に氷が入らないようにストレーナーで濾す。

カクテル
ストレート・アップ
Sharon AngによるPixabayからの画像

 カクテルの原形的なスタイル。
『ストレート・アップ』という言葉を使い始めたのはおそらくアメリカである。
『オン・ザ・ロック』と区別するためだと考えられる。

・オン・ザ・ロック/ON THE ROCK

  • 起源:19世紀後半(1870年以降)のイギリス
  • 材料:蒸留酒、(ワイン)(柑橘系果汁)(リキュール)
  • 技法:ビルド
  • グラス:オールドファッションド・グラス
  • 代表:ジン・ライム、ゴッド・ファーザー、オールド・ファッションド

 『ロック』とは、「岩」を意味し、大きな氷を見立てている。

ロックアイス
Наталья КоллеговаによるPixabayからの画像

 製氷機が開発されたのは1870年代後半だが、自然の氷は存在した。
大きい自然の氷を使ってオン・ザ・ロックでカクテルが飲まれていてもおかしくない。

・シューター/SHOOTER

  • 起源:19世紀半ば(1840年代)のアメリカ
  • 材料:蒸留酒、リキュール、ワイン、甘味料
  • 技法:ビルド(プースカフェ)
  • グラス:ショット・グラス
  • 代表:B-52、イェーガー・シューター

 『シューター』とは、「射手」というそのままの意味で、
ひと口で飲み干す(喉を射抜く)ことに由来する。

 最近ではシューターと呼ばれるが、以前はプース・カフェと呼ばれていた。
プース・カフェ/POUSSE-CAFÉとはフランス語で、
英語では『プッシュ・コーヒー/PUSH-COFFEE』である。
「コーヒーを押しのける」という意味で、食後酒のこと。

虹色
David MarkによるPixabayからの画像

 ショット・グラスに比重の重い材料から混ざらないようにそっと注ぐ。
一気に口に含み、そのまま飲み込んでそれぞれの味をかわるがわる味わうか、
口の中で混ぜ合わせて一つのミックス・ドリンクとして味わうかは好み次第。
見た目は派手だが、あまり美味しいものではないことが多い。

・スマッシュ/SMASH

  • 起源:19世紀半ば(1850年代)のアメリカ
  • 材料:蒸留酒、甘味料、ミント
  • 技法:ビルド
  • グラス:オールドファッションド・グラス、タンブラー(ハイボール・グラス)
  • 代表:ブランデー・スマッシュ、ジン・スマッシュ

 『スマッシュ』とは、「砕く、潰す」という意味。
ミントの葉を軽く潰すことに由来するのだろう。

カクテル
スマッシュ
mvstangによるPixabayからの画像

 ジュレップ類ほど氷を使わず、キンキンにしない。
ミントの量を少なくし、風味を抑える

・ジュレップ/JULEP

  • 起源:18世紀末(1800年以前)のアメリカ
  • 材料:蒸留酒、甘味料、ミント、水またはソーダ
  • 技法:ビルド
  • グラス:ジュレップ・カップ(銀製)、タンブラー(ハイボール・グラス)
  • 代表:ミント・ジュレップ、モヒート

 『ジュレップ』とは、「苦い薬を甘くして飲みやすくしたもの」を意味する。
語源は古代ペルシア語で「ローズ・ウォーター」を意味する『グルアーブ/gluab』にあり、
苦い薬を服用した後に、口直しとして甘いローズ・ウォーターを飲んでいた。

 ローズ・ウォーターがアラビアに伝わり、『ジュラブ/julab』と呼ばれ、
さらにアメリカに伝わるとジュレップと訛って呼ばれる。

 「バラの香りがする水」は「芳香性のある水」となり、
ミントが使われるようになった。

ミント・ジュレップ
WOKANDAPIXによるPixabayからの画像

 バーボンを使うミント・ジュレップが有名だが、
当初はコニャックやピーチ・ブランデーが使われていた。
現代のスタイルが確立されたのは、1870年後半の製氷機が開発されてからである。
氷をたくさん使い、キンキンに冷やされるため、特に暑いところで好まれる。

ロング・ドリンクの分類

 ロング・ドリンクはショート・ドリンクよりも知られているスタイルが多い。
気軽に飲みやすいことが人気なのだろう。

・パンチ/PUNCH

  • 起源:17世紀後半(1700年以前)の東インド諸島
  • 材料:蒸留酒、柑橘系果汁、甘味料、水、スパイス、フルーツ
  • 技法:ビルド
  • グラス:タンブラー(ハイボール・グラス)
  • 代表:プランターズ・パンチ、ティ・ポンシュ、グリーン・ビースト

 『パンチ(punch)』の語源は、サンスクリット語で「5」を意味する『pancha』から派生した『panch』にある。
5つの材料(蒸留酒(アラック)、柑橘系果汁(レモンまたはライム)、砂糖、水または紅茶、スパイス)から作られたことに由来する。

 イギリス人が東インド諸島でパンチを知り、アメリカに伝えたという。
大きなボウルで大量に作られたり、シェークしてショート・ドリンクとして作られたりもする。
ホット・ドリンクで作られることもあり、トディの原形でもある。

・フィズ/FIZZ

  • 起源:19世紀後半(1870年代)のアメリカ
  • 材料:蒸留酒またはリキュール、柑橘系果汁、甘味料、ソーダ
  • 技法:シェーク
  • グラス:タンブラー(ハイボール・グラス)
  • 代表:ジン・フィズ、バイオレット・フィズ

 『フィズ』とは、ガスの弾ける音から「フィズフィズ」と聞こえたことに由来する。

カクテルの弾ける泡
Ri ButovによるPixabayからの画像

 コリンズ類との大きな違いは、シェークかビルドの技法の違いである。
フィズ類はシェーク、コリンズ類はビルドである。
他には、コリンズ類はコリンズ・グラスを使う

 当初は、コリンズ類もフィズ類もシェークで作られていた。
違いはレモン果汁の量による酸味の強さで、コリンズ類のほうが酸味が強かった。
その後、コリンズ類はビルドで作られるようになった。

・コリンズ/KOLLINS

  • 起源:19世紀半ば(1870年代)のロンドン
  • 材料:蒸留酒、柑橘系果汁、甘味料、ソーダ
  • 技法:ビルド
  • グラス:コリンズ・グラス
  • 代表:ジョン・コリンズ、トム・コリンズ

 『コリンズ』とは、カクテル「ジョン・コリンズ」の創作者ジョン・コリンズに由来する。
ロンドンのリマーズ・カフェのマネージャーだったコリンズ氏が創作したカクテルが大評判となり、アメリカにも広まった。

 フィズの項でも述べたが、コリンズ類は当初ビルドではなくシェークで作られていた。
フィズ類との違いはレモン果汁による酸味の強弱と、グラスの大きさだった。

 コリンズ・グラスはタンブラー(ハイボール・グラス)よりも容量が大きい。
コリンズ・グラスは300~360ml、タンブラーは240ml~300mlである。
別名トール・グラスとも呼ばれる。

コリンズ・グラス
Michael TavrionovによるPixabayからの画像

 ベースとなる蒸留酒を変えることで、トムやジョンなどの人名バリエーションが変わる。
ジョンはウイスキーベース、トムはオールド・トム・ジン。

・クーラー/COOLER

  • 起源:19世紀後半(1880年代末)のアメリカ
  • 材料:蒸留酒またはワイン、柑橘系果汁、甘味料、ジンジャーエールまたはソーダ
  • 技法:ビルド、シェーク
  • グラス:タンブラー(ハイボール・グラス)
  • 代表:ボストン・クーラー、ワイン・クーラー、クロンダイク・クーラー

 『クーラー』とは、そのままの意味で「清涼感のある、涼しい」カクテルである。
涼しさを全面に出したこのスタイルは、
1870年代後半に開発された人工製氷機があってこそである。

氷
eyebidderによるPixabayからの画像

 蒸留酒やワインなどに柑橘系果汁と甘味料を加えて、ビルドまたはシェークで混ぜる。
グラスに注ぎ、ジンジャーエールまたはソーダで満たす。

・デイジー/DAISY

  • 起源:19世紀後半(1870年頃)のアメリカ
  • 材料:蒸留酒、柑橘系果汁、甘味料、キュラソー、(ソーダ)
  • 技法:シェーク
  • グラス:ゴブレット、タンブラー(ハイボール・グラス)、カクテル・グラス
  • 代表:ブランデー・デイジー、ジン・デイジー

 『デイジー』とは、「ひな菊」「素敵なもの」という意味。
「素敵なカクテル」の意味合いで創作されたのかは不明。

デイジー
ひな菊
GLadyによるPixabayからの画像

 蒸留酒に柑橘系果汁と甘味料、キュラソーを混ぜ合わせ、
ゴブレットにクラッシュドアイスを詰めて、カクテルを注ぐ。
冷たさが強調したカクテル。

・リッキー/RICKEY

  • 起源:20世紀(1900年頃)のアメリカ
  • 材料:蒸留酒、ライム(またはその他の柑橘系果汁)(甘味料)、ソーダ
  • 技法:ビルド
  • グラス:タンブラー(ハイボール・グラス)
  • 代表:ジン・リッキー

 『リッキー』とは、人名カーネル・ジョー・リッキーに由来するという説がある。
アメリカの議員だったリッキー氏が行く、バー・シューメーカーズでの話。
バーで考案した新作カクテルの味見をリッキー氏に頼んだところ、
お代わりを注文したことからそのカクテルは採用となり、名前をジン・リッキーとした。

 基本的にはライムを使い、甘味料は入れずに作る。
派生カクテルにはライムの代わりにレモンを使ったり、砂糖を入れるものもある。

・ハイボール/HIGHBALL

  • 起源:19世紀末(1890年代)のアメリカ、またはイギリス
  • 材料:蒸留酒、ソーダまたは炭酸飲料
  • 技法:ビルド
  • グラス:タンブラー(ハイボール・グラス)
  • 代表:ウイスキー・ハイボール、ブランデー・ハイボール、クバ・リブレ

 『ハイボール』の由来には、有力な説が2つある。

 1つ目は、ゴルフに関係する。
イギリスのゴルフ場である紳士が自分の番を待つ間、ウイスキーとチェイサー(炭酸水)を飲んでいた。
自分の番がきた時に、ウイスキーを炭酸水に注ぎ、一気に飲み干す。
そのタイミングで、別の人が打ち上げてしまったボールが飛び込んでくる。
とっさに「ハイ(高い)ボール!」と叫んでことが由来とされる。

ゴルフ
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 2つ目は、鉄道に関係する。
19世紀末のアメリカの鉄道では、急行列車に運行状況(遅い速い)を知らせるためにボール信号が使われていた。
運行が遅れている時には、気球(ボール)を高く(ハイ)上げ、急ぐように報せる。
このことから、急ぎ(ウイスキーをソーダで割るだけ)でできるカクテルをハイボールを呼んだ。

鉄道
機関車
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・パフ/PUFF

  • 起源:19世紀末(1890年頃)のアメリカ
  • 材料:蒸留酒、甘味料、牛乳、(ソーダ)
  • 技法:ビルドまたはシェーク
  • グラス:タンブラー(ハイボール・グラス)
  • 代表:ブランデー・パフ、ウイスキー・パフ

 『パフ』とは、「(ぷくっと)膨れる」という意味である。
牛乳を使うことで、泡立った見た目に由来するのだろうか。

 蒸留酒に甘味料と牛乳を加えてよく混ぜ合わせる。
基本的に甘めの飲みやすいカクテルになる。
あまり見聞きすることは少ないが、エッグ・ノッグ類からの派生である。

・コラーダ/COLADA

  • 起源:20世紀半ば(1950年頃)のプエルト・リコ
  • 材料:蒸留酒、(リキュール)、フルーツジュース、ココナッツミルク
  • 技法:シェーク
  • グラス:タンブラー(ハイボール・グラス)
  • 代表:ピニャ・コラーダ、チチ

 『コラーダ』とは、スペイン語で「濾したもの」を意味する。
以前は『カラーダ』と呼ばれていた。

ピニャコラーダ
stokpicによるPixabayからの画像

 比較的新しいスタイルであり、ココナッツミルクを使うのが特徴
ココナッツミルクの代わりにココナッツリキュールを使ってもよい。
夏向けのカクテル。

・フラッペ/FRAPPÉ

  • 起源:19世紀後半(1870年代後半)のアメリカ
  • 材料:蒸留酒またはリキュール、(甘味料)(ミント)
  • 技法:シェーク、ビルド
  • グラス:カクテル・グラス、ソーサー型シャンパン・グラス
  • 代表:ミント・フラッペ、ウイスキー・ミスト

 『フラッペ』とは、フランス語で「氷で冷やした」という意味。
グラスが白く結露することから「霧」を意味するミスト/MISTとも呼ばれる。

カクテル
フラッペ
Stefan SchweihoferによるPixabayからの画像

 蒸留酒またはリキュールに甘味料やミントを混ぜる。
グラスにクラッシュド・アイスを敷き詰め、カクテルを注ぐ。
少し粗めのかき氷のようなカクテル。

 ブレンダーが開発されてフローズン・スタイルが誕生するまでは、
最も冷たいカクテル・スタイルだった。

・フローズン/FROZEN

  • 起源:20世紀前半(1920年代後半)のアメリカ
  • 材料:蒸留酒、(リキュール)、柑橘果汁、甘味料、(フルーツ)
  • 技法:ブレンド
  • グラス:カクテル・グラス、ソーサー型シャンパン・グラス
  • 代表:フローズン・ダイキリ、ベリーニ、テキーラ・サンセット

 『フローズン』とは、「氷った、凍結した」という意味。

フローズンカクテル
ALFONSO CHARLESによるPixabayからの画像

 ブレンダー(ミキサー)でクラッシュド・アイスと材料を一緒にブレンドして作る。
凍らせたフルーツなどもブレンダーで一緒に砕く。
シャーベット状のカクテルができあがる。
暑い季節に最適なカクテル。

・トディ/TODDY

  • 起源:18世紀半ば(1760年代)のイギリス領アンティル諸島
  • 材料:蒸留酒、(レモン果汁)、甘味料、スパイス、お湯またはミネラルウォーター
  • 技法:ビルド
  • グラス:トディ・グラス(耐熱グラス)、マグカップ
  • 代表:ホット・ウイスキー・トディ、グロッグ、ホット・バタード・ラム

 『トディ』とは、インドのヤシの樹液を発酵させて作るトディ・ドリンクに由来。
パンチ類から派生したと考えられる。

トディカクテル
Myriams-FotosによるPixabayからの画像

 トディはホットの意味合いが強くなりつつあるが、コールドも含まれる
ホットは耐熱グラスに材料を入れ、スパイスを効かせると、より身体が温まる。

・エッグノッグ/EGGNOG

  • 起源:18世紀末(1800年以前)のアメリカ
  • 材料:蒸留酒、甘味料、卵、牛乳またはお湯
  • 技法:シェーク
  • グラス:タンブラー(ハイボール・グラス)、耐熱グラス
  • 代表:エッグ・ノッグ、トム&ジェリー

 『エッグノッグ』とは、エッグは「卵」であり、ノッグが諸説ある。
『ノッグ/noggin』はお酒を注ぐ為の小さな木彫りのマグという説。
または『グロッグ/grog』は植民地でラムのことを指し、
卵とラムを使ったお酒『egg and grog』が『eggnog』になったという説。

エッグノッグ
Panteha SaeediによるPixabayからの画像

 エッグノッグは欧米のクリスマスシーズンによく飲まれる。
ホットもコールドもあり、ミルクセーキのようだと人気がある。

あとがき

 26種のカクテルのスタイルを説明してきたが、他にもまだある。
昔のスタイルが見直されて、現代風にアレンジしたカクテルも生まれている。
全く新しい材料や機材を使ったカクテルも誕生している。
まだまだカクテルの分類は増えるだろう。

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