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お酒は大きく、『醸造酒』『蒸留酒』『混成酒』に分類される。
醸造酒 | 蒸留酒 | 混成酒 | |
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概略 | 原料をアルコール発酵 させたもの | 醸造酒を蒸留したもの | 醸造酒や蒸留酒に 副原料を加えたもの |
度数 | 5~14% | 40% | ピンキリ |
代表例 | ビール、日本酒、ワイン | ウイスキー、焼酎、 ブランデー、ウォッカ、 ラム、テキーラ、ジン | 梅酒、リキュール、 ヴェルモット、みりん |
●醸造酒
穀物や果実などを酵母によって、アルコール発酵させたものが醸造酒である。
・原料
醸造酒の原料は、果実や穀物、蜂蜜などの糖やデンプンを含むもの。
ビールは大麦、日本酒は米、ワインはブドウを原料としている。
他にもシードルはリンゴ、ミードは蜂蜜、馬乳酒は馬乳などがある。
・発酵方法
発酵方法は、『単発酵』『単行複発酵』『並行複発酵』の3つがある。
原料が糖分を持っているかどうかで発酵方法が決まる。
・単発酵
原料が糖分を持っている場合、酵母によってアルコール発酵がすぐにできる。
果実やサトウキビ、蜂蜜などの原料は糖分を含んでるので単発酵が可能。
ワインやシードル、ミード、乳酒などが単発酵で造られる。
・単行複発酵
原料が糖分を持っていない場合、糖分をつくる必要がある。
原料が持つデンプンを酵素の力で分解し、糖化する。
得られた糖を酵母によってアルコール発酵させる。
糖化と発酵を分けて行うため、単行複発酵という。
主に穀物からお酒を造る際に、単行複発酵が使われる。
ビールは大麦の麦芽酵素を使って糖化している。
・並行複発酵
単行複発酵と同様に、糖化と発酵が必要。
糖化と発酵を同時に並行して行うため、並行複発酵という。
主に日本酒や東アジアのお酒を造る際に、使われる。
日本酒は麹菌を使って糖化している。
・アルコール度数
酵母は糖を、アルコールと二酸化炭素に分解する。
糖が多ければアルコール度数は高まるが、限界がある。
酵母はアルコール度数が高まると失活(死滅)してしまう。
高アルコール環境で活動できる酵母でも22%程度が限界とされている。
醸造酒のアルコール発酵には限界があるが、他の方法で度数を高めることができる。
酒精強化ワインのように蒸留酒を混ぜるとか、ボックビールのように氷結法を使うなど。
どこまでを醸造酒と呼ぶかの意見はさまざまでる。
・歴史
すべてのお酒の起源とされるのが、蜂蜜酒のミードである。
1万年以上前に偶然できたと言われている。
蜂蜜と水と自然酵母によって偶然できたものを口にしたことが、お酒の始まり。
●蒸留酒
原料をアルコール発酵させたものを、蒸留して度数を高めたものが蒸留酒である。
代表的なものとしてジンが含まれるが、個人的にはジンは混成酒に含まれるのではと考えている。
・蒸留
蒸留とは、沸点の差を利用して水とアルコールを分離する方法。
水の沸点は100℃に対して、アルコール78.3℃である。
醸造酒(もろみ)に熱を加えると、沸点の低いアルコールが先に蒸気になる。
その蒸気を集めて冷やすと液体になり、アルコール度数の高い蒸留液が得られる。
蒸留方法には主に『単式蒸留』と『連続式蒸留』の2つがある。
・単式蒸留
蒸留器を使い、一回の蒸留を行う方法。
一度の蒸留では高アルコール化できないが、原料由来の香りや味わいが多く残る。
求めるアルコール度数によって、蒸留を繰り返し行う。
・連続式蒸留
蒸留機を使い、一度に複数回の蒸留を行う方法。
一度の蒸留で高アルコール化が可能で、無味無臭に近くなる。
安価に大量生産する際に用いられることが多い。
・アルコール度数
蒸留後のアルコール度数はかなり高くなるが、製品化する際に加水して調整される。
蒸留によるアルコールの限界は96%である。
通常の蒸留ではこれ以上、水とアルコールを分離することができない。
・歴史
蒸留方法自体は紀元前から存在し、主に薬作りに使われていた。
その後、中世の時代に錬金術師によって、金の錬成や不老不死の研究の過程で、
香水や薬草酒が造られるようになった。
醸造酒、混成酒に比べると歴史は浅い。
蒸留時の蒸気が、魂(精霊、幽霊)のように見えることからスピリッツと呼ばれた。
●混成酒
醸造酒や蒸留酒に香料や糖分などを添加したもの。
添加するものは、香草薬草など草根木皮や、果汁などの液体、合成調味料などさまざまである。
さらに添加物からの香料やエキスの抽出方法も多々あり、
お酒としてのバリエーションがとても豊富である。
アブサンやハブ酒も混成酒に入る。
・リキュール
リキュールの定義は国によってバラバラであるが、主に蒸留酒を使ったもののことを指す。
混成酒=リキュールではなく、混成酒の中の一つの分類になる。
蒸留酒を使う理由は、アルコール濃度が高いほうが抽出しやすい成分があることと、
水よりもアルコールのほうが混ざりやすい材料・成分があるためである。
・歴史
歴史は紀元前4世紀ごろと考えられている。
昔のお酒はさまざまな味付けがされていた。
ビールもホップが使われる前は、何種類もの香草を使っていたことが知られている。
混成酒という分類が後追いでできたため、例外的な扱いのお酒があるのが現状。
●あとがき
世界中でさまざまなお酒が造られている。
新しい技術を使って、新しい材料から、新しいお酒が造られる。
将来的には現在の3分類では対応できなかるかもしれない。
例えば、現在でもビールの最高アルコール度数は67.5%のものを、ビールに分類するのか、
などの議論があったりする。
人が決めた分類に全てを当てはめることは困難であろう。