文字数:約4800文字
ウイスキーに興味を持ち始めた人や、
なんとなく飲んでいるけどよく知らない、という人の疑問に答える。
よくある疑問を中心に基礎的な内容をまとめた。
さらに深く知りたい人には【中級編】、【データ編】を参考にしていただければと思う。
![疑問](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2023/04/question-mark-gbfb35bec6_640.jpg)
- ●ウイスキー疑問【基礎編】
- Q1 アルコール度数は?
- Q2 ウイスキーの原料は?
- Q3 ウイスキーの主要国はどこ?
- Q4 ウイスキーの語源は?
- Q5 ウイスキーの発祥地はどこ?
- Q6 ウイスキーはいつ頃から造られ始めた?
- Q7 『Whisky』と『Whiskey』、綴りの違いは?
- Q8 ウイスキーの飲み方は?
- Q9 国ごとのウイスキーの違いは?
- Q10 賞味期限は?
- Q11 保管方法は?
- Q12 ウイスキーの製造方法は?
- Q13 ウイスキーができるまでどのくらいかかる?
- Q14 蒸留器(ポットスチル)はなぜ銅製?
- Q15 ポットスチルの形状の種類は?
- Q16 単式蒸留はなぜ2回以上行う?
- Q17 なぜ樽熟成させる?
- Q18 シェリー樽とバーボン樽の違いは?
- Q19 チャーとは何か?
- Q20 ピートとは?
- Q21 エンジェルズシェアとは?
- Q22 シングルモルトとは?
- Q23 シングルカスクとは?
- Q24 日本で最初のウイスキーは?
- Q25 ウイスキーと麦焼酎の違いは?
- ●あとがき
●ウイスキー疑問【基礎編】
Q1 アルコール度数は?
A1 40%以上
ウイスキーの主要生産国では40%以上と定義されている。
例えば、『ジャパニーズウイスキー』と名乗るには、
40%以上のアルコール度数でなければならない。
しかし市販されているウイスキーの中には37%などのものもある。
これは『ジャパニーズ』とは名乗れないが、ウイスキーという品目ではあるので問題ない。
Q2 ウイスキーの原料は?
A2 穀物(モルト(大麦麦芽)、小麦、ライ麦、コーンなど)、酵母、水
ウイスキーは穀物と酵母と水を原料として造られる。
(例外があり、サトウキビの糖蜜を使ったものもウイスキーと呼ぶ国がある)
穀物の種類によって、呼び名が変わる。
モルト(大麦麦芽)を使うとモルトウイスキー。
ライ麦を使うとライウイスキー。
コーンを使うとコーンウイスキー。
複数の穀物を混ぜたものを使うとグレーンウイスキー。
Q2-1 モルトウイスキーとは?
A2-1 モルト(大麦麦芽)を使って造られたウイスキー
多くの国ではモルトを100%使用したもののみをモルトウイスキーと呼ぶ。
主に単式蒸留器が使われるが、連続式蒸留機を使ったモルトウイスキーも存在する。
![大麦麦芽](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2023/04/malt-g0b81e9b42_640.jpg)
Q2-2 グレーンウイスキーとは?
A2-2 複数の穀物を使って造られたウイスキー
複数の穀物をブレンドして造られたものをグレーンウイスキーと呼ぶ。
主に連続式蒸留機が使われるが、単式蒸留器を使ったグレーンウイスキーも存在する。
国によっては、穀物の原料配合比で呼び名が変わることがある。
Q2-3 ブレンデッドウイスキーとは?
A2-3 モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドしたもの
世界中で消費されるウイスキーの8割以上がブレンデッドウイスキーである。
日本でも消費量の大半の割合を占めるのがブレンデッドウイスキーである。
Q3 ウイスキーの主要国はどこ?
A3 スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、日本
![ウイスキー5大生産国](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2023/04/africa-g434ced78e_640.jpg)
ウイスキーの5大生産国がスコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、日本である。
それぞれに特有の呼び名がある。
『スコッチ』『アイリッシュ』『バーボン』『カナディアン』、『ジャパニーズ』である。
これらを名乗る(表記する)ための定義が制定されている。
Q4 ウイスキーの語源は?
A4 『生命の水』を意味するラテン語
ラテン語で『生命の水」を意味する『アクアヴィテ』が
ゲール語に置き換わた『ウシュクベーハ』や『ウスカバッハ』に由来する。
ゲール語は現在のイギリス周辺で使われていた。
Q5 ウイスキーの発祥地はどこ?
A5 スコットランド or アイルランド
正確な発祥地は定かではない。
スコットランドかアイルランドが発祥とされているが、
お互いに決定的な証拠が見つかっていない。
![](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2021/12/bagpipe-g2e4072a44_640-300x200.jpg)
![](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2021/12/flag-g8f3a8b509_640-300x200.jpg)
Q6 ウイスキーはいつ頃から造られ始めた?
A6 15世紀後半には造られていた
スコットランドの文献に、1494年にウイスキーが造られていた記述がある。
つまり造られ始めたのは1494年よりも以前となる。
1170年には、イングランド兵が『アクアヴィタ』をアイルランド人が飲んでいたとの報告が残る。
しかしこの『アクアヴィタ』がウイスキーのことを指すかは不明。
Q7 『Whisky』と『Whiskey』、綴りの違いは?
A7 スコッチ系がWhisky、アイリッシュ系がWhiskey
![ウイスキーの綴り](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2021/12/fd1944a3a86663ada5db779cec24681d.png)
アイリッシュウイスキーがスコッチウイスキーとの
差別化を図るための広告戦略として、”e”を付けた。
19世紀後半、世界中で人気が高まっていたスコッチウイスキーに対抗して、
差別化と独自性を強調するためにアイリッシュウイスキーは『Whiskey』と表記し始めた。
そして、アメリカでもアイルランド移民が手掛けるウイスキーには『Whiskey』と表記された。
しかし、現在ではアイリッシュウイスキーでも『Whisky』と表記するものや、
アメリカンウイスキーでも『Whiskey』を『Whisky』に変更したブランドもある。
![](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2021/12/fd1944a3a86663ada5db779cec24681d-300x163.png)
Q8 ウイスキーの飲み方は?
A8 ストレート、ロック、水割り、ハイボール、、、
飲み方は自由である。
そのままストレートで飲んでも良いし、氷を入れてロックでも良い。
ウイスキーと水を1:1で割るトワイスアップ、水割り、お湯割り、
ハイボール、カクテルなど好みの飲み方で良い。
ただし、高級なウイスキーはまずストレートがオススメである。
ウイスキー本来の香りや味わいを感じてから、好みの飲み方で飲む。
Q9 国ごとのウイスキーの違いは?
A9 それぞれの国で定義がある
国によってウイスキーの定義が違う。
各国の違いを知ることで、ウイスキーの素性を把握できる。
以下の定義に準じていなくても、ただの『ウイスキー』と表記はできる。
![](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2021/12/black-and-white-gf012c4d77_640-300x200.jpg)
Q9-1 スコッチとは?
A9-1 スコットランドで造られるウイスキー
以下に準ずるものが『スコッチ』と名乗れる。
(さらに細かい決まりがあるが、以下が主なものである)
- 原料:穀物、酵母、水
- 製造:スコットランド
- 熟成:オーク樽で3年以上
- 度数:40%以上
Q9-2 バーボンとは?
A9-2 アメリカで造られるウイスキーのひとつ
以下に準ずるものが『バーボン』と名乗れる。
(さらに細かい決まりがあるが、以下が主なものである)
- 原料:コーン(50%以上80%未満)、穀物、酵母、水
- 製造:アメリカ
- 熟成:内側を焦がしたオークの新樽で2年以上
- 度数:40%以上
アメリカではバーボン以外にも、
テネシーやライ、コーンなどが多く造られている。
Q9-3 アイリッシュとは?
A9-3 アイルランドで造られるウイスキー
以下に準ずるものが『アイリッシュ』と名乗れる。
(さらに細かい決まりがあるが、以下が主なものである)
- 原料:穀物、酵母、水
- 製造:アイルランド
- 熟成:木樽で3年以上
- 度数:-
Q9-4 カナディアンとは?
A9-4 カナダで造られるウイスキー
以下に準ずるものが『カナディアン』と名乗れる。
(さらに細かい決まりがあるが、以下が主なものである)
- 原料:穀物、酵母、水
- 製造:カナダ
- 熟成:木樽で3年以上
- 度数:40%以上
Q9-5 ジャパニーズとは?
A9-5 日本で造られるウイスキー
以下に準ずるものが『ジャパニーズ』と名乗れる。
(さらに細かい決まりがあるが、以下が主なものである)
- 原料:大麦麦芽、穀物、酵母、水
- 製造:日本
- 熟成:3年以上
- 度数:40%以上
Q10 賞味期限は?
A10 無し
アルコール度数が高いため、腐敗することはないし、カビも生えない。
適切に保管すれば、数十年でも問題なく飲める。
Q11 保管方法は?
A11 冷暗所に保管する
日光の当たるころに置かないこと。
温度変化の激しいところに置かないこと。
瓶内の残量が少なくなると、酸化が進みやすくなるので、
飲み切るか、小さな瓶に移す。
Q12 ウイスキーの製造方法は?
A12 製麦→糖化→発酵→蒸留→熟成
これはモルトウイスキーの製造方法である。
- 製麦:大麦を発芽させる
- 糖化:製麦した大麦のデンプンを糖に分解する
- 発酵:酵母を加えて糖をアルコールに分解する
- 蒸留:発酵液を蒸留してアルコール度数を高める
- 熟成:蒸留液を樽で熟成させる
![](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2021/12/ribbeck-g28fb8f498_640-300x168.jpg)
Q13 ウイスキーができるまでどのくらいかかる?
A13 蒸留までが1カ月弱、熟成は最低3年
おおよその目安は以下の通りである。
製麦に1~3週間。
多くの蒸留所が製麦業者から製麦済みの大麦麦芽を購入している。
糖化に1~2日、発酵に2~4日、蒸留に1日。
Q14 蒸留器(ポットスチル)はなぜ銅製?
A14 銅が硫黄化合物を吸着する
マイナス面の多い臭い成分の硫黄化合物を銅が吸着する。
硫黄化合物が減少することで、相対的に好ましい香り成分が増える。
銅製でない蒸留器もある。
Q15 ポットスチルの形状の種類は?
A15 ストレート型、ランタン型、バルジ型(ボール型)など
![ポットスチルの形状](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2023/04/b2203c40e1356237259822ebf86e930f.jpg)
蒸留所によってポットスチルの形状は様々である。
さらに大きさやラインアームの角度など、全く同じものは1つもない。
Q15-1 ポットスチルの形状で何が変わる?
A15-1 香りに大きな影響を与える
形状は蒸気の対流に大きな影響を与える。
ストレート型は重厚でリッチに、
ランタン型、バルジ型は軽快で華やかな、フルーティな香りが得られやすい。
Q15-2 ポットスチルの大きさで何が変わる?
A15-2 香りに大きな影響を与える
大きさは蒸気が上部に到達するまでの時間に影響を与える。
ポットスチルが大きいほど軽やかでフルーティな香りとなり、
小さいと原料由来の重厚な香りとなる。
Q15-3 ラインアームの向きで何が変わる?
A15-3 上向きになるほど香りは軽快になる
ラインアームが上向きだと、下部に戻される蒸気の割合が増える。
つまり、よりフルーティーな香り成分が得られる。
Q16 単式蒸留はなぜ2回以上行う?
A16 蒸留1回ではアルコール度数が低いため
1回目の蒸留では25%前後のアルコール度数が得られる。
2回目の蒸留で68%前後のアルコール度数が得られる。
Q17 なぜ樽熟成させる?
A17 樽由来の風味を付与するため
![樽熟成](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2023/04/barrel-g1b83a3c96_640.jpg)
樽熟成することで、樽由来の風味を付与することができ、複雑味が増す。
樽の種類によって、個性が大きく変わる。
主に使わる樽の種類にはバーボン樽とシェリー樽がある。
![](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2021/12/wine-g58242062c_640-300x225.jpg)
Q18 シェリー樽とバーボン樽の違いは?
A18 付与される香りが違う
シェリー樽はドライフルーツなど、
バーボン樽はハチミツやバニラなどの香りが付与される。
Q19 チャーとは何か?
A19 樽の内側を焦がすこと
![チャー](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2023/04/P1010116.jpg)
樽の内側を焦がすことで、木材に含まれるバニリンなどの成分が溶出する。
バニリンは、詰められた蒸留液にバニラ香を与える。
Q20 ピートとは?
A20 泥炭のこと
シダやコケ類、海藻などが堆積してできた粘土状の泥炭。
製麦工程で大麦麦芽(モルト)を乾燥させる際に、燃料と一緒にピートが焚き込まれる。
ピートは産地によって堆積する原料違い、アイラ島のピートが持つ薬品のような臭いは、
ウイスキーに独特の個性を生み出す。
ピートは多くのスコッチで使われるが、ジャパニーズでも使用されているものがある。
Q21 エンジェルズシェアとは?
A21 熟成中に蒸発するウイスキーのこと
![エンジェルズシェア](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2023/04/angel-g47ae249a5_640.jpg)
天使の分け前とも言われる。
樽は環境の変化(温度、湿度など)によって、膨張と収縮を繰り返す。
この時、ウイスキーに樽の成分を付与されるが、
樽に染み込んだウイスキーの一部は外部へ蒸発される。
環境変化の激しい場所では、年に5%程度蒸発する。
Q22 シングルモルトとは?
A22 単一の蒸留所のモルトウイスキーをブレンドしたもの
蒸留所内にあるモルトウイスキーの複数の樽からブレンドする。
複数の蒸留所のモルトウイスキーをブレンドしたものは、
シングルモルトとは名乗れず、ブレンデッドモルトウイスキーという。
以前はヴァテッドモルトやピュアモルトと呼ばれていた。
Q23 シングルカスクとは?
A23 単一の樽からのみ瓶詰めされたもの
ブレンドしないため、高品質の樽からしか瓶詰めされない。
単一の樽のため、瓶詰め本数も限られる。
Q24 日本で最初のウイスキーは?
A24 サントリーウヰスキー 白札
1929年(昭和4年)に、寿屋洋酒店(現サントリー)が日本初の本格ウイスキーを発売。
その後、1940年(昭和15年)に大日本果汁(現ニッカウヰスキー)がニッカウヰスキーを発売。
Q25 ウイスキーと麦焼酎の違いは?
A25 ウイスキーは麦芽酵素、麦焼酎は麹で発酵する
原料の発酵に用いる方法が違う。
ウイスキーは大麦麦芽がつくり出す酵素を使う。
麦焼酎は微生物である麹菌を使う。
![](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2022/02/grain-g08961c93f_640-300x200.jpg)
●あとがき
考え始めると疑問がどんどんわいてくる。
疑問が一つ解決しても、さらに新たな疑問が浮かぶ。
そして深みにはまっていくのだが、ここでは基礎的なことを取り上げた。
少しは役立つと良いのだが。