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     更新日:2022年7月31日

    文字数:約1600文字

     お酒にはそれぞれに様々な歴史があるが、ジンほど波乱万丈な歴史はないだろう。
    ジンは、『オランダが生み、イギリスが育て、アメリカが洗練した』と言われる。
    そして現在、クラフトジンブームによって、新たな歴史の真っただ中にある。
    そんなジンの歴史を見てみよう。

    ジンの起源

     他のお酒と同様に、ジンがいつ、どこで、誰が造り始めたのかはわかっていない。
    13世紀のフランドル地方(ベルギー西部、フランス北部、オランダ南部を含む地域)の資料に、
    ジンの原料であるジュニパーベリーを使ったお酒の記述がある。
    そこにはジュニパーベリー(Juniper Berry)を意味するオランダ語で
    イエネーフェル(Jenever)のことが書かれている。

     このイエネーフェルが、ジンの原形であるジュネヴァ(Jenever)である。
    ジュネヴァがイギリスに伝わり、「Genever」と表記されるようなる。
    その後、イギリス産のジンは、オランダの「Genever」と区別するために「Geneva」と表記される。
    そして短くすることで呼びやすくなったものが「ジン(Gin)」である。

    ジン
    Sasa StankovicによるPixabayからの画像

    ジンの歴史年表

    • 1269年
       フランドルの詩人ヤーコブ・ファン・マールラントが「自然の花 Der Naturen Bloeme」に
       ジュニパーが主原料の強壮剤の記述をする
    • 1495年
       ネーデルラントで発行された書籍に、ジュニパーを使用した蒸留酒のレシピが掲載される
    • 1568年
       オランダ独立戦争(80年戦争)が始まる(~1648年)
       イギリス兵は、オランダ兵がジュネヴァを飲み干してから突撃するのを見て、
       ジュネヴァを「オランダ人の勇気」として称賛する
    • 1581年
       北部ネーデルラント7州(オランダ)がスペインから独立
    • 1602年
       イギリス人発明家ヒュー・プラットの書籍に、ジュニパー飲料として
       「スパイスの蒸留酒」に掲載される
       イギリスでもジュニパーを使った蒸留酒が存在していた
    • 1614年
       アメリカ大陸にオランダ人入植者が、ジュネヴァを持ち込む
    • 1640年
       ドイツの村シュタインハーゲンで、シュタインヘーガーの蒸留所が設立される
    • 1664年
       大手酒類メーカーのボルス社がジュネヴァの製造を始める
    • 1688年
       オランダ総督ウィレム3世が、イギリス国王ウィリアム3世として戴冠し、両国に君臨する
       イギリスでジュネヴァが浸透し始める
    • 1689年
       イギリスがフランス産蒸留酒の輸入禁止
    • 1690年
       イギリスの蒸留法改正により、蒸留酒の独占製造が撤廃され、
       誰でも蒸留酒製造が可能になる
       安くて酔える低品質な酒としてジンが広まり、1751年まで激動の時代が続いた
       のちにこの時代は「Gin Craze (狂気のジン時代)」と呼ばれることになる
    • 1760年
       イギリスで産業革命が始まる
    • 1769年
       ゴードン社創業。商品名に生産者名を付けて、品質の良さをアピール
    • 1820年
       チェルシー蒸留所操業開始、ビーフィーター販売
    • 1826年
       スコットランドの蒸留者ロバート・スタインが連続式蒸留機を発明
    • 1830年
       アイルランドの収税官イニーアス・カフェが連続式蒸留機を改良し、特許取得
       ベルギーがオランダから独立
       タンカレー社創業
    • 1872年
       ギルビー兄弟が蒸留酒製造開始
    • 1906年
       ドライ・マティーニが誕生し、アメリカでドライ・ジンが主流に
    • 1919年
       ベルギーで、アルコール依存撲滅の目的で、
       公衆酒場での蒸留酒販売が禁止になる(~1985年)
    • 1920年
       アメリカで禁酒法が施行される(~1933年)
    • 1987年
       ボンベイ・サファイア発売。ボタニカルを公開し、革命を起こす
    ジン横丁
    狂気のジン時代の風刺画
    ウィリアム・ホガース『ジン横丁』

    ●あとがき

     イギリスで起きたGin Crazeの時代は、異常だった。
    質の悪い酒だとわかっていても、安いので求めてしまう。
    そんなお酒でも飲みたくなる原因は、貧困や不条理からの現実逃避である。
    飲み続けてアルコール依存症になり、負のスパイラルに陥ってしまう。
    このような激動があるジンの歴史を知ると、ますます面白いお酒だなと思う。