ジンの原料【ボタニカル】

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 ジンの特徴を決定づけるのはボタニカルである。
原料となるボタニカルに何を用いるかによって、ジンの9割が決まると言っても過言ではない。

ボタニカルとは

 ジンの原料としてのボタニカルとは、香草や薬草の草根木皮、花や葉、果物や種子などを指す。
蜜や樹液、海藻、貝殻なども用いられ、ジンの原料としてのボタニカルに決まり事はない。

 ボタニカルの状態も、乾燥させたもの、のもの、粉末冷凍などさまざまである。
さまざまな状態のボタニカルから、どのようにして香りや味わいを抽出するかが、
ジンの醍醐味の一つである。

ボタニカル
Bruno /GermanyによるPixabayからの画像

ボタニカルの種類

 ジンに使われるボタニカルの種類は何百とあり、さらに産地の違いもある。
その中でも特によく使われているものが以下となる。
ちなみに、ジュニパーベリーはジンに必須の材料である。

・ジュニパーベリー(Juniper Berry

ジュニパーベリー
Pirkko SeitsenpisteによるPixabayからの画像

 ジンには欠かせない最重要材料
ジュニパーの香りがないものは、ジンと呼べない。

 和名では西洋杜松(セイヨウネズ)と呼ばる、常緑高木の針葉樹。
ジュニパーベリーは青い実から黒く熟すまで、2~3年かかる。
黒く熟した実を採取し、乾燥させてから使われることが一般的。
イタリアやマケドニアのものが良質とされている。

 ジン以外では、ジビエなどの臭みの強い肉料理に香り付けとして使われたり、
エッセンシャルオイルとしても利用されている。

・コリアンダー(Coriander)

コリアンダー
Григорий КалюжныйによるPixabayからの画像

 ジュニパーベリーに次いで、多く使われている。
コリアンダーは英語だが、タイ語ではパクチーである。

 パクチーの香りは葉や茎からのもので、種からはレモンのような香りがする。
ジュニパーとの相性が良く、主に種(シード)が使われる

 葉や茎はタイ料理などによく使われるが、種もスパイスとして利用されている。

・アンジェリカ(Angelica)

 セリ科の植物で、主に根(ルート)が使われる
アンジェリカルートを使うことで、他のボタニカルとの一体感を得ることができる。
ボタニカルを多く使うジンには、まとめ役として用いられることが多い。

 ジン以外ではアロマオイルとして、鎮静作用を得るために用いられている。

根
PicographyによるPixabayからの画像

・オリス(Orris)

 アヤメ科の植物で、イリスやアイリスと呼ばれることもある。
主に根(ルート)が使われる
オリスルートは、他のボタニカルの香りをまとめる役割を果たす。
アンジェリカルートと同様の働きだが、まとめるボタニカルの種類が違う。

 オリスの根は収穫までに2~3年かかり、さらに乾燥・熟成にも2~3年かかる。
このため、希少価値が高く、高価な材料となる。

・リコリス(Liquorice)

 マメ科の植物で、スペインカンゾウ(甘草)とも呼ばれる。
甘草という名の通り、強い甘味がある。
主に根(ルート)が使われる

 ジンに甘みを加えて味を調節し、まろやかにする。
香りは新鮮な緑の爽やかさがある。

・シナモン(Cinnamon)

シナモン
Theo CrazzolaraによるPixabayからの画像

 クスノキ科の常緑高木で、主に樹皮が使われる
別名として、桂皮、ニッキ、ニッケイと呼ばれる。
近縁種に、インドシナ半島に分布するカッシアや、日本のヤブニッケイなどがある。

 ジンに、甘くスパイシーな香りを与える。
よく見かけるシナモンスティックは樹皮を丸めたもので、
蒸留には粉末にしたものを使う。

・柑橘系ピール(Citrus Peel)

柑橘系
PublicDomainPicturesによるPixabayからの画像

 レモンオレンジ、グレープフルーツなどの柑橘系フルーツの皮がよく使われる
これらの皮を乾燥させたものから香り成分を抽出する。
それぞれの香りは想像通りである。

●あとがき

 ジンの自由度の高さが、さまざまな材料を受け入れている。
さまざまな材料に対して、適切な方法で成分を抽出する。
材料が多くなればそれらをまとめる難易度が上がる。
自由度が高いと、選ぶのも一苦労だろう。
製造者の腕の見せ所である。

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