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『ミント・カクテルの両翼』【ミント・ジュレップ】と【モヒート】

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文字数:約4000文字

 ミントを使ったカクテルとしてイメージされるのは、
ミント・ジュレップ』と『モヒート』の2つだろう。

 この2つは見た目も材料も近い
誕生背景や、レシピを知ることで、決定的な違いがわかる。
比較表もまとめたので、理解が深まるだろう。

ミントの葉
Tung LamによるPixabayからの画像
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●レシピ

 それぞれのレシピをみていこう。

・ミント・ジュレップのレシピ

ミント・ジュレップ
https://www.kentuckyderby.com/

材料/レシピ

  • バーボン・ウイスキー・・・・・・・・・50ml
  • シュガーシロップ・・・・・・・・・・・ 5ml
  • ミネラルウォーター(又はソーダ)・・・ 5ml
  • ミントの葉・・・・・・・・・・・・・・7~10枚
  1. グラスにミントの葉、シュガーシロップ、
    ミネラルウォーターを入れ、ミントの葉を潰す
    グラスはシルバー製、または錫製を使うのが伝統的スタイル
    ※ミントの葉を潰しすぎると苦味、えぐみが出るので注意
  2. グラスにクラッシュド・アイスを加え、バーボンを注ぐ
  3. グラス表面に霜が付くまでステアし、ミントの葉を飾り、ストローを挿す

 ミント・ジュレップで使うグラスは、「ジュレップ・カップ」と呼ばれる。
ミントの爽やかな香りと、バーボンの甘い香りが絶妙。
一口目はアルコールが強く感じられるかもしれいないが、
時間が経つにつれて氷が溶けて飲みやすくなる

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・モヒートのレシピ

モヒート
Christo AnestevによるPixabayからの画像

材料/レシピ

  • ホワイト・ラム(またはゴールド)・・・50ml
  • ライム・ジュース・・・・・・・・・・・25ml
  • シュガーシロップ・・・・・・・・・・・ 5ml
  • ソーダ・・・・・・・・・・・・・・・・適量
  • ミントの葉・・・・・・・・・・・・・・7~10枚
  1. グラスにミントの葉、ライム・ジュース、シュガーシロップを入れ、
    ミントの葉を潰す
    ※ミントの葉を潰しすぎると苦味、えぐみが出るので注意
  2. グラスにクラッシュド・アイスを加え、ラムを注ぐ
  3. グラス表面に霜が付くまでステアし、ソーダを適量加え、
    ミントの葉を飾り、ストローを挿す

 ライム・ジュースの代わりにカットライムを搾ってそのまま入れてもよい。
ただしライムを潰しすぎると苦味が出るので注意。

 ミントの爽やかさと、ラムの甘い香りに、ライムの香りが加わる。
ライムの酸味がすっきりとした味わいにまとめてくれて、より爽快感が増す。

 アンゴスチュラ・ビターズを2~4滴加えれば、『モヒート・クリオロ』となる。
モヒート誕生当初はビターズが加えられていたとされる。
クリオロ(Criollo)はスペイン語で「原産地、自国の」を意味する。
苦味のあるモヒートも一味違ってよい。

●誕生背景

 それぞれの誕生背景を説明しよう。
先に誕生したのはミント・ジュレップである。

・ミント・ジュレップの誕生背景

 ミント・ジュレップが誕生したのは1800年頃とされている。
イギリス人教授のジョン・デイヴィスがアメリカ視察旅行で、
バージニア州の人達がミント入りドリンクを習慣的に飲んでいる様子を見かける。
帰国したデイヴィスは1803年出版の旅行記にそのドリンクのレシピを、
ミント・ジュレップの名で記載する。

 創作者は不明だが、当初はコニャックやピーチ・ブランデーに、
ミントを加えたものだった。
いつからかベースがバーボンに変わり、さらに1870年代後半に製氷機が開発され、
現在のスタイルが確立する。

 アメリカ南部の暑い時季に、誰かがミントの葉をお酒に混ぜて、
その清涼感が話題となって広まったということである。

 ちなみに『ジュレップ』とは、「苦い薬を甘くして飲みやすくしたもの」意味する。

ケンタッキーダービー
https://www.kentuckyderby.com/

 ミント・ジュレップは、米国ケンタッキー州で行われる
ケンタッキー・ダービーの公式ドリンクである。
ダービーの期間中に12万杯のミント・ジュレップが飲まれるという。

 バーボンメーカーの中には出来合いのミント・ジュレップを商品化しているものもある。
クラッシュド・アイスに注げば即完成なので、お手軽である。
もしくは冷凍庫で保管しておいて、そのまま飲むのもアリだろう。

・モヒートの誕生背景

 モヒートが誕生したのは1929年のキューバである。
誕生からまだ100年足らずなのを意外に感じる人もいるだろう。

 1902年にキューバがスペインから独立し、
アメリカからミント・ジュレップが伝わり、そのアレンジでモヒートが作られる。
創作者は不明

キューバ ハバナ

 モヒート(Mojito)の名前の由来は諸説ある
どの説もイマイチ説得力に欠ける。

 西アフリカのブードゥー教の言葉「mojo」に由来し、
「魔法のスパイスを入れる布袋」を意味し、
その縮小形である「mojito」は「小さな魔法」を意味するという説。

 スペイン語の「mojar(濡らす)」に由来し、形容詞「mojadito(濡れたもの)」
または「mojado(濡れた)」の短縮形とする説。

 有名な話だが、モヒートはアメリカを代表する文豪
アーネスト・ヘミングウェイが愛したカクテルの一つでもある。
ヘミングウェイが第二の故郷としたキューバで、以下のような言葉を残している。

わがダイキリはフロリディータにて、わがモヒートはボデギータにて

 ハバナにあるレストラン・バー「ラ・ボデギータ・デル・メディオ」で、
ヘミングウェイはモヒートを楽しんだのである。

 ミント・ジュレップと同様に、モヒートも出来合いのものが商品化されている。
味は完成されているので、最後にミントの葉やスライスライムを飾れば、
見栄えも良く、雰囲気が出るだろう。

 -モヒートの原形ドラケ説

海賊船
Dimitris VetsikasによるPixabayからの画像

 モヒートの誕生には別の説もある。
それは『ドラケ』というカクテルのアレンジという説である。

 ドラケ(またはエル・ドラケ)とはアグアルディエンテをベースとしたカクテル。
アグアルディエンテ、ライム、砂糖、ミントで作る。
アグアルディエンテはラムと同様にサトウキビを原料とした蒸留酒。
ただし、蒸留回数が1回なので、度数は20%程度とラムよりも低い。

 1588年にスペインの無敵艦隊をアルマダの海戦で破った
イギリス私掠船団のフランシス・ドレイクも飲んでいたという。
赤痢や壊血病予防のために飲んでいたというが、
当時はまだ製氷機がなかったので、ぬるかっただろう。

 もしドラケが一般に知られるカクテルとして広まっていれば、
ミント・ジュレップが伝わる前にアグアルディエンテをラムに代えたカクテルが
あってもよさそうなのだが、、、

 他にも『ティポンシュ』や『カイピリーニャ』が原形だとする説もある。

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●ミントについて

ハーブミント
congerdesignによるPixabayからの画像

 ミントについても説明しよう。
料理では、肉や魚の臭み消しや、香りづけに使われたりする。
アロマ的には、リフレッシュや、気持ちを鎮めたり、
集中力を高めたりする効能があるとされる。

 カクテルに使われるミントにはいくつか種類がある。
以下の代表的なものを紹介する。

  • スペアミント(Spear Mint)
  • ペパーミント(Pepper Mint)
  • アップルミント(Apple Mint)
  • イエルバブエナミント(Hierba Buena Mint)

 日本的な雰囲気を出すなら、青じそを使うのも良いだろう。
和風ハーブとして独特の風味が一味違ったカクテルを演出できる。

・スペアミント

槍
OpenClipart-VectorsによるPixabayからの画像

 原産地は地中海沿岸とされている。
現在はアメリカをはじめ世界各地で栽培されており、日本でも栽培されている。
葉の形が槍(スペア、スピアspear)に似ていることが名前の由来。

 カクテルにもっとも使われているのがスペアミントである。
清涼感の中にほんのりと甘味が感じられる

・ペパーミント

ペッパーミル
FelixによるPixabayからの画像

 原産地はヨーロッパとされている。
現在はアメリカやカナダ、オーストラリアで多く栽培されている。

 胡椒(ペッパーpepper)のような刺激があることが名前の由来。
ピリッとした風味がカクテルのアクセントとなる

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・アップルミント

アップル
Mathias MüllnerによるPixabayからの画像

 原産地はヨーロッパから西アジアにかけて。
リンゴに似た甘い香りが名前の由来。
丸い形の葉から、和名は「丸葉薄荷(マルバハッカ)」である。

 ミントの爽やかさとリンゴの甘い香りが特徴
カクテルにもよく使われる人気のミント。

・イエルバブエナミント

キューバ 自然
fab WüstによるPixabayからの画像

 キューバでモヒート用にスペアミントを品種改良したもの。
なので、モヒートミントとも呼ばれる。
スペイン語でイエルバは草(ハーブ)、ブエナは良いを意味し、
直訳で「良いハーブ」となる。

 スペアミントよりも穏やかな風味を持つ。
強すぎず、ほどよい爽やかさがラムとよく合う
日本でもミントにこだわっているバーではイエルバブエナが使われている。

・ミントの香りの立たせ

手の空間
Niek VerlaanによるPixabayからの画像

 ミント・ジュレップでも、モヒートでも最後にミントの葉を飾ることがよくある。
そのまま飾っても良いのだが、よりミントの香りを立たせる簡単な方法がある。
それは片方の手のひらに空間をつくり、ミントを入れて、もう片方の手で空間を叩く。
こうすると空気圧でミントがほどよく潰れ、香りが立つ
ミントの香りを存分に感じることができるだろう。

●比較表

 ミント・ジュレップとモヒートの違いがわかるように比較表にまとめた。

ミント・ジュレップモヒート
ベースバーボンラム
度 数約25%約20%
発祥地アメリカキューバ
誕生年1800年頃1929年
味わい爽快感、甘味爽快感、甘味、酸味

 決定的な違いはライムだろう。
モヒートにはライムの酸味が加わるため、すっきりとした味わいになる。

 氷が溶けることで度数は時間とともに下がる。
ストローやマドラーでミントの葉を潰せば、ミント感が増す。
どちらもミントの爽快さが心地好い夏にぴったりのカクテルである。

●あとがき

 ミント・ジュレップもモヒートもアレンジがしやすい。
特にモヒートは最近よく飲まれるようになった。
世界的に見てもモヒートはカクテルランキングで高い人気を誇る。
居酒屋でもモヒートを見かけるくらい世間に認知されている。
ミント・ジュレップとモヒートの違いを知ることで、
より深くカクテルを楽しめるようになれば幸いである。

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