ウイスキーとポットスチル

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 ウイスキー造りの象徴的存在であるポットスチル。
ウイスキーを表すアイコンとしてポットスチルが描かれることも少なくない。
ここではポットスチルの基本的な説明をしよう。

ポットスチルとは

蒸留の原理図
OpenClipart-VectorsによるPixabayからの画像

 モルトウイスキーの蒸留に使用する単式蒸留器のこと
ウイスキー造りでは、材質は主に銅が使われ、手造りされている。
焼酎造りでは、ステンレス製の単式蒸留器がよく使われている。

 初期の頃は、銅が加工しやすかったという理由だが、
最近では銅が香りに与える影響が科学的にも解明されてきている。
蒸留の際に蒸気が銅イオンと接触すると、不快な成分が除去される

 使い続けるうちにポットスチルは薄くなり、少しの衝撃で穴が空いてしまうようになる。
通常、モルトウイスキーは単式蒸留器で2回蒸留されるが、
初留器と再留器の形を変えることもよくある。

 1回目の蒸留(初留)ではアルコール度はまだ20度程度。
2回目の蒸留(再留)で、アルコール成分が凝縮され、原酒となる。

ポットスチルの種類

 種類は形状や大きさ、加熱方法、ラインアームの取り付け角度など様々。
形状としては大きく分けて3種類ある。

  • ストレートヘッド型
     蒸留釜からまっすぐにヘッドが伸びている
     抵抗なく蒸気が上昇するため、複雑で力強い味わいとなる。
  • ランタンヘッド型
     ヘッドの付け根がくびれている
     蒸気の通り道が狭められることで軽い香味成分が上昇し、ライトな味わいになる。
  • ボール型(バルジ型)
     ヘッドの付け根が膨らんでいる
     ボール部分で蒸気が滞留して蒸留釜に戻り、再度上昇する。
     重い香味成分は上昇できず、クリアな味わいになる。

大きさが大きいものは軽い味わいに、小さければ重い味わいになる。
また、ラインアームが長く上向きなら軽く、短く下向きなら重くなる。
加熱方法は直接加熱だと香ばしく、間接加熱だとすっきりした味わいになる。

歴史を変えるかも?鋳造ポットスチルZEMON(ゼモン)

ZEMON
三郎丸蒸溜所

 2018年に富山県の技術を集結させて、世界初の鋳造ポットスチルが開発された。
三郎丸蒸留所(株)老子製作所富山県産業技術開発センターの共同開発。
鋳造ポットスチルは従来の鍛造ポットスチルと違い、様々な特徴がある。

  • 高寿命:鍛造では難しい肉厚を実現し、寿命の長期化
  • 高品質:同じ鋳型を使うことで、高い再現性を実現
  • 短納期:鋳型を造り、液体金属を流し込むことで鍛造よりも速い
  • 省エネ:純銅に比べて青銅(銅錫合金)は熱伝導率が約1/8で、熱が逃げにくい
  • 香味増:凹凸のある鋳肌で蒸気との接触面積が増加

 ZEMON(ゼモン)という名前は、老子製作所の屋号である老子次右衛門(おいごじえもん)に由来。
製造業ではQCD(Q品質、Cコスト、D納期)が重視されるが、
ZEMONは従来のポットスチルよりすべてで優れている。

 納期においては、海外メーカーだと通常納期で約1年(輸送に時間と費用が発生)、
国内だと8カ月程かかるが、ZEMONは鋳型造りを入れて約6カ月
すでに鋳型があれば約4カ月で製造可能という。

 鋳造のメリットがこれだけあれば、ウイスキーや他の蒸留酒製造で
今後多くの蒸留所が採用する可能性がある(特に新設される蒸留所)。

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あとがき

 ポットスチルがまだ小型だった蒸留初期は鋳造品があったかもしれない。
しかし大型を造るには高い技術力が必要になる。
老子製作所は梵鐘(お寺の鐘)を作製してきた実績の技術力がある。
そしてポットスチルを鋳造しようという発想が素晴らしい。
大きな鐘ならイギリスのビッグベンなどあるが、スコットランドやアイルランドは
ウイスキーの歴史や伝統に縛れてこの発想がなかったのか、疑問だ。