日本酒の歴史

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●歴史

・弥生時代

 清酒の起源といわれる口噛み酒が造られる。
 主に巫女が米をよく噛んで容器に吐き出して放置する。
 唾液に含まれる糖化酵素によってデンプン質がブドウ糖に分解され、
 放置することで野生酵母がアルコール発酵を行う。

・古墳・飛鳥時代

 酒は米の豊作を願って、神々や天皇に捧げるためのものだった。

・奈良時代

 宮廷でも酒造りが行われており、『酒部(さかべ)』と呼ばれる専門機関があった。
 『古事記』、『日本書紀』に、酒にまつわる神話が記述される。
 スサノオノミコトがヤマタノオロチに八塩折之酒(やしおりのさけ)を飲ませて退治。

ヤマタノオロチ
photo:acworks

・平安時代

 奈良県菩提山の正暦寺で日本初の清酒が造られたという。

1141年(永治元年)
 現存する最古の酒造メーカー須藤本家(茨城県笠間市)創業。

・鎌倉時代

 酒問屋や民間の造り酒屋が増えてきたが、日本初の禁酒令が出される。
 酒乱や贅沢を戒めるためだったが、税金の収入源として酒が重要だと気付き、
 すぐに廃止した。

・室町時代

 寺院で造られた『僧坊酒(そうぼうしゅ)』が流行り始める。
 『御酒之日記(ごしゅのにっき)』(現存する日本最古の民間酒造書)や
 『多聞院日記(たもんいんにっき)』(140年間書き続けられた寺の日記)に
 菩提酛(ぼだいもと)の製法が記載される。

・江戸時代

 現代の基礎となる酒造りが始まる。
 【火入れの一般化、三段仕込みの定着化、寒造りの定着化、杜氏制度の確立、
 柱焼酎(アルコール添加)の始まり、活性炭素濾過の一般化】

 『童蒙酒造記(どうもうしゅぞうき)』(江戸時代に書かれた醸造技術書)に
 水酛(みずもと)の製法が記載される。

江戸時代の飲み会
naobimによるPixabayからの画像

・明治時代

 日本にワインやビールが輸入されることになり、
 それらと区別するために”日本酒”と呼ぶようになった。

1878年(明治11年)
 日本で初めて瓶詰の清酒が売り出される。

1901年(明治34年)
 一升瓶が登場する。

1904年(明治37年)
 日本唯一の研究機関として、広島県に国立醸造試験所が大蔵省管轄で設置される。

1906年(明治39年)
 公益財団法人日本醸造協会が設立される。

1909年(明治42年)
 国立醸造試験所で山廃酛が開発される。

1910年(明治43年)
 新潟の江田鎌治郎が速醸系酒母を開発。
 乳酸菌を使った速醸に初めて挑戦したのは埼玉の岸五郎だが、結果を発表せず。

1911年(明治44年)
 国立醸造試験所による「第一回全国新酒鑑評会」の開催。

・大正~昭和時代

 ホーロータンクや縦型精米機などの開発で技術革新が起きる。

1923年(大正12年)
 兵庫県立農事試験場で「山田穂」と「短稈渡舟(たんかんわたりぶね)」を交配させ新品種が誕生。
 産地適応試験を終え、1936年(昭和11年)に『山田錦』と命名。

米
Tongpradit CharoenphonによるPixabayからの画像

1935年(昭和10年)
 秋田県の新政酒造の蔵酵母から、きょうかい酵母6号を分離。

1939年(昭和14年)
 戦時下における米の統制が始まり、精米が制限される。

1943年(昭和18年)
 酒類が配給制になる。
 日本酒級別制度の制定。

1945年(昭和20年)
 第二次世界大戦、終戦。

ゼロ戦
brands amonによるPixabayからの画像

1946年(昭和21年)
 長野県の宮坂酒造のもろみから、きょうかい酵母7号を分離。

1953年(昭和28年)
 熊本県酒造研究所のもろみから、きょうかい酵母9号を分離。

1962年(昭和37年)
 酒税法改正により、清酒は特級、1級、2級に分類される。
 戦後の米不足により、三倍増醸酒(三増酒)が出まわる。
 三倍増醸酒とは、もろみに水で薄めた醸造アルコールを加え、
 酸味料や糖類などで味を調整し、もとの3倍の量にしたもの。

三増酒

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1969年(昭和44年)
 酒造用米が配給制から自主流通制度に変更。
 三増酒に対抗して、純米酒や本醸造酒を2級にして販売する蔵が登場。
 安くてもウマい酒として、好評を得る。

1973年(昭和48年)
 日本酒の生産量ピーク((約1,421千kL)

・平成時代

1989年(平成元年)
 級別制度の特級を廃止。

1990年(平成2年)
 特定名称制度の制定。

1992年(平成4年)
 級別制度の全廃。

2001年(平成13年)
 国立醸造試験所が幾度かの改称を経て、現在の独立行政法人酒類総合研究所に移行。

●あとがき

 古代の日本酒はどのようなものだったのだろうか。
食用米、低(無?)精米、自然発酵、無濾過、火入れなしであったと考えると、
少し茶色がかり、酸味が強く、微発泡で、アルコール度数は低め、
にごり酒の常温のようなものを想像する。
玄米のどぶろくと考えればよいのかもしれない。


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