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急性アルコール中毒で救急搬送される人が増えている。
一人当たりの飲酒量は減り続けているのになぜだろうか。
男女別、年代別、月別のデータも交えて、急性アルコール中毒について見てみよう。
![急性アルコール中毒](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2023/07/the-pink-panther-ged15c5a2c_640.jpg)
●酔いの状態
アルコール血中濃度と酔いの状態を、
公益社団法人アルコール健康医学協会が以下のように示している。
個人差があるため、あくまでも目安である。
(血中濃度%) | 酒量 | 酔いの状態 |
---|---|---|
爽快期 (0.02~0.04) | ビール(大びん~1本) 日本酒(~1合) ウイスキー(シングル~2杯) | さわやかな気分になる 皮膚が赤くなる 陽気になる 判断が少し鈍くなる |
ほろ酔い期 (0.05~0.10) | ビール(大びん1~2本) 日本酒(1~2合) ウイスキー(シングル3杯) | ほろ酔い気分になる 手の動きが活発になる 抑制がとれる(理性が失われる) 体温が上がる 脈が速くなる |
酩酊初期 (0.11~0.15) | ビール(大びん3本) 日本酒(3合) ウィスキー(ダブル3杯) | 気が大きくなる 大声でがなりたてる 怒りっぽくなる 立てばふらつく |
酩酊期 (0.16~0.30) | ビール(大びん4~6本) 日本酒(4~6合) ウィスキー(ダブル5杯) | 千鳥足になる 何度も同じことをしゃべる 呼吸が速くなる 吐き気、おう吐がおこる |
泥酔期 (0.31~0.40) | ビール(大びん7~10本) 日本酒(7合~1升) ウィスキー(ボトル1本) | まともに立てない 意識がはっきりしない 言語がめちゃめちゃになる |
昏睡期 (0.41~0.50) | ビール(大びん10本以上) 日本酒(1升以上) ウィスキー(ボトル1本以上) | ゆり動かしても起きない 大小便はたれ流しになる 呼吸はゆっくりと深い 死亡 |
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・急性アルコール中毒とは
急性アルコール中毒は以下のように定義されている。
『アルコール飲料の摂取により生体が精神的・身体的影響を受け、
主として一過性に意識障害を生じるものであり、通常は酩酊と称されるものである』
これは1979年のアルコール中毒診断会議により出された診断基準である。
アルコール血中濃度がいくつと厳密に決められているわけではない。
・急性アルコール中毒の症状
短時間での大量飲酒により、千鳥足や意識が朦朧とした状態となり、
嘔吐、血圧低下、呼吸数の低下などや、昏睡、失禁を起こす。
これらの症状は、酩酊期(アルコール血中濃度0.16~0.30)からあらわれ始める。
ビール大びん4~6本、日本酒4~6合、ウイスキーダブル5杯の量となる。
ビール大びんは633mlなので、中ジョッキ(500ml)5~7杯程度である。
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●急性アルコール中毒による搬送数
東京消防局が公表している急性アルコール中毒搬送数をまとめた。
搬送人数の推移、月別、年代別のデータをそれぞれ見てみよう。
・急性アルコール中毒搬送人員の推移
![急性アルコール中毒搬送人員の推移
グラフ](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2023/07/220aefa4a6d15b6cceda776f456fb60a.jpg)
パンデミック前の5年間は急性アルコール中毒搬送数が増え続けている。
東京都だけで年に18,000人を超えている。
男女差無く同様に増加している。
・急性アルコール中毒の搬送数推移
![急性アルコール中毒の搬送数
グラフ](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2023/07/098bb2dcf7ca95701b951767a3a93b14.jpg)
こちらは特定非営利活動法人ASKが公表しているデータをまとめた。
このデータは東京消防局と大阪市消防局のものである。
東京都は2019年に最大値となっている。
パンデミックがなければ、増加の一途をたどっていたかもしれない。
大阪市は2004年が最大値で、パンデミック前までは増加傾向にあった。
増加の理由は不明である。
グラフの山と合いそうなデータはないか、
酒類別の消費量との関係を調べたが、相関性は得られなかった。
別の機会にさらに深く調べてみることにする。
・月別の急性アルコール中毒による搬送人員
![月別の急性アルコール中毒による搬送人員
グラフ](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2023/07/524680347999a61a63248fa2de84b492.jpg)
月別ではお酒を飲むシーンによって違いが見られる。
最も多いのは12月の忘年会シーズン。
1年の終わりということで、冬休みもあり、気が緩むのかもしれない。
次に多いのが8月のお盆シーズン。
真夏の暑い時期は冷たいお酒を飲みたくなるのだろう。
都外から帰省してきた旧友との再会で盛り上がる。
3月、4月は送歓迎会の季節。
別れや新しい出会いを祝って、気持ちが高揚してしまう。
1月は新年会シーズンだが最も少ない。
新しい年を迎えて、気を引き締めている人が多いのだろうか。
または、忘年会で発散し終えているのか。
・年代別の急性アルコール中毒による搬送人員
![年代別の急性アルコール中毒による搬送人員
グラフ](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2023/07/69843b602d4e0aeea2db4e65b8616e70.jpg)
![年代別の急性アルコール中毒による搬送人員
円グラフ](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2023/07/0b683f29b06c8acd57ceac65f741d47f.jpg)
年代別では圧倒的に20代が多い。
飲酒可能年齢となり、お酒を飲み始めて日が浅いことが1つの要因。
まだお酒の知識が少なく、いろいろと試しながら経験を積んでいる状態。
間違ったお酒飲み方をして、ツライ出来事が起こる。
他にも、薬物とアルコールの反応が原因のケースや、
メンタルヘルスとの関係も考えられる。
次に多いのが30代と60代以上である。
60代以上は加齢によるアルコール分解能力の低下を認識せずに、
これまでと同じように飲酒してしまうことが要因と考えられる。
または、薬とアルコールの反応が原因のケースもある。
●急性アルコール中毒にならないための注意点
急性アルコール中毒にならないためには、以下のような注意点がある。
- 短時間で大量の飲酒しない(イッキ飲みしない、駆けつけ3杯もしない)
- 自分の適量を知る
- その日の体調を考慮する
- 空腹時にアルコールを摂取しない
①短時間で大量に飲酒しない
短時間で大量に飲酒すると、アルコールが一気に吸収されて血液に溶け込む。
血中アルコール濃度が急激に高まると、脳が麻痺し、意識混濁、運動失調、さらに昏睡状態、呼吸停止、心拍停止に至る危険性がある。
イッキ飲みや駆けつけ3杯などの悪い風習はハッキリと断ることが重要。
現代では、これらの行為にはアルハラにあたる。
お酒はゆっくり味わって飲むものである。
②自分の適量を知る
アルコールの代謝機能には個人差があるため、自分がどのくらい飲めるのかを知る。
アルコールの酒類や、お酒の温度との相性もあるので、自分自身を把握しよう。
限界まで飲むのではなく、お酒も食事と一緒で腹八分がほろ酔いでちょうど良いだろう。
③その日の体調を考慮する
体調は日々変わるもの。
周りの環境にも影響を受ける。
それらを総合して、お酒が飲めるのか、飲めるならどのくらいなのかなど考える。
決して無理をしてはいけない。
④空腹時にアルコールを摂取しない
胃に何もない状態ではアルコールはすぐに腸へ向かう。
腸は胃よりも4倍ほどアルコールの吸収が速い。
つまり空腹時にアルコールを摂取するとすぐに酔ってしまうのである。
お酒を飲む前に軽くつまみを食べたよう。
●酔いつぶれた人を見かけたら
酔いつぶれた人を見かたら以下の対処法が望ましい。
- 1人にしない、付き添う
- 衣服を緩める
- 体温が下がるので、上着などで暖かくする
- 横向きに寝かせる
- 無理に吐かせない
- 水が飲めそうなら飲ませてあげる
・1人にしない、付き添う
酔いつぶれて座り込んだり、寝込んだりしている人を見かけたら、絶対に1人にしてはいけない。
不意に起き上がって転倒してしまう恐れがある。
泥酔状態での転倒は受け身が取れず、頭部を強打するで致命傷になる可能性が高い。
嘔吐した時に喉をつまらせる可能性もあるため、絶対に1人にしてはいけない。
救急車を呼んだり、水を買いに行くなりする場合は、他の人に付き添っていてもらおう。
・衣服を緩める
脳が麻痺し、代謝機能が低下すると、呼吸が浅くなる。
身体を締め付けている衣服を緩めることで、呼吸がラクになる。
ネクタイ、ベルト、首元のボタンを緩るめてあげよう。
・体温が下がるので、上着などで暖かくする
暖かくするのは冬場では当然だが、夏場でも体温は下がる。
夏場は汗によってさらに体温が低下するので、注意が必要である。
・横向きに寝かせる
![横向きに寝かせる](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2023/07/76d8a91d1f9a4c5aef3578700f968f15.jpg)
急性アルコール中毒で意識を失った状態で、恐ろしいのは窒息死である。
仰向けに寝ている最中に嘔吐して、喉をつまらせて呼吸困難になるケースが多い。
嘔吐することを考慮して横向きで寝かせることが重要である。
・無理に吐かせない
無理に吐かせようとせず、身体の反応で自然に吐かせなければならない。
無理に吐かせようとすると、胃や喉を傷める可能性がある。
その結果、吐血することもある。
・水が飲めそうなら飲ませてあげる
少し意識があり、水が飲めそうなら飲ませてあげよう。
血中アルコール濃度を薄める働きと、体内のアルコール分解に水が必要である。
イッキに大量に飲ませず、ゆっくり、少量ずつである。
冷たすぎず、常温くらいが望ましい。
完全に意識がない場合は無理に水を飲ませる必要はない。
●救急搬送された後の処置
![救急車](https://www.alcholog.com/wp-content/uploads/2023/07/ambulance-g6801145ac_640.png)
急性アルコール中毒で救急搬送されると、どのような処置がされるのだろうか。
かなりツライ体験をすることになる。
現代の医学では、体内からアルコールを完全に除去する方法はない。
人体が持つ分解能力で、アルコールを分解するしかないのである。
その手助けとして、胃腸内の洗浄をし、アルコールを排出させる。
これは胃の中に生理食塩水を流し込み、内容物を吐かせる。
尿道にカテーテルを差し込み、バルーンを膨らませて強制排尿させる。
このようにして体内へまだ吸収されていないアルコールを体外に排出させる。
体内に吸収されたアルコールは肝臓で分解されるのを待つ。
分解に必要な栄養素や水分を点滴で補充する。
地獄の苦しみである嘔吐。
処置後、排尿時の地獄の痛み。
悲惨な体験であり、自分自身の行いを悔いて、反省するのである。
●あとがき
理由はわからないが、急性アルコール中毒での搬送数が増えている。
お酒の消費量が減少を続けるなかでのことである。
さらにイッキ飲みは良くないという認識、アルハラの認知が広まるなかでのことである。
不思議な事象であり、とても興味深い。
急性アルコール中毒を抑制するためにも、増加の原因・要因を掴まなければ根本的な解決に取り組めない。
急性アルコール中毒は誰にとっても不幸なできごとなので、少しでも減らせればと思う。