日本酒のアルコール添加

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 日本酒の種類にはアルコール添加(アル添)するものと、しないものがある。
アルコール添加の目的や規則などを理解して、日本酒を楽しもう。

日本酒の種類

日本酒の種類

 日本酒の種類は、特定名称酒と普通酒に分けられる。
さらに特定名称酒は、純米タイプと本醸造タイプに分けられる。
この本醸造タイプがアルコール添加されているものである。

 そして普通酒もアルコール添加がされている

醸造アルコールとは

 アルコール添加に使われるのは醸造アルコールというものである。
醸造アルコールは国税庁によって以下のように定められている。

でんぷん質物又は含糖質物を原料として発酵させて蒸留したアルコールとする

 デンプン質の原料とは、米、サツマイモ、トウモロコシなどである。
含糖質の原料とは、サトウキビの廃糖蜜、甜菜の糖蜜、精製糖蜜などである。

 石油から作られる合成アルコールとは原料が違うので安全

 主にサトウキビから造られた96%程度の蒸留酒を、
30%前後まで薄めて、アルコール添加に使われる。
アルコール添加がされ始めた当初は、焼酎を使っていたため、
その名残で30%程度のものを使うのだろう。

目的

 日本酒造りで醸造アルコールを添加する目的は以下の通りである。

  • 酒質の安定化
  • 香りを際立たせる
  • 味わいをスッキリさせる
  • (普通酒は増量による低価格化)

・酒質の安定化

 昔からお酒造りで最も多い失敗が腐造(酸っぱくなる)することである。
空気中に漂っている雑菌などが入り込み増殖して酸っぱくなってしまうのである。
雑菌の増殖を防ぐために度数の高いアルコールを添加することで、酒質が安定化する。

 現代はお酒造りの環境が大幅に改善されて腐造は減ったが、
昔ながらの造りにこだわっている蔵では雑菌に気が抜けない。

・香りを際立たせる

アルコール添加の目的
Gerd AltmannによるPixabayからの画像

 香りの成分は水よりもアルコールに溶け込みやすい
醸造アルコールを添加することで、アルコールの割合が高まり、
多くの香り成分を取り込むことができる。

 純米タイプよりも本醸造タイプのほうが香りが良いと言われるのは、
アルコール添加による効果である。

・味わいをスッキリさせる

 ほとんど無味無臭の醸造アルコールを添加することで味わいがスッキリする
味わいがスッキリしているほうが淡白な料理には合わせやすい。

 日本酒の幅を広げる意味でもアルコール添加は重要といえる。

(普通酒の場合、増量による低価格化)

 普通酒の場合は、アルコール添加することで度数を高めて、
その分だけ加水することで量を増やせる。
量を増やすことで低価格化ができる

 普通酒に添加できるアルコール量には決まりがある。
白米仕込量の50%以下の重量までアルコール添加と、調味料を加えることができる

 特定名称酒(本醸造、吟醸、大吟醸)の場合は、
白米仕込量の10%以下の重量までアルコール添加ができる

 特定名称酒のアルコール添加の目的は低価格化ではなく、香りと味わいにある。

発祥時期

 アルコール添加が行われ始めた時期は、江戸時代初期といわれている。
目的は上記した通り、雑菌による腐造を防ぐためである。
微生物や細菌が知られていない時代に、度数の高いお酒を入れると
酸っぱくならないことを発見したのである。

 当時はまだ連続式蒸留機がない時代なので、醸造アルコールではなく、
米や酒粕から造った焼酎を添加していた。
このことから『柱焼酎造り』と呼ばれていた。

 アルコール添加は江戸時代から続く伝統の技術なのである。

イメージ悪化の原因 三増酒

 アルコール添加についての話をするときに、避けては通れないのが三増酒である。
醸造アルコールを添加することに対して良いイメージを持っていない人がいる。
原因は三増酒にあるのだろう。

戦後の時代
Peggy und Marco Lachmann-AnkeによるPixabayからの画像

 三増酒とは三倍増醸酒の略称である。
三倍増醸酒とは、戦後の米不足の時代に生まれたお酒である。
アルコール添加によって薄まった味を糖類などを添加することで補っていた。
様々なものが混ぜられているため、悪酔いする原因となる。

三増酒

 生産者も消費者も低価格のお酒を欲した時代だったのである。
現代では添加量に制限が設けられ、三増酒を造ることはできなくなっている。

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あとがき

 日本酒といえば純米という、純米信仰が強い人もいるが、
本醸造タイプも素晴らしいということを知ってもらいたい。
最近では醸造アルコールは米由来のものに限定している蔵もある。
まさに昔ながらの造りに近づいている。
純米タイプと本醸造タイプにはそれぞれの良さがある。




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