• お酒全般の情報ブログ

     更新日:2022年9月4日

    文字数:約1600文字

     粉末酒というものがあることをご存じだろうか。
    酒税法にも記載されているが、一般的にあまり知られていないのが現状である。
    粉末酒がどのようなものか見ていこう。

    粉
    Karolina GrabowskaによるPixabayからの画像

    粉末酒とは

     ひとことで言うと、『溶かしてアルコール度数1%以上になる粉末』のことである。
    酒類の定義『アルコール度数1%以上の飲料』の粉末版である。
    酒税法では1985年から粉末酒の記載が加えられた

     お酒の風味やアルコール分を残して、粉末化することは不可能
    といわれていた時代に実現したのが愛知県の企業佐藤食品工業株式会社である。

    ・粉末化技術

     佐藤食品工業(株)は、1966年にお酒の風味とアルコール分を残しての粉末化に成功した。
    その方法は、お酒にデキストリンを混ぜて、噴霧乾燥することで粉末化する。
    この製法は世界17カ国で特許を取得している。

     デキストリンとは、ジャガイモやトウモロコシなどのデンプン物質である。
    噴霧乾燥とは、スプレードライとも呼ばれ、名前のとおり液体を霧状にして乾燥させる方法である。
    液体が霧状になると表面積が増えるため、乾燥しやすくなる。

     デキストリンを混ぜたお酒を霧状に噴射すると、液滴はデキストリンでコーティングされる。
    そこへ熱風を送ることで液滴は瞬時に乾燥される。
    乾燥の際に、デキストリンが水分だけを排出し、風味やアルコール分を残す
    こうしてお酒を粉末化することができる。

    液滴
    Kohji AsakawaによるPixabayからの画像

    アルコール度数

     佐藤食品工業(株)の製品ラインナップには蒸留酒のウォッカ、ラム、ブランデーが並ぶ。
    これらのお酒は通常、アルコール度数は約40%である。
    アルコール度数40%のお酒は30.5%に粉末化されるようだ。
    原液のアルコール度数をどこまで高められるかは不明である。
    お酒の粉末化は、風味とアルコール分を閉じ込めているだけで、濃縮しているわけではない

    ・粉末酒の用途

     粉末酒の主な用途としては、お菓子向けに使われている。
    ケーキやクッキー、チョコレートなどにお酒の風味を与えることができる。
    アルコール含有のお菓子の材料表示を見ると、粉末酒と書いてあるものがある。

     お菓子以外では肉や魚の臭み消しや、照りやつや出し風味づけに使われる。
    食品以外では、入浴剤のお酒シリーズ(日本酒風呂やワイン風呂)に用いられている。

     登山などのアウトドアでの利用が想定できるが、残念ながら粉末酒は業務用のみの販売である。
    そして、デキストリンを混ぜているため、もとのお酒と同じものにはならない。

     他の可能性としては、医療用消毒アルコールとしての輸送の利便性向上や、
    飛行機で提供するお酒を粉末化することで積載重量を減らし、燃料費削減などが考えられる。

    アメリカの粉末アルコール

    パルコール

     アメリカで2014年に『パルコール』という粉末アルコールが開発された。
    粉末化の製造方法は公開されていないが、佐藤食品工業(株)の特許には抵触していないようだ。

     若者の濫用や中毒者の増加が懸念され、すぐには認可されなかったが、
    一杯当たりの必要粉末量を増やす(つまりアルコール含有量を下げる)ことで2015年3月に認可された。
    しかしその後、市民からの様々な反発や抗議があり、30以上の州で販売が禁止されることになった。

     2016年には製造方法をオークションにかけて、130カ国それぞれの最高入札者に渡すとした。
    パルコールを広めるにあたり、各国のお酒に関する法律に自社が対応するのは
    困難と考えたからだという。

    ●あとがき

     日本の粉末酒にしても、アメリカの粉末アルコールにしても、一般に広まるのは難しいようだ。
    使用用途や販売先が限定される中でも、もっと認知が進めば新しい利用価値が出てくると思う。
    中世の錬金術師が不老長寿の薬を求めて蒸留酒を造ったが、
    彼等からすれば、水をアルコールに変える粉末は[賢者の石]に相当するのではないだろうか。
    活用せずに眠らせておくにはもったいない技術だ。

    SNSシェア