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キリンと聞いてまず思い浮かべるのがビールだろう。
しかし最近はプラズマ乳酸菌を使った商品もよく見かけるようになった。
そんなキリンの売上やその内訳、株価などの数値をグラフに可視化することで、
一目で深く理解することができる。
お酒を中心にデータを見てみよう。
データはキリンが公開しているものを使用した。
●キリンホールディングス売上と利益
キリンHDの2017年から2023年の連結売上と営業利益のグラフである。
酒類の収益は酒税込みと酒税抜きがある。
連結売上はパンデミックによって減少はしたが、その幅は小さい。
そして2022年にはパンデミック前の水準を超えている。
その一方で営業利益は2019年に大きく減少している。
そしてパンデミックによってさらに減少することになる。
2022年、2023年で上昇を見せるが、まだ完全に回復したとはいえない。
次に連結売上の内訳を見てみよう。
・連結売上内訳
2023年の酒税込み連結売上の内訳グラフである。
売上の半分である49%を占めるのが酒類である。
24%が飲料、21%が医薬、5%がヘルスサイエンス、1%がその他となっている。
飲料は生茶や午後の紅茶、ヘルスサイエンスを取り入れたiMUSEなどがある。
医薬に関しては1982年から研究開発を始めている。
長年の研究から生まれたものも多い。
さらにその成果を他事業にも取り込んでいる。
ヘルスサイエンスはプラズマ乳酸菌を使った免疫ケア商品を展開している。
最近のおもしろい商品として、塩味を感じやすくなるスプーンがある。
減塩料理でも満足のいく味を得られるというものだ。
酒類はビール類、ワイン、スピリッツなどを扱っている。
・地域別売上収益
2023年の地域別売上マップである。
日本での売上が全体の55%、アメリカが25%、
オセアニア10%、その他9%である。
アメリカの比率が高いことがわかる。
2017年からの推移を見てみよう。
2017年、アメリカの売上はその他の地域に含まれていた。
2018年から独立データとされ、年々売上を伸ばしている。
日本、オセアニアは減少後の回復が遅れている。
経済に強さがあるアメリカへの戦略が功を奏している。
●酒類データ
酒類の詳細データを見てみよう。
・酒類売上金額内訳
2023年の酒類売上金額の内訳を表したグラフである。
酒類合計で1兆451億円の売上である。
全体売上の62%を占めるのがキリンビールである。
キリンビールには、ビール類以外にも氷結などのRTDも含まれる。
次いでLionの合計が27%を占める。
Lionとはオーストラリアを本拠地とするキリンの完全子会社である。
豪州のみにとどまらず、オセアニア、北米にも販路を広げている。
主力商品はHahnやXXXX(フォーエックス)である。
日本では見かけることはほとんどない。
2%を占めるFour Rosesはバーボンウイスキーの銘酒である。
2002年にFour Roses Distillery,LLCの事業権を取得している。
ちなみに、キリンの国内製造ウイスキー富士山麓や陸などの売上は公開されていない。
6%を占めるのが国内ワインである。
キリンのワインといえばメルシャンである。
メルシャンはキリンが2006年に連結子会社としており、
大きな増減はなく、安定した売上を得ている。
ではもう少し詳しくキリンビールのブランド別の販売数量を見てみよう。
・キリンビールのブランド別販売数量
2022年と2023年の販売数量(単位は千KL)の比較グラフである。
販売数量が多いのはやはり一番搾りブランドである。
2023年には37万KLを販売しており、主力ブランドといえる。
スプリングバレーは少量生産ながら、販売数をキープしている。
販売数量が減少したのが淡麗グリーンラベルと本麒麟である。
酒税法改正によって、ビールが減税、発泡酒は維持、
新ジャンルが増税となった影響が出ている。
RTDである氷結が第二の柱となりつつあるようだ。
しかし2024年に発売された晴れ風がどのように影響するのか注目である。
ノンアルは微減である。
●財務関連デ-タ
難しい言葉がたくさん出てくるので、データを眺める程度にしておこう。
・資産と負債及び資本
この2つはキリンHDの連結財政状態計算書をグラフにしたものである。
財政状態計算書とは、資金の調達源泉と運用形態を示すもの。
国際財務報告基準IFRS(International Financial Reporting Standards)に準ずる計算書であり、
厳密には違いがあるが日本基準の貸借対照表(バランスシート)にあたる。
・キャッシュフロー
2019年に大きな変動がある。
これはファンケルの株式を取得し筆頭株主となり、資本業務提携したことによる。
ヘルスサイエンス事業を本格化させるのが狙いである。
そして2024年に完全子会社化している。
2023年にも大きな変動がある。
これは豪州の健康食品メーカーであるBlackmoresの買収である。
こちらもヘルスサイエンス事業の強化が目的である。
●キリンホールディングスの株価 推移
キリンホールディングスの株価推移の月足グラフである。
ここ数年はボックス圏内での値動きとなっている。
安定しているといえば聞こえは良いが、停滞しているともいえる。
ちなみにキリンホールディングスの株主優待は、
ビールやワイン、飲料などの商品が用意されている。
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●あとがき
キリンHDはヘルスサイエンス事業を成長させるために大きな投資を行っている。
ヘルスサイエンス事業で得られた成果は食や医薬の事業へ応用でき、
相乗効果を生むことができる。
酒類でもヘルスサイエンスの成果を応用した商品が増えるかもしれない。