シェリーのつくり方【辛口】

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 シェリーの造り方は、辛口か極甘口かで大きく変わる。
ここでは辛口シェリーの造り方を紹介する。

辛口シェリーの造り方

・製造フロー

 辛口シェリーは以下の工程順で造られる。
搾汁までは通常の白ワインと同じだが、その後の発酵、酒精強化、熟成でシェリーの独自性が現れる。

  1. ブドウ栽培/収穫
  2. 除梗(じょこう)/破砕/搾汁
  3. 発酵
  4. 酒精強化
  5. 熟成

ブドウ栽培/収穫

 辛口シェリーに使われるブドウはパロミノ種のみである。
ブドウ栽培地域は限定されており、その多くがアルバリサと呼ばれる、
炭酸カルシウムと二酸化珪素の多い、白い土壌で栽培される。

関連記事:シェリーの定義

 収穫は、9月頃に行われる。
昔は手摘みで収穫していたが、徐々に機械摘みでの収穫も増えてきている。

除梗(じょこう)/破砕/搾汁

 ブドウについている茎や果梗(かこう)も取り除く。
同時に、収穫したブドウを軽く潰すことで、果汁(モスト)を得る。

 搾汁の際のかける圧力によって3つの果汁に分けられる。

  • プリメラ・イェマ(1番搾り)
     2kg/cm2未満という弱い圧力で搾られる。
     総量の約65%。
     タンニンやポリフェノールが少ないため、主に辛口シェリーに使われる。
  • セグンダ・イェマ(2番搾り)  4kg/cm2未満の圧力で搾られる。
     総量の約23%。
     タンニンやポリフェノールが多いため、ブレンド用や、シェリー・ヴィネガーに使われる。
  • モスト・プレンサ(圧搾モスト)
     6kg/cm2以上の高い圧力で搾られる。
     シェリーには使われず、酒精強化用スピリッツやシェリー・ヴィネガーに使われる。

発酵

 搾汁液(モスト)を容器に入れて発酵させる。
昔は木樽容器を使っていたが、現在は温度管理できるステンレスタンクが主流。
酵母は生産者によって、自然酵母だったり、培養酵母だったりする。

 発酵が終わるとアルコール度数11~12%の白ワインが出来上がる。
その後、木樽を5/6ほど満たし空間を確保し、1~2ヵ月ほど静置され、固形物を沈殿させる。
その際、ワイン表面が空気と触れることで、フロールと呼ばれる白い膜ができる

・フロール

フロール
https://www.sherry.wine/jp

 フロールは産膜酵母と呼ばれるもので、「花」という意味。
その由来は、花のように浮かんでいるからや、花が咲く時期に発生するからなどと言われる。

 フロールは、ヘレス地域の特殊な環境下で発生する
長年にわたり淘汰された酵母が空気中に存在しているからこそなのである。
日本で白ワインを空気に触れさせたからといって、発生するものではない。

 フロールがワイン表面を覆うことで、酸化を防ぐことができる。
酸化しないということは、色が濃くならないということになる。

 また、味わいもスッキリ感を保ち、コクを持たない
フロールによってシェリーの味わいが大きく左右される。

酒精強化

酒精強化
Полина АндрееваによるPixabayからの画像

 酒精強化とは、蒸留酒を加えて、アルコール度数を高めることである。

 静置を終えて澱引きされたワインは、テイスティングによって目指すべき種類が決まる。
熟成をフロール有りか無しか、つまりフィノ・タイプか、オロロソ・タイプかである。

 フィノ・タイプは、アルコール度数15%まで酒精強化され、
オロロソ・タイプは、アルコール度数17%まで酒精強化される。

 15%というアルコール度数は、産膜酵母は活動できるが、他の酵母や微生物は耐えられない。
17%では、産膜酵母も耐えられない。
このようにアルコール度数を調節することで、フロール(酸膜酵母)を制御している。

 酒精強化に使われる蒸留酒は、ブドウ由来でなければならない。
それは、高アルコール度数のブランデー(グレープ・スピリッツ)や、
ブランデーに白ワインを混ぜてアルコール度数を抑えたものなどが使われる。

 酒精強化の目的は、アルコール度数を高めることで、長い航海に耐えるためとされている。
ワインが航海中に酸っぱくなってしまうのを防ぐために、スピリッツが足されたとされる。
これにより、酢酸菌などの微生物が活動できなくしたのである。

⑤熟成

 酒精強化されたワインは、1/6ほどの空間を空けて、樽に詰められる。
そして、動的熟成と呼ばれるソレラ・システムに組み込まれる。

・ソレラ・システム

ソレラ・システム
https://www.sherry.wine/jp

 ソレラ・システムとは、一番古い樽から出荷し、減った分を二番目に古い樽から補充し、
二番目の減った分を三番目から補充し、、、という仕組みである。

 一番古い樽をソレラとよび、その上を第1クリアデラ、第2クリアデラ、第3、、、となる。
ソレラの語源は、一番床に近いので、スペイン語の「床」を意味するスエロからきている。
クリアデラは、「育児所」という意味で、「育てる」というクリアールからきている。

 最も若い樽はソブレタブラと呼ばれ、「板の上」という意味で、
ソレラに入る前に板の上に置かれることから。

 ソレラ・システムの利点は、品質を安定させることができる点にある。
異なる年の樽を複数混ぜることで、品質を均一化し、安定性を維持できる

 ソレラ・システムは、一部のラム酒でも使われている。
似た仕組みとして、泡盛の「仕次」がある。

あとがき

 シェリー特有のフロール、酒精強化、ソレラはとても興味深い。
最初にフロールを発見した人は、カビが発生してワインが台無しになっと思っただろう。
そのワインを飲んでみようと思ったもの凄い。
何事も最初の一歩を踏み出さなければ、始まらないのである。



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