図解■ 日本酒の原料【米】

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文字数:約1300文字

 日本酒造りで使われる米はどのようなものか、について説明する。
一般的に食用につくられる米と違い、酒造好適米が使われる。

●酒造好適米(しゅぞうこうきまい)

 酒造好適米とは、農林水産省における農産物検査法によって分類された
醸造用玄米」のことを指す。
酒米(さかまい)とも呼ばる。

米畑
Nilanka SampathによるPixabayからの画像

 米には、デンプン質やタンパク質、脂質が含まれている。
食用はタンパク質や脂質があることで旨みを感じられるが、
酒造りでは、これらのタンパク質や脂質が多過ぎると雑味の原因になってしまう。

 タンパク質や脂質は主にお米の外側に含まれるため、外側を削る精米という作業を行う。
精米のしやすさを含め、酒造りのために品種改良されたものが酒造好適米である。

 以下のような点が酒造好適米に求められる。

  • 均一な大粒で、心白(しんぱく)が大きい
     大きいと高精米(多く削る)に耐えられる。
     心白とは、お米の中央のデンプン質でできた白く濁った部分
     心白が大きいと、デンプンを分解する麹菌の菌糸がよく絡む。
  • 少タンパク、少脂質
     タンパク質、脂質は雑味の原因になるため、少ないほうがよい。
  • 高吸水性
     水分が内部までしっかり浸透することで、蒸した時に柔らかくなる。
     内部が柔らかいほうが、麹菌の繁殖が進行しやすい。
  • 溶解性
     もろみに溶けやすければ、酵素による糖化がスムーズに進む。
  • 高糖化性
     糖化性がよければ、酵母による発酵もスムーズに進む。
     酒造好適米は傾倒しやすく、収穫量が少ないため、
     食用米よりも値段が高くなってしまう。

●品種

 全国各地で独自の酒造好適米が開発されているが、
酒造好適米の生産割合は「山田錦」と「五百万石」の2品種で5割を超えている

 以下、農林水産省のデータを編集。

銘柄別生産量
表とグラフ

・山田錦(やまだにしき)

 兵庫県の農事試験場で「短稈渡舟」と「山田穂」をかけ合わせて開発された。
酒米としての適性が完璧との評価から、「酒米の王様」と称される。
香り高く、すっきりとした味わいの傾向なる。

・五百万石(ごひゃくまんごく)

 新潟県で「新200号」と「菊水」をかけ合わせて開発された。
昭和32年に新潟県内米の生産量が500万石を突破した記念に名付けられた。
淡麗でキレの良い味わいの傾向になる。

・美山錦(みやまにしき)

 長野県の農事試験場で「北陸12号」と「東北25号」をかけ合わした「たかね錦」に
ガンマ線を照射して突然変異させた。
寒冷地での栽培に適している。
すっきりとしたライトな味わいの傾向になる。

・雄町(おまち)

 100年以上前に岡山県で栽培された始めた。
栽培が難しく、「幻の品種」となっていたこともある。
昔の米ならではの、野性味を感じさせる味わいの傾向になる。

稲穂
Jaesung AnによるPixabayからの画像

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●あとがき

 同じ品種でも栽培する土地によって、出来が変わる。
水や肥料や日照、有機や無機で、さまざまである。
最近は地元で開発された酒米を使い、その土地のものだけで造る日本酒が増えてきた。
ワインのテロワール的な考え方だ。
その土地で造ったものを、その土地で消費する、というわけにいかないもので、
大半が人口の多い都市部で消費される。
これを否定すると都市部には何もなくなってしまうので、複雑な気持ちだ。




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