更新日:2022年8月22日
文字数:約1100文字
ジンは他のお酒に比べて、日本での定番商品がはっきりしている。
これまで、あまり種類がなかったことが要因だろう。
現在はクラフトジンも増えたが、ジントニックやマティーニなどの
クラシックカクテルには定番のジンが使われる。
味、品質、流通が安定していることが重要である。
バーなどに常備されているジンを見てみよう。
ビーフィーターのボタニカルは、以下の9種である。
薬剤師であったジェームス・バローが選び抜いた材料である。
シトラス系(レモンやオレンジ)の材料を初めて取り入れたのが、
ビーフィーターだと言われている。
スペイン セビリアのオレンジは、バローが知り合いの貿易商から入手していた。
現在も伝統を守り、セビルオレンジが使われ続けている。
これらのボタニカルは、蒸留液に24時間も浸漬され、成分抽出が行われる。
長時間かけて抽出されたものを再蒸留して、中心部(ハート)のみを取り出す。
蒸留の始めと終わりの部分をカットすることで、雑味のない安定した味わいが得られる。
ビーフィーターの名前の由来は、「ビーフイーター(Beef Eater)」である。
ビーフイーターとは直訳して牛肉喰いのことである。
ラベルに描かれているのは、ロンドン塔を守る衛兵であり、
ヨーマン・ウォーダーズと呼ばれている。
この衛兵は、王室主催のパーティーで残った牛肉を持ち帰ることが許されていた。
当時は貴重だった牛肉を食べれることをうらやましがられ、ビーフイーターと呼ばれた。
ロンドン塔を守り続ける衛兵に、自社のジンも守り続けてもらおうということで、
商品名をビーフイーターとしたのである。
牛喰い(Beef Eater)という名前を付けたり、それまでなじみのなかったシトラスを使ったり、
ジェームス・バローはとてもユニークな人だったのだろう。
需要の増加に伴い、製造拠点を移し、ビーフィーターをどんどん大きくしていった。
いまだにロンドンでジンの製造を続けている大手はビーフィーターくらいである。
ビーフィーターは衛兵に守られ続けるのだろう。