ワインのコルク

HOME

文字数:約2100文字

 ワインのフタとして使われるコルクだが、
最近ではスクリューキャップも増えてきた。
熟成が10年くらいまでなら味や香りに差がないという結果が出ている。
それ以上の熟成データはこれからだろう。
どのような違いがあるのか見てみよう。

ワインコルク
CouleurによるPixabayからの画像

コルクについて

・コイルの特性

 ワインのフタとしてコルクが利用されるのは、
柔軟性と復元力という優れた特性を持っているからである。
瓶の口にコルクを押し込む時、その柔らかさで変形し、
そして形状を復元しようとする力で密閉する。

 コルクは長さによって密閉性を変えることができる。
コルクが長いほど、外気との距離が確保でき、瓶との密着面積も増える。
通常は3㎝程度だが、長期熟成用には5㎝以上の長いものが使わる。

・時代背景

 ガラス瓶が誕生したことでコルクがフタとして使われるようになった。
コルク以外のフタとして、当時はガラス製や木製、金属製など候補にあがったが、
これらの素材では密閉性が悪く、長期保存に向かなかった。

 さらに当時のガラス瓶はまだ均一なものを大量生産できなかった
出来上がるガラス瓶の口のサイズが微妙に違うことに対応できるフタが求められた。

・コルクの素材

コルクガシ
SimonによるPixabayからの画像

 コルクはコルク樫(ガシ)の樹皮から造られる。
ポルトガルやスペイン、イタリアなどコルクガシの一大産地である。
コルクガシは約10年に一度、樹皮が剥がされる。
剥がされた樹皮は、乾燥後にくり抜かれ、加工される。

 天然素材であるコルクは環境によくないと考える人がいるが、それは間違いである。
コルクガシの樹皮は樹の生育に必要ないものであり、約10年で再生もする。
さらに樹皮を剥がすことで、樹自体の二酸化炭素の吸収量が2倍以上になるといわれている。

コルクとスクリューキャップの比較

 スクリューキャップは徐々にコルクに置き換わりつつある。
オーストラリアやニュージランドで造られるワインの9割以上がスクリューキャップである。
ヨーロッパ諸国でも少しずつスクリューキャップが広がっている。

・比較表

コルクスクリューキャップ
歴史
約300年

約50年
高級感
雰囲気
道具
専用道具が必要

道具不用
開栓
時間がかかる
失敗の可能性あり

スピーディ
容易
ブショネ
4~6%発生

発生しない
保管
横置き

縦置き、横置き問わない
費用

 コルクとスクリューキャップを比較すると、実用性の面ではスクリューキャップが優勢である。
スクリューキャップは、簡単に、素早く、素手で開栓できる。
そしてブショネが発生しない

・ブショネ

 ブショネとは、コルクが傷んでワインの味を劣化させてしまった状態のこと。
表現としては、濡れたカビ臭い新聞紙や段ボールの臭いといわれる。
フランス語の栓を意味するブーションからきている。

 ブショネの発生は全体の4~6%という調査結果が出ている。
ワイン生産者からすると、数十年熟成させたワインがブショネで台無しになることは非常につらい。
そしてこの数字は、レストランで月に数本のワインが商品の価値をなさないことになる。
ブショネの発生を抑えるコルクが開発されているが、当然割高になる。

・保管

ワイン横置き
Arno MitterbacherによるPixabayからの画像

 ワインを横置きにして保管しなければならないとされるのは、
コルクが乾くと隙間から空気が入り込んでワインが酸化するためである。
横にすることでワインでコルクを湿らせ、空気が入り込むのを防ぐ意味がある。
スクリューキャップならば、置き方を問うことはない。

・雰囲気、高級感

 近年イギリスで行われた実験では、
同じワインでもコルクのほうが美味しく感じるという結果が出ている。
まったく同じワインを瓶に詰め、コルクとスクリューキャップで栓をする。
熟成などせず、そのまま被験者(140人)の前で開封して、飲んでもらう。
コルクのワインを美味しいと感じたのは113人(80.7%)だったという。

ソムリエナイフ
fancycrave1によるPixabayからの画像

 ワインといえばコルクという刷り込みが大きいのだろう。
さらにソムリエナイフを使って、時間をかけて抜栓される光景は、
ワインを飲む前の儀式的で好きだという人は多い。

ワイン以外のお酒とコルク

 ワインといえばコルク、コルクといえばワインなのだが、
他のお酒でもコルクは使われている。
ブランデー、ウイスキー、ラム、テキーラなど主に蒸留酒に。

ウイスキーコルク
Pascal Bondis によるPixabayからの画像

 蒸留酒の場合は、高級感を出すための演出的な部分が大きい。
そしてワインのようにブショネが問題になることはない
ブショネはワイン特有の問題である。
つまり瓶熟成して長期間コルクを使用することが原因なのである。
蒸留酒は樽熟成させた後に、瓶詰めされる。

 蒸留酒ではワインのようにソムリエナイフを使って抜栓するようなことはないため、
コルクでの儀式的な効果はない
コルクは、ワインではイメージのメリットと、ブショネという大きなデメリットがあるが、
蒸留酒では高級感のメリットに対して、コルクの劣化がデメリットである。
蒸留酒のオールドボトルでコルクが折れることはよくある。
ワインと同様に蒸留酒でもコルクからスクリューキャップに置き換えが進むのだろうか。

●あとがき

 一度刷り込まれたイメージというものは、なかなか変わらない。
実用性では確実にスクリューキャップなのに、コルクが選ばれる。
高級感あるスクリューキャップを作ることは可能だが、コストが上がる。
オーストラリやニュージランドの合理性に基づく行動は素晴らしい。



Amazon プライム対象