酒精強化ワインのつくり方

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 酒精強化ワインとは、蒸留酒を添加してアルコール度数を高めたワインである。
通常のワインが15度くらいまでなのに対して、酒精強化ワインは21度くらいまである。
フォーティファイドワインとも呼ばれ、代表的なものは以下である。

  • シェリー(スペイン)
  • ポート(ポルトガル)
  • マデイラ(ポルトガル)
  • マルサラ(イタリア)

 各名称を名乗るにはさまざまな決まりがある。
ここでは蒸留酒の添加タイミングが違う、シェリーとポートのつくり方を示す。

●シェリーのつくり方

 シェリーはスペイン南部のアンダルシア地方ヘレス周辺で造られる。
使用できるブドウ品種は、パロミノ、ペドロ・ヒメネス、モスカテルの白ブドウ3種のみ
シェリーの特徴は、フロールという酵母膜を利用すること、発酵後に蒸留酒添加すること、
ソレラシステムという熟成方法である。

シェリー
ソレラシステム
MJ TFによるPixabayからの画像
  1. ベースワインを造る
    ベースとなる通常の白ワインを造り、圧搾まで行う。
  2. 発酵
    果汁のみを樽に移し、酵母を加える。
    樽内は満タンにせず、少し空間をもたせる
    空間内の液面にフロールと呼ばれる産膜酵母ができる。
    このフロールによる独特の風味がシェリーの特徴の一つである。
  3. 蒸留酒添加
    発酵を終えた
    ワインに、ブドウの蒸留酒(ブランデーなど)を添加する。
  4. 熟成・出荷
    数段重ねた樽の一番上に出来上がった新酒を貯蔵する。
    シェリーはソレラシステムという熟成方法がとられる。
    積まれた樽の下に行くほど古く、最下段の樽からのみ出荷用が抜き取られる。
    出荷で減った分は上段から補充し、これを最上段まで繰り返す。
    新しいもの徐々に古いものに混ざることで品質が一定になる

 ソレラシステムは、一部のラム酒でも取り入れられている。
また、沖縄の泡盛で行われる仕次ぎと同じ発想である。

●ポートワインのつくり方

 ポートワインは、ポルトガル北部のドウロ河上流周辺で造られる。
使用するブドウが黒ならルビーポート白ブドウならホワイトポートになる。
ポートワインの特徴は、発酵途中に蒸留酒を添加することで酵母を失活させて、
残糖度をコントロールすることである。
日本に最初に入ってきたワインはポートワインだったと言われている。

ポートワイン
Gianni CrestaniによるPixabayからの画像
  1. ベースワインを造る
    ベースとなる通常のワインを造り、発酵まで行う。
  2. 蒸留酒添加
    発酵途中のワインに、ブドウの蒸留酒(ブランデーなど)を添加する。
    蒸留酒のアルコールによって、酵母が失活させる。
    残った糖の量によって甘さが決まる。
  3. 熟成
    最低3年、長いもので数十年熟成させる。

●あとがき

 ワイン以外では酒精強化という言葉を聞かない。
ビールにウイスキーを混ぜるカクテルはあるが、別の発想である。
日本酒にはアルコール添加があるが、これは風味の調整なので目的が異なる。
流通が発達する以前に、日本酒が海外へ大量輸出されていたなら、
酒精強化という発想もあったかもしれない。



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