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図解■ 酒税について4【悲報】安くなると思ったのに…? 2026年のビール減税で”実感できない”ワケ

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文字数:約2500文字

 すでに多くの人が2026年10月にビールの酒税が下がることを知っている。
2020年から段階的に酒税が引き下げられているが、
ビールが安くなったと実感できないのはなぜだろうか。
その理由を詳しく解説する。

ビールで乾杯
NIRV VANAによるPixabayからの画像
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●背景:平成29年度 酒税改正の概要

 酒税改正の内容を簡単に説明しよう。
平成29年(2017年)の酒税改正で
ビール、発泡酒、新ジャンルの酒税を統一することが決まった。

 2020年、2023年、2026年と三段階に分けて統一する。
グラフにすると以下のようになる。

税率構造の見直し グラフ

 現在は二段階目までが終わり、発泡酒と新ジャンルが統一されている。
そして2026年10月にビールの税率が下がり、発泡酒の税率が上がって、
同じ税率になる予定である。

 ちなみにチューハイ等の税率も改定されて、2026年10月に税率が上がる。
しかしビール・発泡酒よりは低い。

・ビールはどのくらい安くなった?

 酒税改正前(2019年)は350ml換算で77円の酒税がかかっていた。
現在(2025年)は63.35円なので酒税は13.65円下がっている

 1ケース24本に換算すると327.6円安くなっていることになる。
しかしその実感がないのはなぜだろうか。

●「安くなった気がしない」のは本体価格が上昇しているから!

上昇
Vilius KukanauskasによるPixabayからの画像

 ビール本体の価格が上昇している
大手ビールメーカーによる集まりであるビール酒造組合は、
毎年ビール・発泡酒の減税を要望している。
2017年の酒税改正にも大きな影響を与えた。

 要望書ではコンビニでのビール価格をもとにして、
酒税と消費税の説明をしている。
そこにビール本体価格が記載されているのだが、
2023年から本体価格が上昇している。
以下がビール本体価格である。

  • 2021年:128円
  • 2022年:128円
  • 2023年:139円 11円up
  • 2024年:141円 2円up
  • 2025年:153円 12円up

 2022年から2025年までに25円上昇している。
上昇率は19.5%、約2割増である。

 この上昇には3つの要因がある。

  1. 原材料費の高騰(麦芽、ホップ、燃料)
  2. 物流・人件費の上昇
  3. メーカー・小売の価格調整

①原材料費の高騰(麦芽、ホップ、燃料)

ビール原材料
nurfayozagzamov1004によるPixabayからの画像

 ビールに使用する麦芽もホップも、そのほとんどを輸入している
さらに生産に必要な電力やガスなどの燃料も輸入している。
世界的な穀物・資源価格の上昇に加えて、
さらに円安による輸入コストの増加が響く。

②物流・人件費の上昇

トラック
Tobias FrickによるPixabayからの画像

 運送業界のいわゆる「2024年問題」が影響している。
トラックドライバー不足による、物流費の高騰

 また、昨今の賃上げもメーカーやサプライチェーンでの
人件費上昇分が少なからずビール本体価格に影響を及ぼしている。

③メーカー・小売の価格調整

ショッピングカート
AlexaによるPixabayからの画像

 メーカーも商売なので、生産コストの増加分を
すべて吸収するわけにはいかない。
価格上昇と、購買意欲低下のバランスを見極めて、
利益を確保しなければならないのである。

 スーパーやコンビニなどの小売側も、
仕入れ値+物流費+人件費の上昇に打つ手がない。

■結論:2026年10月のビール減税でも10年前より高くなる!

コイン
Kevin SchneiderによるPixabayからの画像

 ビール酒造組合の資料によるとコンビニでの代表的な小売価格では、
2016年は221.4円だが、2026年想定では227.7円になる見込み。
その差は6.3円の上昇である。
2016年と2026年を比べると以下のようになる。

 酒税は77円から54.25円に下がる。
その差は22.75円。

 本体価格は128円から153円に上がる。
その差は25円。

 消費税は8%から10%に上がった。
消費税は本体価格のみならず、
おかしな話だが酒税にも消費税はかかる
消費税は16円から20円に上がる。
その差は4円。

 結果、25+4-22.75=6.25円上昇することになる。
もしかすると2026年の本体価格は想定よりも上昇するかもしれない。
そうなるとさらに上昇分が増える。

 一応、2026年10月以降は2025年よりも10円ほど安くなる。
ということは今現在2025年がもっとも高いといえる。

●ビールを安く買うには?

電卓
Andreas LischkaによるPixabayからの画像

 ビール価格が下がらないという、悲しい結果となったのだが、
ではどうすれば安く買えるのだろうか。

 スーパー、ドラッグストア、ネットなど、
ビールをどこで買うにしても安く買う共通点はある。

 シンプル イズ ベスト、
ケース買いすることである。

 単品で買うよりも6本パックや24本ケースで買うなら、
1本あたりの単価は安くなる。

 あるネットスーパーの例に見てみよう。

 ビール350ml  税込価格  1本あたり  差額 
単品 204.6204.6
6本パック1,182.5197.1 7.5
24本ケース4,601.3191.712.9

 他の方法としては、クーポン、ポイント還元、定期便、
ふるさと納税、ビール券を安く入手して利用、などあるが、
結局まとめて買うことになる。

●ビールの税負担率

ビール酒税
ビール酒造組合

 これはビール酒造組合の資料である。

 2026年10月以降の想定で、
コンビニでのビール税込価格が227円だった場合、
本体は153円、税金は74円である。
税金の割合は33%ということになる。

 発泡酒で以前から言われている言葉がある。

3缶飲んだら1缶税金」

 今この言葉はビールに当てはまる。
以前のビールの税負担率はほぼ半分だった。
そこから考えると確かに負担率は下がっている

 では、他のお酒と比べるとどうなのだろうか。

・酒類別の酒税額

1度1Lあたりの酒税率 グラフ

 酒類によって酒税額は異なるため、
1度1Lあたりに換算した酒税額である。

 2026年10月の想定で、
ビールはチューハイの約1.5倍
清酒、ワインの約4倍
焼酎、ウイスキーの約3倍
となる。

 つまり、ビールは2026年10月に酒税が改正されても、
まだまだ税率が高いということである。

 これについてもビール酒造組合は引き続き、減税を要望している。
今後もビールの酒税が下がる余地はあると期待したい。

あとがき

 税金を下がることは簡単ではない。
しかし消費税を下げるよりは酒税を下げるほうが容易だろう。
減税による税収減少と、購買意欲向上による税収増加。
物価高騰や、健康リスクなどさまざまなことを
国税庁はシミュレーションしていると思う。
国民がお酒を楽しく飲める世の中になれば幸いである。

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