Public Relations

『カクテルの女王』【マンハッタン】

HOME

文字数:約2400文字

 マティーニと同様に人気があるマンハッタン。
マンハッタンがどのようなカクテルなのか、レシピや誕生背景を見ていこう。

●マンハッタンのレシピ

マンハッタン
Gerhard BögnerによるPixabayからの画像

・材料/レシピ

  • ライ・ウイスキー、またはバーボン・ウイスキー・・・45ml
  • スイート・ベルモット・・・・・・・・・・・・・・・15ml
  • アンゴスチュラ・ビターズ・・・・・・・・・・・・・1dash
  • マラスキーノ・チェリー・・・・・・・・・・・・・・1個
  1. カクテル・グラスを冷やしておく
  2. 氷を入れたミキシング・グラスにチェリー以外の材料を入れ、ステアする
  3. 冷えたカクテル・グラスに、ストレーナーで濾しながら注ぐ
  4. マラスキーノ・チェリーを沈める

 スイート・ベルモットの甘さとビターズの苦み、
ウイスキーのアルコール感が絶妙のバランス。
完全に調和のとれた味わいが『カクテルの女王』と称されるのだろう。

●マンハッタンの誕生背景

 マンハッタンの誕生に関する有力な説は2つある。
どちらの説も正確なところはわかっていない。

  1. 負傷した人への気付け薬
  2. 元英国首相チャーチルの母親が考案

①負傷した人への気付け薬

ウイスキー
pakawootによるPixabayからの画像

 19世紀のアメリカでまだ決闘が行われていた時代。
1846年にメリーランド州で決闘で負傷した人の気付け薬代わりに、
バーテンダーがウイスキーとシロップとビターズで作ったものが原形。

 それがニューヨークのマンハッタンに伝わった時に、
シロップではなくスイート・ベルモットが使われ、
現在のレシピと名前になったと言われている。

②元英国首相チャーチルの母親が考案

 元英国首相ウィンストン・チャーチルの母親である、
レディ・ランドルフ・チャーチルが考案したと言われる。
旧姓はジェニー・ジェロームである。

 1873年にイギリス商船上の舞踏会で、
ジェニーは後に夫となるランドルフ・チャーチルと出会い、
翌年の1874年4月にパリのイギリス大使館で結婚式を挙げる。

マンハッタンの街
Felix DillyによるPixabayからの画像

 彼女の父親の友人である政治家ティルデンのニューヨーク市長当選を祝う会で、
彼女は幹事を務めていた。
ニューヨークのマンハッタン・クラブで開かれた祝賀会で披露されたのが、
彼女が考案したドリンクである。
そのドリンクの評判が良く、
クラブの名前に由来して『マンハッタン』と呼ばれるようになった。

 この祝賀会が行われたのが1874年11月18日とされている。
しかし、同年の11月30日にイギリスでウィンストンを出産している。
彼女は1854年生まれなので20歳の時に、妊娠中にパーティーの幹事を務め、
カクテルを考案し、2週間後には渡英して、出産してることになる。
祝賀会には出席しなくても幹事を務めることは可能であるが、、、

 ちなみにティルデン氏は1876年の米大統領選挙に民主党候補として臨むが僅差で敗れている。
マンハッタンの話で、ジェニーが幹事を務めたのはニューヨークの市長選挙当選祝賀会である。
大統領選挙の講演会だと勘違いされていることが多い。

イギリス国旗
LoggaWigglerによるPixabayからの画像

 ジェニーの息子であるウィンストン・チャーチルは1940年に英国首相となる。
ウィンストン・チャーチルが愛飲したのは、
マンハッタンではなく超辛口のマティーニだと言われている。

●バリエーション

 マンハッタンのバリエーション・カクテルとして有名なのが『ロブ・ロイ』である。
さらにロブ・ロイから派生した『ボビー・バーンズ』と『ロバート・バーンズ』も紹介しよう。

・ロブ・ロイ

材料/レシピ

  • スコッチ・ウイスキー・・・・・45ml
  • スイート・ベルモット・・・・・15ml
  • アンゴスチュラ・ビターズ・・・1dash
  • マラスキーノ・チェリー・・・・1個
  1. カクテル・グラスを冷やしておく
  2. 氷を入れたミキシング・グラスにチェリー以外の材料を入れ、ステアする
  3. 冷えたカクテル・グラスに、ストレーナーで濾しながら注ぐ
  4. マラスキーノ・チェリーを沈める

 ロブ・ロイはマンハッタンのバーボン(またはライ)をスコッチに替えたもの。
名前は、スコットランドの義賊英雄ロバート・ロイ・マクレガー
愛称「ロブ・ロイ[(ROBart ROY)」に由来し、「赤毛のロバート」を意味する。

スコットランドの風景
Rene GossnerによるPixabayからの画像

 ロバート・マクレガーの生涯を描いたブロードウェイ・ミュージカルを記念して、
1894年にウォルドルフ=アストリア・ホテルのバーテンダーが創作した。

ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
¥990 (2025/06/05 19:19時点 | Amazon調べ)
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
¥1,500 (2025/06/05 19:21時点 | Amazon調べ)

・ボビー・バーンズ

材料/レシピ

  • スコッチ・ウイスキー・・・40ml
  • スイート・ベルモット・・・40ml
  • ベネディクティン・・・・・ 5ml
  1. カクテル・グラスを冷やしておく
  2. 氷を入れたミキシング・グラスに材料を入れ、ステアする
  3. 冷えたカクテル・グラスに、ストレーナーで濾しながら注ぐ

 名前の由来は、スコットランドの国民的詩人ロバート・バーンズにある。
ロバートが愛称ボビーである。
ロバート・バーンズは『蛍の光』の原曲の作者である。

蛍の光
AnastasiaによるPixabayからの画像

 1925年にロンドンにあるサヴォイ・ホテルのハリー・クラドックが考案。
1930年に出版した「サヴォイ・カクテルブック」にも掲載されている。

著:ロバート バーンズ, 著:ロバート バーンズ研究会
¥7,480 (2025/06/05 18:54時点 | Amazon調べ)
著:バーンズ, 翻訳:中村 為治
¥1,373 (2025/06/05 18:55時点 | Amazon調べ)

・ロバート・バーンズ

材料/レシピ

  • スコッチ・ウイスキー・・・・・45ml
  • スイート・ベルモット・・・・・15ml
  • アンゴスチュラ・ビターズ・・・1dash
  • アブサン・・・・・・・・・・・1dash
  1. カクテル・グラスを冷やしておく
  2. 氷を入れたミキシング・グラスに材料を入れ、ステアする
  3. 冷えたカクテル・グラスに、ストレーナーで濾しながら注ぐ

 ロブ・ロイにアブサンを追加したカクテル。
ボビー・バーンズと同様に、こちらもスコットランドの詩人ロバート・バーンズに由来する。

 ロブ・ロイ、ロバート・バーンズ、ボビー・バーンズはよく混同される
スコッチとスイートベルモットを使い、ステアするカクテルあるためだろう。
3つともロバート繋がりであり、ややこしい。

 ちなみにアラン蒸溜所から「ロバート・バーンズ」というウイスキーが販売されている。
スコットランドの国民的詩人なので、カクテル名以外にも名前は使われるのである。

あとがき

 『カクテルの女王』と呼ばれるようになったのはいつからだろうか。
この呼び方はおそらく日本のみである。
海外のカクテルブックやホームページでこの表現を見かけない。
想像するに、日本の古いカクテルブックでカクテルの女王と書かれて、
それが広まったのではないだろうか。
素晴らしい表現力である。

Amazon プライム対象