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スペインの酒精強化ワインであるシェリーの種類は多く、
それぞれの違いがわかりにくい。
主要な11種類があり、細かいものを入れると30種類以上になる。
それぞれの違いがわかるように分布図に整理し、各種類の説明をする。

●シェリーの種類分布図

横軸を甘口、辛口に、縦軸を味わいの濃淡(さっぱり、どっしり)に分けた。
メーカーによる違いがあるかもしれないが、おおむねこのようになる。
●シェリーの種類説明
分布図にある11種類の説明をする。
大きく、辛口、甘口、極甘口の3種に分類される。
◆辛口
辛口には、以下の5種である。
①フィノ FINO
フィノは英語のファイン(Fine)と同義で、「繊細さ」や「上品さ」を意味する。
味わいは、辛口でスッキリしている。
香りは、フロール(産膜酵母)由来の、やや刺激性のあるイースト香がする。
色は、熟成期間によって、ライトイエローから麦わら色をしている。
色が薄いのは、フロールによって酸化を防いでいるためである。
シェリーの種類にフィノが登場したのは、
1823年にガルヴェー社が名付けて発売したのが最初とされている。
②マンサニージャ MANZANILLA

マンサニーリャとも呼ばれるが、
「リャ」はカスティーリャ語(標準スペイン語)で、
「ジャ」はアンダルシア地方や、南米での発音。
マンサニージャは、ヘレスから北西に
約20km行った港町サンルーカルで造られる。
フィノと同じ造り方だが、地理的環境の違いにより、
味わいに違いがでる。
港町サンルーカルは、グアダルキビール川の河口にあり、
海風によってボデガ(貯蔵庫)の温湿度が安定する。
内陸のヘレスでは温湿度が安定しづらく、
季節によってフロールが薄くなったりするが、
サンルーカルではフロールの厚みを安定して維持することができる。
この影響が味の違いを生んでいる。
味わいは、辛口だが、フィノよりもすっきりしている。
香りは、フィノに近く、イースト香がする。
色は、フロールが厚い分、フィノよりも薄めである。
マンサニージャの誕生は、フィノよりも古く、
1781年には登場したいたとされる。
マンサニージャの語源は諸説ある。
マンサニージャ村のワインがサンルーカルから出荷されていた説、
リンゴ(スペイン語でマンサーナ)の香りに似ていた説、
オリーブのマンサニージャ種から造るオイルの香りに似ていた説
などがある。
③アモンティリャード AMONTILLADO

アモンティジャードでも間違いではないが、ここでは「リャ」とする。
実は、アモンティリャードはシェリーの生産地である
アンダルシア地方ではあまり飲まれていない。
主に海外で消費されてるため、標準スペイン語である「リャ」で発音される。
アモンティリャードは、フィノの熟成途中でフロールを除去したものである。
フロール除去法は、自然に消えたり、人為的に消したり、といくつかある。
一般的に市場に出回っているものはフィノから造られるものが多いが、
マンサニージャから造られるアモンティリャードもある。
フロールを失うとシェリーは酸素と触れて、酸化が進む。
これにより色が濃くなり、味わいも複雑味が増す。
アモンティリャードの意味は、「モンティージャに似たもの」となる。
モンティージャという町のワインに風味が似ていたのである。
「モンティージャ(Montilla)」に「似た(ado)」「もの(A)」、
「ア・モンティージャ・アド(A-Montilla-ado)」が
「アモンティリャード(Amontillado)」となった。
④オロロソ OLOROSO
オロロソは、フロール(産膜酵母)無しで熟成されたものである。
フロールがないため、酸化熟成が進み、色が濃くなる。
オロロソの濃い色は、樽由来と勘違いされることもあるが、
アミノ酸と糖質の酸化反応(アミノ・カルボニル反応)が正解である。
香りは、イースト香がなく、熟成による樽香がつく。
オロロソの語源は、「香り」や「匂い」を意味する「オロール(OLOR)」に起因する。
⑤パロ・コルタド PALO CORTADO

フィノとオロロソの中間の状態のもの。
オロロソにフロールができかけた(またはうっすらとできた)ものが、
パロ・コルタドとされる。
フロール有りのフィノ、フロール無しのオロロソ、
フロール途中除去のアモンティリャードのキャラクターを持つといわれる。
パロ・コルタドの意味は、「1回切る」である。
シェリーの種類は、樽にマークがされて、区別される。
フィノなら「/」、オロロソは「/.」などである。
シェリーはソレラシステムに組み込まれる前に熟成させる(ソブレタブラ)。
1年熟成させたものは、マークに「-」を加える。
これを1回切るという。
例えば、フィノの場合「/」を1回切るとマークは「+」となる。
シェリーの種類には、ほとんど見かけないが
「ドス・コルタドス」や「トレス・コルタドス」というものがある。
「ドス」は「2」、「トレス」は「3」を意味する。
つまり、ソブレタブラの状態で2年、3年経過したことを意味する。
それぞれのマークは、「≠」、「≢」となる。
・フィノ・オロロソ・アモンティリャードの違い

フィノ、アモンティリャード、オロロソは、
いずれも代表的なシェリーの種類だが、
熟成方法の違いによって味わいや色合いが大きく異なる。
フィノはフロール(産膜)下で熟成されるため、
非常に淡い色調で、ドライかつ軽快な味わいが特徴である。
アモンティリャードは、途中までフロール下熟成を行い、
その後酸化熟成に移行するため、フィノの繊細さとオロロソのコクを併せ持つ。
一方、オロロソは最初から酸化熟成のみで造られ、
色は濃く、ナッツやカラメルを思わせる芳醇で力強い風味となる。
このように、フロール下熟成か酸化熟成か、あるいはその両方かが、
3種類の性格を分ける最大のポイントである。
◆甘口
甘口は、以下の4種である。
⑥ドライ DRY
ドライは辛口という意味だが、
甘口の中で一番甘みが少ないという意味である(ややこしい)。
フィノをベースにして、極甘口のペドロ・ヒメネスをブレンドしたもの。
濃色のペドロ・ヒメネスをブレンドするため、
色はやや濃くなるが、スッキリとした甘さである。
⑦ミディアム MEDIUM

アモンティリャード、またはオロロソをベースにして、
極甘口のペドロ・ヒメネスや濃縮精留果汁(MCR)をブレンドしたもの。
ミディアムは、現在に至るまでにいくつかの種類があった。
まず初めに、ミディアム・アモンティリャードという、
アモンティリャードをベースにペドロ・ヒメネスを
ブレンドしたものがあり、
次にミディアムⅠという、アモンティリャードとオロロソをブレンドしたものに、
ペドロ・ヒメネスをブレンドしたもの、
そして、MCRが登場したことによって、ミディアムⅡが誕生し、
それが現在のミディアムとなっている。
⑧ペール・クリーム PALE CREAM
フィノをベースにして、濃縮精留果汁(MCR)をブレンドしたもの。
オロロソベースの「クリーム」に対抗して、クロフト・ヘレス社が1971年に開発した。
甘さ控えめのライト嗜好を狙ったものである。
フィノベースなので、甘すぎないのが特徴。
色は、MCRが無色のため、フィノに近い薄黄色。
⑨クリーム CREAM
オロロソをベースにして、極甘口のペドロ・ヒメネスや濃縮精留果汁(MCR)をブレンドしたもの。
以前あった「ミルク」という種類と比べて、
甘さが強かったため、「クリーム」といわれるようになった。
味わいは、オロロソの複雑味に、ペドロ・ヒメネスの甘みが加わり、濃厚。
色は、ペドロ・ヒメネスを加えた場合はかなり濃く、
MCRの場合はオロロソと同等色。
◆極甘口

極甘口は、以下の2種である。
⑩モスカテル MOSCATEL
ブドウ品種にモスカテル(マスカット)種が使われる。
ブドウは収穫された後、天日干しされて、甘さを凝縮させる。
味わいは、ペドロ・ヒメネスよりも甘さ控えめで、軽さがある。
⑪ペドロ・ヒメネス PEDRO XIMÉNEZ

ブドウ品種にペドロ・ヒメネス種が使われる。
ブドウは収穫された後、天日干しされて、甘さを凝縮させる。
天日干しされたブドウを搾って得た果汁は、色が濃く、どろっと粘度が高い。
甘みが強いので、食後酒や、アイスにかけても良い。
●あとがき
シェリーの種類はほんとうに多い。
造り方や、混ぜるもの、原料などによって、派生品がいくつもある。
少し日本酒に似ているかもしれない。
これだけ種類があると、好みのものが確実に見つかるだろう。




