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シャンパン・カクテルとは、角砂糖にビターズを染み込ませ、
冷えたシャンパンを注ぐだけの、きわめてシンプルなカクテルである。
だがその一杯には、19世紀のバー文化から映画『カサブランカ』の名台詞まで、
ささやかな物語が折り重なっている。
甘味、苦味、そして立ちのぼる泡。
材料はわずか3つなのに、味わいは驚くほど奥行きがある。
ここでは、基本レシピを押さえつつ、
シャンパン・カクテルが長く愛されてきた理由を、わかりやすく解説する。
グラスの底から始まるその一杯の魅力を、あらためてのぞいてみよう。
●シャンパン・カクテルのレシピ

材料/レシピ
- シャンパン・・・・・・・・・・適量
- アンゴスチュラ・ビターズ・・・1ダッシュ
- 角砂糖・・・・・・・・・・・・1個
- 角砂糖にアンゴスチュラ・ビターズを振りかけ、グラスに入れる
- 冷やしたシャンパンでグラスを満たす
苦味を強めたければ、数ダッシュ多く振りかけてもよい。
お好みでレモンピールまたはツイストを加えるのもあり。
グラスはソーサー型でもフルート型でもお好みで。
角砂糖から立ち上る気泡を眺めながら味わいたい。
時間とともに角砂糖が溶けて味の変化も楽しめる。
ちなみにIBA(国際バーテンダー協会)のレシピは以下である。
- シャンパン・・・・・・・・・・90ml
- コニャック・・・・・・・・・・10ml
- アンゴスチュラ・ビターズ・・・2ダッシュ
- 角砂糖・・・・・・・・・・・・1個
コニャックを加えることで、芳醇な風味が漂う。
●シャンパン・カクテルの誕生背景

シャンパン・カクテルがいつ誕生したのかは不明だが、
記述としてその名が最初に登場するのは、
1850年のフランク・マリアット著「Mountains and molehills」である。
その後、1862年に発行されたジェリー・トーマスの著書
「The Bon Vivant’s Companion, or How to Mix Drinks」
にレシピが掲載される。
つまり150年以上も前に作り出されたカクテルなのである。
マダム・ポメリーが本格的な辛口を販売し始めたのが1874年。
となると、誕生時は甘口シャンパンを使って作られていたのだろう。
つまり甘口シャンパンにさらに角砂糖の甘味を加えていたことになる。
ビターズの苦味はちょうど良いアクセントになっただろう。
辛口が主流の現在、シャンパンの味わいにビターズの苦味が加わり、
時間とともに甘味が増してくる。
この変化が長く愛され続けている理由の一つだろう。
●映画『カサブランカ』と名台詞

映画『カサブランカ』が上映されたのは1942年。
第二次世界大戦の真っ只中にアメリカで製作された。
日本での公開は戦後の1946年。
映画の内容を簡単に説明すると、
元カノの夫婦の出国を助ける話である。
主人公のリック(ハンフリー・ボガート)が
かつての恋人イルザ・ラント(イングリッド・バーグマン)を見つめながら、
「君の瞳に乾杯(Here’s looking at you, kid)」と囁く場面で飲まれたのが、
シャンパン・カクテルだといわれている。
カサブランカの上映によって、米国内でのシャンパン消費が伸びたのだとか。
映画『カサブランカ』は1943年のアカデミー作品賞を受賞している。
そして「君の瞳に乾杯」のセリフは、2005年にアメリカでの
アメリカ映画の名セリフベスト100で5位にランクインしている。
日本でも人気の名台詞である。
●あとがき
シャンパン自体が完成されていて、美味しいので、
シャンパン・カクテルを飲む機会はそれほど多くない。
だが、カクテルの材料はシャンパンでなくてもよいのである。
好みでなかったスパークリングワインなどは、
シャンパン・カクテルにすると意外と美味しく感じることもある。
いろいろと試していただければと思う。

