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シャンパンのボトルサイズ『14種類もある!容量と名前の由来を徹底解説』

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文字数:約4700文字

 シャンパンには、公式で実に14種類ものボトルサイズが存在する
一般的な750mlボトルから、祝いの席で用いられる巨大サイズまで、その種類は幅広い。
ボトルサイズが変われば容量だけでなく、
熟成の進み方や風味の表れ方にも違いが生じるため、
用途に応じた選択が重要となる。

 ここでは、シャンパンのボトルサイズを一覧で整理し、
それぞれの特徴・用途・由来をわかりやすく解説する。

 シャンパンをより深く楽しむための基礎知識として、参考になるはずである。

シャンパンボトルサイズ
Wolfgang ClaussenによるPixabayからの画像
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●シャンパンの公式ボトルサイズは全部で14種類

 シャンパーニュ委員会(CIVC)では、一般的な750mlボトルを含め、
全部で14種類ものボトルサイズが存在する。
容量は188mlのミニサイズから、
数十リットルにも及ぶ巨大ボトルまで多岐にわたる。

 これほど多くのサイズが生まれた背景には、
贈答・祝賀・長期熟成など、用途に応じたニーズの多様化がある。
とくに大型ボトルは熟成がゆっくり進むため、
風味が豊かになる傾向があり、コレクターや愛好家から高い人気を誇る。

シャンパンボトル
G.C.によるPixabayからの画像

・シャンパンのボトルサイズ 14種類一覧表

名称読み方容量本数
Quart
(Piccolo)
キャール
(ピッコロ)
188ml、200ml1/4本分
Demiドゥミ(ハーフ)375ml1/2本分
Bouteilleブテイユ(標準)750ml1本
Magnumマグナム1500ml2本分
Jeroboamジェロボアム3000ml4本分
Rehoboamレオボアム4500ml6本分
Mathusalremマチュザレム6000ml8本分
Salmanazarサルマナザール9000ml12本分
Balthazarバルタザール12000ml16本分
Nabuchodonasorナビュコドノゾール15000ml20本分
Salomonサロモン18000ml24本分
Souverainスーヴェラン26250ml35本分
Primatプリマト27000ml36本分
Midas
Melchizedec
ミダス
メルキゼデック
30000ml40本分

 パイントサイズ(500ml)は公式のラインナップには入っていない。
そもそもイギリス向けのボトルサイズであったが、
現在ではほとんどのメゾンで扱っていない。

・通常サイズは「750ml」だが、種類は非常に多い

ボトルサイズ一覧

 飲食店や家庭で最も一般的に流通しているのは750mlの標準ボトルである。
1本で約6杯分を注ぐことができ、
扱いやすさと保存性のバランスが良いサイズである。

 しかしシャンパンの世界はこれにとどまらず、
375mlのハーフボトルや1.5Lのマグナム、
さらには数十人で共有する巨大サイズまで、
用途別に細かく体系化されたサイズ分類が整備されている。

 特にマグナム以上の大容量ボトルは、瓶内熟成がゆっくり進むことから、
より複雑で上質な味わいになると評価されている。

・名前に旧約聖書の王名などが使われる理由

聖書
heartandhomeによるPixabayからの画像

 シャンパンの大型ボトルには、
ナビュコドノゾール(ネブカドネザル)、サロモンなど、
旧約聖書に登場する王の名前が付けられている。

 これは、19世紀以降のシャンパン商が、
祝宴や儀式で使われる巨大ボトルに権威・壮麗さ・物語性
持たせるために採用した名前である。

 旧約聖書の人物名は、当時のヨーロッパ社会で
広く共有されていた文化的参照であり、
偉大さ・豪華さ・圧倒的な存在感を象徴するものとして受け入れられた。

 巨大ボトルに聖書由来の名を与えることで、
シャンパンの持つ祝祭性や格式の高さを強調する効果があったのである。

 こうした背景から、今でも大容量ボトルには
神話的・歴史的な名が使われ続けており、
その名前自体がシャンパン文化の一部として定着している。

・主要ボトル名の由来(聖書の人物)

◆ジェロボアム(Jeroboam)[3L]

  • 旧約聖書「列王記」「歴代誌」に登場
  • 古代イスラエル王国の王
  • 同名の王に複数の系統があるが、
    いずれも分割された王国の統治者として強い政治力を持つ人物
     → 大きめサイズにふさわしい「支配・統治」の象徴

◆レオボアム(Rehoboam)[4.5L]

  • 旧約聖書「列王記」「歴代誌」に登場
  • 古代ユダ王国の王で、ソロモンの息子
  • イスラエル王国分裂期の中心人物
     → 拡大と継承、統治の象徴

◆マチュザレム/メトセラ(Mathusalem / Methuselah)[6L]

  • 旧約聖書「創世記」に登場
  • ノアの祖先
  • 最長寿(969歳)として知られる人物
     → 長寿と偉大さ、壮大さの象徴

◆サルマナザール(Salmanazar / Shalmaneser)[9L]

  • 旧約聖書「列王記」に登場
  • 古代アッシリアの王の名前
     → 軍事力・大拡張の象徴

◆バルタザール(Balthazar)[12L]

  • 旧約聖書「ダニエル書」に登場
  • バビロニア王国最後の王の名前
     → 王権・魔術・神秘性を象徴

◆ナビュコドノゾール(Nabuchodonosor / Nebuchadnezzar)[15L]

  • 旧約聖書「列王記」「ダニエル書」に登場
  • 英語表記が「ネブカドネザル」
  • 新バビロニア帝国の王、ネブカドネザル2世の名
  • 旧約聖書で最も権力のある王の一人
     →最大級の20倍サイズのボトル名に最適な“圧倒的権威”の象徴

◆サロモン(Salomon / Solomon)[18L]

  • 旧約聖書「列王記」「歴代誌」「箴言」に登場
  • 英語表記「ソロモン」
  • ダビデ王の息子で、イスラエル最盛期を築いた王
  • 知恵と富の象徴
     → 大容量ボトルにもっとも相応しい権威の象徴

 内容量が18Lあり、全重量は約43㎏になる。
グラスに注ぐのも簡単ではない。

◆プリマト/ゴリアテ(Primat / Goliath)[27L]

  • なぜかメゾンによって呼称が違う
  • ゴリアテは旧約聖書「サムエル記」に登場
     ダビデと戦った巨人兵士
  • プリマトは「優位」「卓越」の意

 内容量27L、全重量約65㎏
一人では持ち運べないレベル。

◆ミダス/メルキゼデク(Midas / Melchizedec)[30L]

  • なぜかメゾンによって呼称が違う
  • メルキゼデクは旧約聖書「創世記」「詩編」に登場
     司祭にしてサレムの王
  • ミダスは「ギリシア神話」に登場
     フリギア国の2代目国王
     「触れたものを黄金に変える手(=ミダス・タッチ)」を持つ

・その他のボトル名の由来

  • キャール(Quart)  :フランス語で「1/4」の意
    ピッコロ(Piccolo) :イタリア語で「小さい」の意
  • ドゥミ (Demi)  :フランス語で「半分」の意
  • ブテイユ(Bouteiile):フランス語で「ボトル」の意
  • マグナム(Magnum):ラテン語で「大きい」「偉大な」の意

◆スーヴェラン(Souverain)[26.25L]

  • 「至高の」「尊大な」「君主」「支配者」の意
  • 1987年に巨大クルーズ船 Sovereign of the Seas(ソブリン・オブ・ザ・シーズ)の
    就航を祝うためテタンジェが作製

●ボトルサイズが違うと味わいは変わる?

泡
Vanessa SGによるPixabayからの画像

 シャンパンは同じ銘柄であっても、
ボトルサイズによって味わいが変化すると言われている。

 これは気のせいではなく、
ワインの熟成環境そのものが容器の大きさに左右されるためである。
特に大容量ボトルでは、香りの伸び、泡のきめ細かさ、酸のまとまり
顕著な違いが表れることが多い。

・同じ中身でも味わいが変わる理由

酸素
João BraunによるPixabayからの画像

 同じワインを詰めたとしても味わいが変わる主な理由は、
液量と空気(酸素)との比率の違いにある。
ボトルには必ず微量の酸素が混入しており、
その酸素がゆっくりとワインに作用して熟成を進める

  • 小 瓶(375ml) :液量が少なく酸素比率が高いため、熟成が早く、軽くなる
  • 標準瓶(750ml) :バランスがよい
  • 大容量(1.5L以上):液量が多く酸素比率が低いため、ゆっくり複雑に熟成する

 瓶内二次発酵の際に発生する二酸化炭素(炭酸ガス)は、
容量が大きいほど泡がきめ細かくなりやすい
これは大容量では発酵のストレスが少なく、
気泡が穏やかに生成されるためである。

・大容量ボトルは熟成に有利といわれる根拠

 大容量ボトルが熟成に有利とされる根拠は次の3点に集約される。

  1. 酸素の影響が極めて少なく、熟成スピードが緩やか
     大容量ボトルは、酸素の比率が小さくなるため、
     酸化が穏やかで、より長期的で複雑な熟成が可能となる。
     その結果、香りの奥行き、ボディの厚み、泡の質が向上する。
  2. 温度変化の影響を受けにくい
     大きなボトルは熱容量が大きく、温度が急激に変化しにくい
     温度変動はワインの劣化を促進するため、
     安定した環境は長期熟成にとって理想的である。
  3. 泡がきめ細かく、滑らかになりやすい
     瓶内二次発酵において、大容量ボトルでは発酵が穏やかに進み
     二酸化炭素がワインにより均質に溶け込む。
     そのため、クリーミーできめ細かい泡が生まれやすい。

・熟成に最適なのは「マグナム」ボトル

シャンパン熟成
Heinz TeuberによるPixabayからの画像

 シャンパンの熟成に最も適していると評価されるのがマグナム(1.5L)である。
理由は上記した通り、通常の750ml瓶に比べて液量が倍であることで、
ボトル内部の酸素比率が低くなり、熟成がより緩やかかつ調和的に進む

 実際、多くの有名メゾンはテイスティングにおいて
マグナムで最上のポテンシャルが感じられる」と述べており、
特に長期熟成型のキュヴェにおいてその効果が顕著である。

 このため、マグナムは単に大きいサイズというだけでなく、
品質向上のための最良の器として位置づけられている。
コレクターやワイン愛好家がマグナムを高く評価するのは、
見た目の迫力ではなく、熟成における明確なアドバンテージが理由なのである。

・特大サイズのボトルは移し替えている

空きボトル
Andreas WintererによるPixabayからの画像

 「ドゥミ(375ml)」から「ジェロボアム(3L)」までは、
瓶内二次発酵後、そのまま出荷しなければならないという規定がある。

 「キャール(188ml)」と「レオボアム(4.5L)」以上は、
移し替えが認められている。
移し替えは加圧下のタンク内で行われるので、
泡が弱まったりすることはない。

 「マグナム」サイズはどこのメゾンでも使っているが、
「ジェロボアム」は小規模メゾンではあまり見かけない。

 ちなみに、ボトルサイズが大きくなると価格は跳ね上がる
特注ボトルなので、仕方ないことである。
ミダス(30L、40本分)を購入するよりも、
通常サイズ(750ml)を40本購入したほうが断然安い。
しかし特大サイズはインパクトが違う。
お祝い事は派手に行いたいものである。

●シャンパンと日本酒の容量サイズ

日本酒
uzildayによるPixabayからの画像

 日本酒にもいくつか容量サイズがある。
比較のために紹介しておこう。

  • 一合(ごう) :180ml
  • 一升(しょう):1800ml
  • 一斗(と)  :18000ml
  • 一樽(たる) :18L〜72L

 四合瓶(720ml)や一升瓶(1800ml)はよく見かけるサイズである。
樽は鏡開きなどで使われ、一斗樽(18L)や四斗樽(72L)が一般的。

 シャンパンと同様にやはり大きいものはお祝い事に使われる
見た目としての演出効果があり、
また同じ樽やボトルからみんなでお酒を飲むことは、
一種の仲間意識や連帯性、共有性のようなものを感じるのだろう。

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●あとがき

 これほどまでのボトルサイズの種類があるお酒は他にないだろう。
ただ、普段お目にかかるのはマグナムサイズくらいまでで、
祝祭や式典でジェロボアムやレオボアム、
さらに大きいものはほぼ機会がないものだ。
ボトルサイズの種類が多いこともシャンパンの魅力の一つといえるだろう。